第16話 ステータスと思惑

 あの後、30分くらい掛けて倒すと有効だった【騎士】【賢者】【封印神】のレベルがそれぞれ50づつ上がっていた。【騎士】カンストである。いや…後付け・外付けリソースがあるとは言えども早すぎるだろ。まあかなりの下地が居る事は確か。それに魔力とスタミナの伸びが全職含めて最大限であるレベル1000を超える特殊超級職【救世主】を一時的に完全なるリソースに変換していたのだから。【天職】である他の2つがレベル50も上がったのはその余波でしかないのだろう。

 ちなみに今の今まで忘れているがステータスは筋力・耐久・技量・敏捷・運・魔力・スタミナであり俺の鑑定では、STR・END・DEX・AGI・LCK・MP・STである。魔法及び魔術の効果力は最大MPと使用したMPに作用される。まあそれ以外にも面倒な計算式は存在しているので一概にはどのステータスがどうこうだからこうこうと言うのは存在しない。

「ただなぁ…」

 そう考えても超級職レベル500と上中下それぞれの職カンスト状態計1000レベルくらいのステータス同士の攻防で傷一つすら入らない木製の道具は些か普通ではないだろう。…世界樹の枝と言うには杖の触媒にすら適さないほどの魔力伝導率である。

「アザンツリーでもないし…これ矢に適してるよな」

 軽くて丈夫な金属はいくらでも存在しているの総金属製の矢が全く無いわけでもないが。刃先の鋭さを見るに総木製の矢で良いのではと思うほど良いモノである。

「お疲れ様です。新一さん」

 そう考えながらステータスを体に馴染ませるように素振りをしているとエリスと見慣れないが懐かしくもある少女がこちらに歩いて来た。そしてエリスからタオルを受け取り汗を拭う。

「ありがとな。…でそちらは?」

「この子ね。この子は私の妹のミリアよ」

 その少女のエリスと同じ金髪であるも瞳はアメジストのような美しさと妖しさを秘めた紫の瞳である。

「初めましてミリアです」

「おう。俺は前原新一だ。よろしく」

「うん。姉さま共々よろしく」

 そうして差し出され右手での握手に応じると念話が飛んできた。何気に超高等技術である。彼女も【大賢者】の弟子なのだろうか。

『姉さまの事如何思ってるの?』

『…普通に綺麗な子だなと』

 コレ警戒されているのだろうかと体を一瞬強張らせるも次の一言で瓦解した。

『そう。姉さまは確実に貴方の事を異性として意識してるから…どんな形でも答えてね』

『マジ?』

 そう思い2人の少女を目線を動かさずに視線に入れるがそんな気配はない。

『うん。なんとなく分かる』

 そう言えばアイツも自身が触れた対象の想いを知る不思議な知覚能力が存在していたな。それと同系統の職に依らない個人的な特殊能力なのだろう。まあ彼女にとても似ているので…そう言う星の下に生まれるのかもしれない。尤も環境は全く持って違うモノであるが。

「どうかしたの2人とも?」

 それなりに長い時間そのままで居たせいかエリスが心配して来た。…隠匿性もかなり高度だったのでコレもそのパーソナルによるものかと考え誤魔化す。

「いや特には。所でミリアちゃんは俺と何処かで会った事があるのか?」

「無いけど…ナンパ?」

 その言葉にエリスの顔が若干青くなり俺に近づいてくるのが分かった。なるほどね。確かにそう言う事だな。

「いんや…。ただなんか懐かしい気配がしたから」

「そう。実は私も…。でも何処で…」

 それなんだよな問題は。アイツに気配というか雰囲気が似ているのは確かだがそれだけでは無い。それ以外のなんらかの要素が確実にあるはずだがそれが思い出せない。まるで重要な封印であるかのように。深く根に張っている。それに…。

 彼女も産まれながらの特殊超級職であろう。一般的には知られていないかなりヤバイアレである事は驚きだが。多分その事には誰も気付いていないはず。いや気付けないはずだ。何せ俺の【救世主】同様に普通ならば就けないはずのモノなのだから。そしてソレは俺の他の特殊超級職と似たようなものであろう。【勇者】・【英雄】同様の。何せあの時のアナウンスはそう言うモノだったはず。



 それはこの世界に来る直前の世界の狭間で聞いた言葉。

『世界___の因子を確認』

『該当者の___を確認』

『特殊超級職【救世主】その他を確認』

『就職条件を完了している【______】への無条件就職を完了』

『同一存在の存在している国への転送』

『対象2名への超級職を付与』



 その他にもアナウンスは続いてた気がするが…事実そうなんだろう。考えたくは無いが俺たちを召喚した存在は勇と俺を必要としたのだろう。なんらかの【魔帝】撃破以上の目標が存在していたから。

「むぅ」

「姉さま嫉妬?」

 それは俺と同様のものなのか?だとすれば俺に託した彼ら彼女らは無事なのだろうか?そしてアイツは…彼女は無事なのだろうか。あの人たちが絶対なる無事を保証していたので無事だと良いのだが次元が分からない以上は救いにすらいけない。幸いにも拠点候補はないわけでもないし【大賢者】の協力が得られれば良いのだが。

「だって…私が当てても全然気付かないし。そんな可愛いわけでもないし」

「姉さまは確かに可愛いわけではないですから。…綺麗と言うのは恐らく本心でしょうけど」

「それにミリアは可愛いしなんか良い雰囲気だし…」

 あと心配なのが俺の正体を知られること。【救世主】はバレても構わないだろうがその条件は色々と拙いしな。取り敢えずは勇を始めとする【勇者】一行を育てる。そして今代の【魔帝】に接触する。

「そうでしょうか?まるで熟年夫婦みたいでしたよ?」

「ないわよ。確実に」

「まあ時間はあるでしょうから」

 あとはアレについて深く知る必要もある。準備が必要なのは確かだし俺だけでは確実に無理だ。だとすれば今の俺に必要なのは望む道へと先導する覚醒した【先導者】。そして今1番近いのはエリスだ。ただ特殊超級職の覚醒はそう簡単に起こるものでもない。

「それに新一さんは姉さまに信頼以上のナニカを抱いてるよ?」

「でも…」

 後は【妖精女王】を探し出して覚醒させる。そうすれば俺の持つ封召石から彼らが呼べるはず。でも問題はそも【妖精女王】が確認されていないこと。

「応援してるよ姉さま」

 早く探し出さねばならない。



 全てを救う為にも。


「話聞いてましたか新一さん?」

「あっすまん考え事してた」

「もう。新一さんは…。この世界の常識を姉さまと2人で教えるのに…」

 ああ。そういう話なのね。ならその時に確認するか。

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