第19話 【エンペラー】集結

 そこは湿気のありそうな森の中であった。

 その森にやってきた1体のモンスター。

 彼には首が存在していなかった。

 右手に抱えられているのはそのモンスターの頭であり、

 腰には銀色の剣が帯剣されている。

 白銀の鎧がきらりと光っていた。



 そのモンスターの隣には首無し馬のグリーがいた。

 そのグリーの背中にはテイルと呼ばれる元奴隷のエルフ幼女がいた。

 彼はデュラハンであった。

 

「勇者デュラハンがゲンセイ、ここに見参するものなり」


 デュラハンは周りの6名を見ていた。


 そいつはカボチャの頭をしていた。

 カタカタと宙を少し浮いているカボチャの魔法使いは全身を覆うローブに包まれていた。

 魔法の事ならカボチャに託す事が一番だとその場に集った仲間達は思っている。

 カボチャの両目には不滅の炎がメラメラと燃え盛っていた。

 カボチャは右手と左手に赤い炎と青い炎をちらつかせて、ダンスでもするようにうきうきとしている。



「わしこそは賢者ジャック・オ・ランタンがウィラクスじゃ、ようやく転生っちゅうもんを受ける事が出来た。ふぉふぉふぉ」



 ジャック・オ・ランタンも周りの6名を見ていた。



 そいつはあまりにも巨大であった。

 巨人族の仲間とされるジャイアントと呼ばれるモンスターであった。

 武闘を極めた男はその巨大な体を上手くコントロール出来れば。

 天下無双の武闘家になれるであろう。

 強靭で鍛え抜かれた肉体は。もはや岩のようであり、岩よりも堅いと予想される。

 


「おいらこそが武神ジャイアントがドッデムだよ、ようやくおいらは現世にやってこれたんだ」


 

 ジャイアントは周りの6名を眺めていた。 



 それは美少女であった。

 美女ではなく美少女。姿形は人間の少女だ。

 この7名のモンスターの中で一番人間に近かった。

 しかし彼女の足元を見たら誰もが納得するであろう。


 その足はぶよぶよになっているのだから。

 二足歩行をするにあたって体の重さにまだスライムの体は対応しきれていなかった。

 彼女はにこりと微笑んでいた。

 

「わたくしこそが聖女スライムがメイアリナですわ、スライムだからってナメクジとは違うのですからね、うふふ」


 

 スライムは他の6名を眺めていた。



 その蜥蜴人間は体をフルプレートアーマーに包まれていた。

 フルプレートアーマーの隙間からは鱗の肌が見えている。

 それがリザードマンの証となった。

 背中には2個の盾があり、赤の盾と青の盾がある。

 両方ともドラゴンの鱗から作られている。

 生前は圧倒的な防御力と圧倒的な攻撃力でもって仲間達を窮地から何度も救った。

 そんな彼はある一定のダメージを負う事でドラゴンに変身する事が出来る。

 しかもドラゴンの色で色々な種類のドラゴンに変身が出来る。



「僕こそが無壁リザードマンがマボロンだよ、皆さんよろしくお願いします」



 リザードマンは当たりを見渡していた。そこには6名の仲間達がちゃんといたのであった。



 そのピエロの仮面を被った炎のように真っ赤な羽毛をしている鳥人間はきょろきょろと辺りを見渡している。

 ピエロまたは道化師に憧れてピエロの仮面を被るようになった。

 生前は笑いの道化師なんて呼ばれていた。

 その男は仮面をゆっくりと外した。

 そこにはガルーダと呼ばれる鳥のようなモンスターがいた。



「オレオレこそが道化ガルーダがサキンテンだぜ、皆よろしくな」



 ガルーダは周りの6名の反応を見守っていた。

 


 その女性の肌は樹肌そのものであった。 

 生前は美女なコックと呼ばれる事が多かった。

 しかし今では樹肌のごつごつとした肌を持っている美女であった。

 彼女の頭の木には沢山の果物が実を生らす。

 その果物は彼女の料理で全く違った食べ物となる。

 彼女は木々や植物を操作する事が出来る。



「あたくしこそがコックトレントがナタリアですのよ、美味しい料理を期待していいわよ」



 トレントは周りの6名を見て樹肌のほっぺたを不器用にして笑顔を見せてくれる。



「7名が揃った所で、勇者であるゲンセイが告げる。皆の物よくぞ生き物の世界へ戻ってきてくれた。そして地獄と天界の拷問をよく乗り越えた」



 その場が沈黙に包まれている。

 勇者ゲンセイは涙を流す事が出来ない。

 頭がない体。鎧の中に影のような頭はある。

 しかしそれは肉体のそれではなかった。



「みんなの意見を聞きたい。まずは俺様からだ。俺様は人間種は滅びるべきだと思う、理由は自分勝手で傲慢で沢山の種族をないがしろにしているからだ。あの時の魔王の思想が俺様の中に浸透している。今思うと魔王こそが正しかったのだ」


「わしからは賢者ウィラクスとしてとしか言えないが。わしはなぜ魔王や悪を倒したはずなのに地獄に行かねばならず、天界は天国だと呼ばれていたのに、それは全く違った。あそこは拷問の場所そのものであった。わしもゲンセイに賛成じゃ」


「おいらはあまり考えるのが得意じゃない、そんなおいらでも分かる。今人間種達は病んでいる。人間種全員が敵とは言えない。もしかしたら仲間になってくれる賛同者がいるかもしれない。人間はきっとエルフとかドワーフとかの人間種とつるんで沢山のモンスターや動物や植物やつるまなかった人間種を滅ぼしている。これを止めるしかない、ドッデムとしてやる事は、その幼女を見て思った。普通のエルフの幼女ではない事は分かる。ゲンセイが保護したという事は人間種の闇を知っているのだろう」


「わたくしは自分の王国の為に戦った。それなのにあの仕打ち、彼等は自分たちの利益と幸せしか考えない、それが人間種という生き物。しかし中には生きる事の意味を問いただし、どうして生きるかを考えるよき人間種がいる。だからわたくしは人間種を滅ぼす事に賛成、もちろん選別はした方がいい、賛同者を殺すのは賛成出来ないのだからね、それがメイアリナとしての助言よ、うふふ」



「僕は最強の無壁となった。その為に沢山の人々を体を犠牲にして守ってきた。その守ってきた人々に意味の分からない罪を擦り付けられ、彼等の為に心臓を捧げた。いや無理矢理捧げられた。僕は元々学生であった。だからとは言えないが、学生として生きる道みあったのだ。それを彼等は奪った。その報いは受けさせねばならない、皆が恨む主軸の人間種体はこの大陸にいるのだから、マボロンからは以上だよ」


「オレオレは仮面を被った時に全てを捨てた。過去から決別した。しかし彼等が行った愚行はまた仮面を付ける必要があった。地獄で拷問に耐え。天界で拷問に耐える。それは生半可ではない、オレオレをここまで陥れた奴等に拷問を授けないとオレオレの気持ちは落ち着かない、それが道化師サキンテンとしての意見だ」


「あたくしは沢山の人々に美味しい料理を授ける為に生きて来た。魔王が人々を飢えらせるので魔王を倒した。そして人間種達は幸せと満腹に浸かった。しかしそれは次の欲望の架け橋となるべくして動いた。あたくしたちは心臓を捧げられ、モンスターになった。きっとモンスターになったという事はその力で敵を倒せと言う事。モンスターの敵は昔から人間種と相場は決まっているものねコックトレントとしての意見よ」


 7人の最強種(エンペラー)がついに集った。

 そのリーダー格とされるのが勇者デュラハンであった。

 デュラハンは周りを見渡した。

 カボチャ頭の賢者、巨大なドッデム、ぐねぐねのメイアリナ、蜥蜴人間のマボロン、炎の鳥人サキンテン、樹肌のナタリア。


 

 そして首無しのゲンセイ。


 冒険者の元奴隷のエルフ幼女テイル。


 

「方針は決まっているようだな」



 デュラハンがそう告げた。

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