第二章 辛い時に楽しむために

 第一章では、「辛い気持ち」「嫌な気持ち」は「完璧に無くす」ことは、不可能であるため、そんな時は、「辛い気持ちの10倍楽しい気持ち」を見つけ、経験し、「辛い気持ちの濃度を薄める」ことで、元気を取り戻そう、と提案しました。


 とはいえ、悩んでいたり、落ち込んでいる時に、何かを楽しむことは難しいと思います。


 友達との会話もテレビもYouTubeも何もかも、今まで楽しめていたものでも、楽しめなくなってしまうでしょう。


 むしろ、楽しめていたとしても、「楽しんでいること」に「罪悪感」を抱き、「自ら楽しまないように」してしまう人も、いるのではないでしょうか。


「こんな時に楽しんでいてもいいのかな?」

「こんな自分が笑っていてもいいのかな?」


 私自身、こんな風に思っていた時期もありました。


 自分から、「不幸」を求めていたのです。

 また、「不幸になりたい」そんな願いに限って叶ってしまうものでした。


 しかし、結果的に、「辛い」時に「より不幸になれた」ことで、私は、その後のあらゆるものを楽しめるようになったと思っています。


 ずばり、私がこの章でお伝えしたいことは、「辛い気持ち」の時に、「楽しむ」ためには、「より不幸になる」ということです。


「今まで楽しかったこと」が「楽しめない」のであれば、「今までになかった新しい楽しいこと」を見つけなくてはいけません。


「今までになかった新しい楽しいこと」を見つける方法は、「今までしたことのないことに挑戦する」

だけでは、ありません。「今まで普通だったこと」「今まで楽しくなかったこと」を「楽しいこと」に変えれば良いのです。


「いやいや、おじさん!それが難しいんじゃん!」


 と、思われるかもしれません。


 確かに、簡単なことではありません。


 ですが、「より不幸になる」ことは、意外と簡単です。そして、「より不幸になる」ことで、この変化は少しずつ現れてきます。


 ここで、少し思い出話をさせて頂きます。

 私は、以前、一泊二日でお寺の修行体験をさせて頂いたことがあります。そこで、食べる食事は、当然、精進料理であり、おかゆと漬物、野菜の炊き合わせなどでした。


 この体験を終えた帰り道、私は夕食に牛丼屋さんを選びました。


 この時に食べた牛丼は、今まで食べていたものの何倍も美味しく感じました。


 勿論、某チェーン店なので、本当に味が違ったり、使われている肉の質が高くなったりしたわけではないはずです。


 ですが、一泊二日といえど、精進料理のみの日々を過ごした後に食べる牛丼は、格別でした。


 私が、この話を通して言いたいことは、牛丼の素晴らしさではなく、「楽しい気持ち」の時も「辛い気持ち」の時も、「周りで起きていることは同じである」ということです。


 この話も、牛丼の味が変わったのではなく、私の「感じ方」や「捉え方」が変わっただけです。


 同じように、例えば女性であれば、普段は「めんどくさいだけのメイク」も恋をしている時であれば、「好きな人により良く思われるためのメイク」となり、いつもよりも研究したり、凝ってみたり、「めんどくさい」とは思わなくなる人もいるのではないでしょうか。


 また、「コンビニの列に並ぶことにもイライラする」男性であっても、恋人と一緒であれば、「パンケーキ屋さんの列にも笑って」並ぶことができるかもしれません。たとえ、それが、遊園地のアトラクションと同じくらいの時間であっても。


 このように、「ある同じ物事」に対して抱く気持ちというのは、同然、その時々の自分の気持ちや周りの状況によって変わります。


 そのため、とある〈A〉という出来事は、「楽しい出来事」にも「辛い出来事」にもなります。


「今まで楽しかった」〈A〉も〈B〉も楽しめなくなったときは、「今まで普通だった」〈C〉や「今まで楽しくなかった」〈D〉に目を向けてみて下さい。


「今まで普通だった」〈C〉も、不幸になった今となっては、「まだマシだった」〈C〉に変わっているかもしれません。


 もっと不幸になった時、「今まで楽しくなかった」〈D〉も「むしろやりたいと思える」〈D〉へと変わっているかもしれません。




 以上、長くなってしまいましたが、「辛い」時に「より不幸になる」ことで、「感じ方」や「捉え方」が変わり、次第に「今まで普通だったこと」「今まで楽しくなかったこと」に対しても、「まだマシなこと」「楽しいこと」と感じることができ、少しずつ、少しずつ「辛い気持ちの濃度を薄める」ことができるのではないかと思います。


 思っていたよりも、長くなってしまったので、次の章では、一度簡潔にまとめたいと思います。

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