乙女ゲームの主人公の「親友」だけど、何か聞きたいことある?

水野 七緒

第1話 まずは自己紹介

どうも、乙女ゲームの中の人です。

主人公の「親友」というポジションをやっています。

モブじゃないので、もちろん名前あります。

鈴木 あおい

フルネームね。モブじゃないので。

大事なことなので二回──っていうのは、もう古いのかな? まだ使う?

雅也ルートのライターはときどき使ってるんだけど。まあ、いいか。


苗字が「鈴木」なあたり、それほど個性の強くない親友って感じ。

個性が強いと「白鳥」とか「道明寺」とかになるらしいんだよね。

その点、私は「鈴木」なんで、主人公より目立つことは十中八九ないってわけ。まあ、主人公からしたら都合のいい「親友」ですわ。


……あ、次のイベスト、もうあがってきたの?

今回の担当ライター、書くの早いね。

で、私の出演は──


──プロローグの1シーンのみ? はぁ…


いえ、了解、了解。わかってますって。

メインは、主人公と彼の「夏のバカンス」だもんね。

しょせん親友なんて賑やかしっすよ。

それじゃ、ひとまず仕事してきまーす。


   ■□■□■□


7月リリース予定:イベントストーリー

「彼とイっちゃう★真夏のキラキラバカンス」より一部抜粋


○背景:水着売り場


私「見て見て、主人公! この水着、超かわいくない?」

主人公「え、でも派手すぎないかな」

主人公「それに、その……布地が少ないっていうか……」

私「そんなことないって! これくらいふつうだよ」

私「それに『彼』も絶対喜んでくれるって!」

主人公「……そうかなぁ」

私「そうだよ。だから買っちゃいな、絶対似合うって」

主人公「うーん……」


ブルル…


主人公「あ、ごめん。電話……」


(えっ、「彼」から?)


あなたに電話をかけてきたのは──?



   ■□■□■□


──はーい、今回の私の出演、終了。


このあと、主人公は選択肢で選んだ「彼」とバカンスだからね。

ただの「親友」は同行できないわけですよ。

まあ、当然だよね、「ふたりきり」がおいしいイベントだし。

なので、今回の私の出演は「プロローグ」にて終了。


──でも、気づいてた?

少ない登場シーンながらも、私が重要な役割を担ってたってこと。


どこって? 

決まってるじゃん。水着、水着!

私、主人公に「新しい水着」をすすめてたよね?

あれ、フラグだから。

このあと、絶対誰かのルートで「水着」イベントが発生するはずだから!


というのも、うちの主人公、ちょっと奥手キャラって設定なんだよね。

だから「大胆な水着」を主人公が選ぶのNGだったりするわけで、でもそういうのを着せないと、まあ、盛りあがらないわけですよ。

夏なのに! せっかくのバカンスなのに!

だから「親友の私」が勧めて、彼女に買わせるってわけ。

いやぁ、面倒くさいよねー。

エロい水着くらい自分で……いやいや、今のは聞かなかったことに。


まあ、そんなわけで今回は出演シーンが少なかったので、次のイベストまで試食販売のバイトでもしてこようと思いまーす。

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