第2話 夏でも長袖なのは「親友」だからです

どうも、乙女ゲームの中の人・鈴木あおいです。

ポジションは「主人公の親友」。

モブじゃないよ、親友ね。

ここ、大事だから。立ち絵だってちゃんとあるんだから。


ちなみに、主人公は今、バカンス中です。

たぶん、どの彼を選んだかによって「南の島」にいったり「ホテルのラウンジ」でくつろいでいたり「市民プール」で泳いだりしているんじゃないですかね。知らんけど。

……ああ、うそうそ。

本当は、ちょこちょこ連絡きてます。

うちの主人公、奥手だから恋愛相談をほぼ私に投げてくるんだよね。

今回のイベストでは全部カットされてるけど。

そこさー、カットしないでくれたら、私のギャラも増えるんですけど。

日曜の朝から、都内の某スーパーでマヨネーズの試食販売をしなくて済むんですけどね。

あ、ちなみにお高いマヨネーズ、おいしいですよ。瓶に入っているようなヤツ。

できれば、私も愛用したいくらい。

ただ、太るの厳禁なんですよね。公式衣装2着しかないから。

まあ、しょうがないですよ、「親友」ですから。

他のゲームでは「親友」の衣装は1着しかなかったりもするみたいだし。


でもさ、ホンネを言えば、もっといろいろ披露したいわけですよ。

例えば、これね。

先月リリースされたイベストなんだけど──


   ■□■□■□


6月20日リリース:イベントストーリー

「涙のヴァージンロード」より一部抜粋


○背景:なんかオシャレな店


私「ねえ、今年結婚式に呼ばれるの、多くない?」

私「これでもう6人目だよ?」

主人公「素敵なことだよね。幸せな瞬間に6回も立ち会えたなんて」

私「その6回分、財布も軽くなったけどね」

私「はー、ドレスどうしよう。レースのワンピは先月の結婚式で着たし」

私「アシンメトリーのドレスは来週着るでしょ」

私「……あ、このカシュクールの、可愛いかも!」

私「これ、買っちゃおっかな〜」



   ■□■□■□


──聞きました? 皆さん。

こんな会話を披露しているわけですよ、私。

どう考えたって、服にこだわりあるでしょ。どの結婚式にも同じドレスで出席したりしていないでしょ?

なのに、公式衣装2着ですよ、2着!

女性誌の着回しコーデだってもっと用意されてるっての!

お願いしますよ。ディレクターさん。

私の衣装差分、せめて夏服くらいは用意して……


え、それができるほど売上があがっていない?


了解でーす。

おとなしく公式衣装を柔軟剤につけときまーす。

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