第5話 「お前、サブキャラのふりしてんじゃないよ」問題

どうも、鈴木葵です。

乙女ゲームの主人公の親友役(立ち絵あり)です。


この間ですね、久しぶりに元サブキャラ仲間に会ったんですよ。

主人公の職場の後輩にあたる、通称「後輩くん」。

なぜ「元」かっていうと、去年、彼の攻略ルートがリリースされたからですね。

つまり、サブキャラ卒業組なわけですよ、彼。


この「後輩くん」、初登場のときから、まあ、生意気で。

この間、会ったときも「鈴木さん、まだその服着てるんですか?」って。

うるさい、大人の事情じゃ!

お前だって元サブキャラだからいろいろわかってるはずだろ!

ていうか、お前こそ、もっとユーザーさんたちを胸キュンさせて、課金してもらってこい!サブキャラ卒業したんだから!

なーんて思ったんですけど、よくよく考えてみたら、この子、はじめから純粋なサブキャラじゃなかったというか──

ぶっちゃけ「エセ・サブキャラ」だったんですよねぇ。はぁ……。


──え、なにがエセかって?


ええと、まずですね。

乙女ゲームの攻略ルートって、いきなり全員配信されるわけではなくて、


・最初に数人の攻略ルートをリリース

・数ヶ月後、追加キャラの攻略ルートをリリース


みたいなことが、ちょいちょいあるんですね。

まぁ、このあたりは、いろいろな事情や戦略があるからなんですけど。


で、うちのゲームの「追加リリース組」は今のところ2人。

1人は、さっきの「後輩くん」。

もう1人は、通称「幼なじみくん」――ゲームリリースのときから登場している「世話焼き・おかん系・幼なじみ」でして。

この「幼なじみくん」はね、サブキャラだったことが一度もないんですよ。

というのも、単に「攻略ルートが最初に配信されなかった」ってだけで、後日配信されることはほぼ決まっていたから。

だって、「幼なじみ」ですよ、幼なじみ。

そんなおいしいポジションの男が、リリースされないはずがないでしょうが。

実際、ゲームのオープニングイラストにもちゃっかり描かれているし。

というわけで、この「幼なじみくん」は、攻略ルート配信前から、すでにメインキャラ扱いだったわけなんですけど──


もうひとりの追加組「後輩くん」は、ちょっと違うんですよね。

彼の初登場は、なんと、続編のプロローグ!

そこに、いきなり何の予告もなく登場したから、当時ユーザーさんたちも「え、誰?新キャラ?」「攻略できるの?」「でも、今のところサブキャラっぽい?」ってざわざわしていたし、私も続編プロローグのなかで


私「えっ、彼が例の後輩くん?」


なーんて言及してみたものの、正直この子が同じサブキャラ仲間なのか判断つかなくて。

まあ、でも、新キャラとして目立たせてあげたほうがいいのかなー、

ああ、でもメインキャラじゃないなら、例の如く「かっこいいー」とか言わなくてもいっかーって感じで


私「へぇ、後輩くん、けっこう可愛い系だねー」


なーんてバカ正直に言ったりしたわけなんですけど(※注)。

でもね、今こうしてふりかえってみると、あの子が私と同じ「サブキャラだったか」っていうと、やっぱり微妙なわけで。

というのも、制作側は「後輩くん」をサブキャラっぽく登場させておきながら、実は人気が出たら本編リリースする気満々だったように思うんですよねー。


実際、彼の登場シーンといえば……


   ■□■□■□


「続編プロローグ」より一部抜粋


○背景:電車の中


主人公「きゃっ……」


(やだ、スカートがドアに挟まっちゃった…)


後輩くん「…ダサ」

主人公「え……」

後輩くん「今時いるんだ? ドアに挟まれるひと」

後輩くん「まあ、でも…」

後輩くん「…助けてあげてもいいけど」



   ■□■□■□


はー、こうして読み返してみると、やっぱり違うわ!

つまらないサブキャラの登場シーンじゃないわ!

だってさ、私の初登場シーンといえば、プロローグの……


   ■□■□■□


「本編プロローグ」より一部抜粋


○背景:居酒屋(夜)


主人公「ごめん、葵、遅くなって!」

私「いいよ、先に注文して軽く食べてたから」

主人公「えっ、なに頼んだの?」

私「イカ焼き。めっちゃうまい」


   ■□■□■□


――これですよ、これ。

「THE・サブキャラの登場シーン」ってやつは!

とにかく地味、そして「決して印象に残りすぎない」!

今、ユーザーさんでこのシーンを覚えている人、どれだけいるのかな。

ほとんどいないと思うんですよね、たぶん。

でも、それでいいんですよ、サブキャラだもの。

ただの「親友役」が、メインキャラをくったらまずいでしょ。

それにね、これはこれで私の特徴をよく表してはいるんですよ。

だって、初登場でいきなり「イカ焼き」を食べている女──それだけで何となく姉御肌っぽい雰囲気を醸し出していると思いません?

これが「ポテトサラダ」だと私の印象が変わっちゃうし、「枝豆」だとキャラ付けが微妙。

かといって「ホヤ酢」だと、親友キャラとしてはインパクトありすぎなわけで。

そういう意味で、絶妙なラインだと思うんですよね、「イカ焼き」って。

私のキャラクターをふんわり伝えつつ、決して目立ちすぎないあたりが。


そう考えると、逆に印象に残りやすい「後輩くん」の登場シーンって、やっぱり特別だったっていうか──

あいつは「エセ・サブキャラ」だったんだろうなぁって。

まあ、でも、良かったですよ。

制作側の思惑どおり、そこそこ人気が出て、無事にメインキャラに昇格できて。



ちなみに、追加キャラのリリースについては


1.最初からリリースが決まっていた「幼なじみくん」タイプ

2.サブキャラとして登場させ、本編リリースを目指す「後輩くん」タイプ


の他に、


3.サブキャラだったはずが、人気が出てしまい本編リリースが決定するタイプ


というのがありまして……

ええ……某「上司ルート」のことですけどね……

来月ついにリリースか……はぁ……来月……


──え、上司なら他にもいる?

主人公の職場の部長?

いや、あの……部長は…………服のセンスが…………

と、とりあえず、部長も攻略キャラに昇格するかもしれないので!

また悲しい思いをしないためにも、ひとまず遠慮しておきまーす!


(※注)

この初登場のとき、私が「かっこいい」ではなく「可愛い系」って言ったことが「後輩くん」としてはカチンときたらしく…

彼が、未だ私にチクチク突っかかってくるのは、このことが原因らしいでーす。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る