第20話 神融合の大陸でひと暴れ画策

「情報ならこのわたくしに任せて頂戴」


 

 そう告げたのは聖女スライムであった。

 彼女は肉体のスライムを分裂させている。

 


「わたくしのスライム達は圧縮されて現在の姿となっているのよ、人間だった頃のメイアリナの姿をしているけど、この圧縮されたボディーには数億体のスライムがいるのよ、ここに来る途中で仲間を集めて置いたの。さぁて情報をお願いね」



 勇者デュラハンはその光景を不思議と見ていた。

 沢山のスライム達がぐねぐねと意思疎通を始める。

 どうやらこの神融合の大陸のあちこちにスライムを飛ばしているようだ。


 

 先程まで聖女スライムは遠くを見つめていた。

 突如として近くを見つめていると勇者デュラハンの方角を見ていた。



「まったく敵は7個の心臓をそれぞれスペシャリストに守備させているわ、全員を鑑定した結果、冒険者レベルSSSランクの奴等ばかりね、よくこんなにすごい人々を集めた物だわ」


「それだけ、俺様達の心臓が大切だという事だ」


「恐らくだけど僕達の心臓にはモンスターを引き寄せない力がるとされる。最初は大陸を召喚する為に使い、次は拠点バリア装置として使っていると考えていいだろう」



 元学生であった無壁リザードマンが教えてくれる。



「なるほどのう、それでわしらの心臓が必要という事か、つまりこの神融合の大陸にはやばいモンスターがいるという事じゃのう」


「爺さん、それは皆がひしひしと感じている事だろう? この鈍感なおいらでさえやばい気配を感じるよ」


「ドッデムよ武神ジャイアントになっても臆病なのは変わりないようだぜ」


「そんなサキンテンも仮面を付けているだけで怯えているんでしょ」



 武神ジャイアントと道化ガルーダはばちばちと視線を宿敵のように飛ばしていた。



「皆様はそんなにカリカリせずともこの果物のフルーツランドを食べてごらんなさい」



 7人のモンスター達はそれぞれフルーツランドと名付けられたフルーツ山盛りを食べていた。

 デュラハンは頭の所に果物を入れる事で食べる事が出来る。

 ジャック・オ・ランタンもカボチャの口に入れると食べる事が出来るし。


 

 そこにいる全ての7名とテイルがもしゃもしゃと食べていた。



「これ凄い美味しい」

「そうでしょうエルフの口には合うと思ったのよ」


「ナタリアさんて凄い人なのですね」

「まぁ料理も出来て戦いも出来る女性は、あたくしくらいですわ」


 エルフ幼女のテイルとコックトレントが話を花びらかせていると。

 

「もしかしたらと俺様が想っている事を皆に告げる。この戦いが終わった後、心臓を取り戻したら、人間に戻れる気がするのだ」


「それはわしも思っておったわい、しかしそれは何の確証もない憶測なのじゃ、わしの考えではモンスターと人間が融合したその先が待っている気がするのじゃ」



「さすがは爺だぜ、実はオレオレもそう思っている」



「道化はそのように考えるか、だな、俺様は人間に戻れると言ったが。それは新人類として戻るという事だ」


「おいらはこの巨大な体をなんとかしたいけどね」

「しかたありませんわ、ドッデムは昔から心は広いけど臆病でしたから」

「聖女スライムのメイアリナは広すぎたけどね」

「それはドッデムこそ」



 武神ジャイアントと聖女スライムが笑いながら言い合いをしていると。



「問題は1つを重点的に滅ぼすか、7個同時に攻めるかだが」


「そんなの決まっている。勇者よなんでわしらがエンペラーと呼ばれていたかを忘れたのか?」



 勇者デュラハンは昔を振り返った。

 1人1人で最強。仲間に頼るともっと最強。

 基本は1人で全てを解決出来る猛者になる事。

 それがエンペラーとしての素質。


 最強種としての力だ。

 それを忘れてはいけない。


「ふ、愚問だな、聖女スライムよ、それぞれの心臓のありかを分かるか?」


「待って、今見つけた。7つの心臓を鑑定した。勇者はあっち、賢者はあっち、武神はあっち、無壁はあっち、道化があっち、コックがあっち、わたくしはあちらね」



 勇者デュラハンは銀色の剣を抜きだした。

 それを空に向けて構えると。


「我らは新人類になる為に」

【なる為に】

「我は旧人類を滅ぼす為に」

【滅ぼす為に】


「さぁ溺れろ力に」

【さぁ溺れろ力に】


「我らは最強種(エンペラー)なり」

【なり】



 次の瞬間7人は一瞬にしてそこから消滅していた。

 勇者デュラハンの馬にはエルフ幼女のテイルがいた。


 テイルは白銀の鎧を身に着けているデュラハンにしっかりと捕まり。

 彼女はただ呟いた。


「うちがあなた達の人生の生き証人になってあげるわ」


「それはとても嬉しい事なのだよ」



 馬に揺られながら、心臓を取り戻すべく向かった先は。



 デュラハンは自分が今向かっている場所にとんでもない奴がいる事をひしひしと肌で感じていた。肌そのものは無く、肌の代わりに黒い魂のような瘴気が肌となってくれている。

 相棒の首無し馬のグリーに揺られながら。

 

 眷属の首無し死体達は全てが全滅してしまっている。

 デュラハンの右肩には1体の小さなスライムがいた。

 それはグミのような形をしている。

 


【言葉は通じるわね、それは通信用のスライムだから、話を聞いてね】

「それは聖女スライムか」


【その通りよ、わたくしはスライムでありとあらゆる事が出来るようなの、さて、あなたが向かっている場所にいるのはあなたも察知しているでしょうけど魔王よ】


「やはりか、だが魔王は俺様達が力を合わせて滅ぼした奴では?」

【正確には魔王の息子の魔王よ】

「あいつに息子がいたのか」

【まぁそんな所、見た限りだと人間に騙されているわね、わたくし達のように、その魔王を騙しているのが、勇者よ】

「新しい勇者が来たのか」

【その通り、その勇者の名前は勇者ジンテイジという名前あなたが生前使っていた装備を使っているわ】

「まったく最悪だな」

「それって特別な装備なの?」


 

 突如テイルが尋ねてくると。



「ああ、戦地を駆け巡ったとても大事な戦友だ」

【それもそうね、エンゲージソードとフルケイルアーマーね、あなたがやらなくてはいけないのは、魔王を解放する事。その為には勇者と魔王を相手にするしかない、これはすごく危険な賭けよ】

「なぁ聖女スライムよ俺様にそのような賭けが出来ると思うか」

【ふん、愚問だったわね】


「俺様は賭けには強いんだよ」


 

 デュラハンはにやりとほくそ笑んだ。






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