第2章 新大陸で復讐
第17話 7つの星が消滅する時
神融合の大陸に7つの星が向かっていた。
それは7つのモンスターであった。
壮大で優美な景色を見せてくれる海がそこに広がる。
白い砂浜の海岸にて勇者であり【エンペラー】の1人とテイルと名乗った奴隷のエルフ幼女が歩いている。
勇者の名前をゲンセイと呼び、彼は勇気の国を含む7つの王国に騙されて生贄として心臓を抜かれた。他の6人の仲間達も蘇っている気がする。
なぜなら7つの方角から膨大な煙が吹き上がっている。
その全ての場所には7つの国があったのだから。
デュラハンの後ろには長蛇の列が出来上がっている。
ゾンビのように動いているが、その肉体は腐ってはいない。
ただ首から上がなくなっており、血が流れているだけ。
彼等はデュラハンの眷属となっている。
指の動きで指示が出来、その為には司令塔となる頭を浮遊させる必要がある。
そのおかげで四方に情報を散らすという事だった。
「ねぇ、あなたが神融合の大陸を滅ぼすの?」
「いや、大陸は滅ぼさない、ただ心臓を返してもらい、人間種達を皆殺しにする。大陸に住んでいる住民には相手から攻撃してこない限り攻めない」
「また、うちのような奴隷がいたらどうする?」
「ふん、もはや勇者としての役割は捨てたようなものだが、いいだろう助けてやる」
「うちはそれを聞けて安心した。ところで海をどうやって渡るの?」
「泳いで行きたい所だが、重たい白銀の鎧では沈んでしまう。ちょっと考えた事がある」
その後デュラハンは3000体の眷属を利用して人間の橋を作ってしまった。
もっと正確に言うと、死体で道を作るという事。
3000体もいれば大丈夫だし、人間が足りなくなってきたら、また移動させればいい。
死体の道の上を首無し馬のグリーに跨ったデュラハン、そしてテイルがいた。
2人は自分達が恐ろしすぎる事をしている事に気付いていなかった。
一方で反対の対岸には、沢山の人々がごったがえしていた。
7つの王国が滅びたという情報。
村を突然襲ってきたデュラハンとその眷属達。
村人は眷属になってしまった人々もいる。
彼等は小さなイカダなどを利用して海と湖を合体させたような所を通り神融合の大陸にやってきた。
その中に灼熱の騎士団達がいた。
「ったくよー団長が神融合の大陸に行って仕事をするからついてきたのに、どこもパニック騒ぎじゃねーかいな」
「しかたありませんわ、という事で団長、今日も色々とプレイしましょう」
「ジェム副団長とトッカ神官もっと真剣になれ、これは人類が生き残れるかだぞ」
「まじで団長はそれを言ってんの? そんな事あるわけないって、ってまじか、その顔の団長はマジなんだな、よし分かった。皆本気だすぞ」
「まったく副団長はいつもああなんだから、そんな事してるから奥さんに逃げられるんだぞ」
「その奥さんも団員だろトッカ」
「あ、そうでした」
トッカ神官が笑っているが。ジェム副団長はぴくりと瞼を動かす程度であった。
その時だった。
それは何かが落下したような音だった。
灼熱騎士団のメンバーとそこにいた人々は空を見上げた。
そこにはたまーに出現して人々に幸福の知らせを見せる7つの星がなくなっていた。
それも突如として消滅している。
さらに空を炎が覆った。それも7つの炎だった。
その炎はこの大陸、つまり神融合の大陸に落下した。
爆弾の如き地響きを響かせながら、巨大な地震が人々を襲った。
「全員1度デイザス町から出るぞ、恐らくこの町に人々は集まって来る。落ち着いた所でここに戻るとして、しばらく野宿する事を覚悟して置け」
【御意】
仲間達の真っ直ぐな変人を聞きながら、赤髪の団長はにこりと微笑んだ。
その赤髪の騎士団を高見から見物している貴族達がいた。
「お兄様、あの者達はなぜあえて危険を犯すのでしょうか?」
「さぁな、俺達には下民の気持ちというものがよく分からないなぁ。さて先程密偵の知らせが届いた。どうやら勇気の王国がアンデットモンスターに滅ぼされたようだ。それは仕方がない事」
「それはとても悲しい事ですわ、ですけどそのアンデット達はこちらにやってきませんでしょう?」
「アンデットが海を渡るなど聞いた事があるかい? 妹よ」
「ふふ、そんな事は絶対にありません事よ」
次から次へと密偵達がやってくる。
この神融合の大陸には複数の開拓町が存在する。
デイザス町もその1つだ。
この大陸に元から住んでいた住民もいる。
エルフとかドワーフとかは7つの国が支配する大陸では過ごしづらいというものもあり、この大陸にやって着た者達や、この大陸からいたエルフとドワーフがいる。その他にも数えきれない種族がいるし。謎の遺跡も沢山発見されており。
この神融合の大陸は希望に包まれている。
だがその希望を勝ち取る為に7人のエンペラーが犠牲にされたのだ。
「ええい、地震は止まらないのか」
「すみません、ロウナルド様、どうやらこの大陸に伝説の星が7つ落下した模様でして」
「なぜ7つの星が同じ大陸に落下するのだ」
「それが分かれば苦労しません、ロウナルド様」
「お兄様、執事をあまり虐めないで」
「これは失礼した」
貴族2人は大陸の方ではなく、ぐるりと見張り台から反対を見ていた。
なぜかロウナルド貴族は胸騒ぎ覚えた表情でそちらを見た。
そこには無数の魚みたいなものがいた。
あれだけ密集していて、苦しくないのだろうか、そうロウナルド貴族は見ていた。
しかし妹が悲鳴をあげる。
「あ、あれは首無し死体ですわ」
貴族妹の視力はいい方だ。
そんな馬鹿げた事があるだろうかと、その時のロウナルド貴族は思った。
しかしそれが現実であった。
沢山の首無し死体達が真っ白い海岸を渡って来る。
数は数千ではきかない。
しかも夜から朝になろうとしている為、その光景ははっきりと太陽が映し出してくれていた。
そこにはたった1体の騎士が首を右腕で抱えて堂々と歩いている。
そしてデュラハンは空を見上げる。
「いい天気だなテイルよ」
「そうです、あなたの気持ちもハレバレとしているようね」
「それはそうだろう、ここが出来ているのは俺様達エンペラーがいたからだ」
「そうね、あなたがエンペラーであるように後の6人もエンペラーなのね、それと気付いた?」
「ああ、伝説の7つ星が無くなっている。いやこの大陸に落下して行ったな」
「きっと何か意味がるのよ、さて、うちは何も出来ないけど、応援しているの騎士様」
「期待していてくれ、最高な芸術作品を作ってこよう」
デュラハンはゆっくりと動き出す。
グリーがテイルを守るように走り出す。
デュラハンの足だけで全力疾走する。
彼の走るスピードはハヤブサのように早い。
白銀の鎧という重たいものを装備しているのに、なぜそれが可能かというと、肉体がないから。
あったとしても筋肉とかそういうものではなく、魔力自体で動いている。
後ろには約3000体の首無し死体。
前には無数の冒険者と兵士達。
しかしここは最前線である為、勇気の王国のように奇襲は望めない。
敵も準備万端であるようだ。
デュラハンの後ろをグリーとその背中に跨ったテイルがいる。
テイルには不思議な魔力がある事が分かった。
体に魔法シールドを展開する事が出来る。
それでも少し離れてもらう。
テイルも戦いとは何かをちゃんと見ていたいそうだ。
もちろん戦い参加するつもりはないし、修行させてから参加させるつもりであった。
門がゆっくりと開いた。
そこから出て着たメンバーにデュラハンは1人のゲンセイに戻った。
そこには弟のジンセイがいた。彼の頭はいつも赤髪であった。
「ったく、一度外に出たはいいが、首無し死体が来るから戻れって意味分からないと思ったよ、なんで首無し死体何だろうってな、デュラハンかなぁ、あんただろうゲンセイの兄貴」
デュラハンの頭が爆発しそうになるほど、黒い煙が脈打った。
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