第12話 道化ガルーダ誕生
笑いの道化師というあだ名があった。
その名前で呼ばれなくなってからどのくらいの月日が経過しただろうか?
そこは地獄、そこは天界、終わりなき激痛の渦が地獄、終わりなき会議の悲鳴が天界。
そこには希望も絶望もない。一体何を求めているのかすら分からない。
それは1つの星であった。
7つの星が空高く舞い上がる中。
その星は確かに鼓動していた。
7つの星が生命を与えてくれる。現実世界に飛び立てと教えてくれる。
蠢く何か、沢山の羽毛が空を覆う。
数えきれない程の鳥が死んだのだろうか?
そのような景色でありながら、冷たい空は何を意味しているのか?
1体の鳥が飛んでいた。
それは炎のように舞い上がる羽毛であった。
一枚一枚の羽根が眩しいくらいの炎を意味し、一枚一枚の羽根が素晴らしいモンスターだと人々に言わせしめる事が出来る。
ガルーダは空を飛翔する。
その羽には生命の力も炎の力もない、ただ赤いだけ、地獄の業火を思いだす。
でもこの羽はただ赤いだけ。
ガルーダは仮面を付けている。
それはなぜか? それは生前の趣味だからだ。
ガルーダは故郷を思いだす。
【楽園の王国】を思いだすのだ。
そこでは沢山の道化師達がいた。道化たちはそれぞれのパフォーマンスをサーカスで人々に見せて来た。サーカスでは沢山の道化師達が雇われた。
道化師であった頃の記憶を懐かしみながら、道化のガルーダ―は地面に向けて飛行を始めた。
ガルーダ―の大きさは大柄な男性が2人分くらいだ。
翼はとてつもなく長いし、そこには無数の羽が空の空気を操作する。
巨大な城門がそびえ立つ中、その真ん中に向かって道化ガルーダは突っ込む。
それを見ていた兵士達は笑い声を上げる。
「まじか、あの大きな鳥さんはバカなのか」
「かっかっか、きっとお腹が空いて変な草でも食べたのではないのか?」
宵闇の中城門の兵士達が言いたい放題を言っている中。
道化ガルーダは真っ直ぐに城門を吹き飛ばしていた。
いや貫通していた。
貫通してから吹き飛ばした。
城門の兵士達はもはやパニックとなる。
「聞いた事ないぞ」
「う、嘘だろ」
道化ガルーダ―は行業しく体をピエロのように動かすと。
「これはこれは、皆様型、この道化人の芸を見て行きませんか? お客様はあなた方です」
道化師ピエロが動き出した。
沢山の人々がその光景を見たくて逃げる事すら忘れていた。
兵士達が次から次へと大きな鳥人間のアクロバティックな攻撃により駆逐されているからだ。
「よ、ほ、よよ、ほほ、よよよ、ほほほ」
道化ガルーダは次から次へと繰り出される剣を全て避けてしまう。
挙句の果てには羽毛を剣のようにして次から次へと兵士の首を両断している。
楽園の王国の民衆達は兵士達が眼の前で殺されているのに恐怖すら抱かない。
それどころか、もっと殺せとか、もっとやれと言う始末。
道化ガルーダはそろそろお仕置きが必要だと思う。
それは観客がだ。
「では、そろそろ次のショータイムを始めましょう」
その時になって人々は歓声を上げた。
まるで新しい見世物が始まると思ったのだろう。
だが冷徹な声はまるで贈り物のようにやってくる。
「次はあなた達の命を頂こうと思います。あなた達はにこにこしながらこのオレオレを処刑したのだから」
その男は自分自身の事をオレオレと言う。
そしてオレオレと言う奴の事をこの王国の住民は知っている。
民衆が包まれていた歓声は悲鳴のそれに代わる。
なぜならそいつの名前を皆知っているから。
「サキンテンだ。あいつが着たぞおおお」
「あらあら、このサキンテンがやってきたとなると別格の話になるようですね、オレオレはあなた達によって殺された。あなた達が笑顔になったから処刑されたのですよ、何が笑顔罪ですか、国王をお仕置きしてあげたいくらいですね」
民衆達はようやく正気に戻ると、次から次へと逃げ始める。
それを道化ガルーダは羽毛を飛ばす事で、民衆達を虐殺している。
【道化行進】を発動させる。人々はパニックになっているのに、次から次へと人々は楽しくなってくる。心がうきうきしてきて、踊らないと気がすまない。
民衆は皆で踊りだす。
そこに仮面を付けた道化ガルーダがやってくると民衆をめった刺しにして殺害しまくる。
民衆は笑顔のまま全身を羽で貫かれる。
人々の顔は楽しむべきか苦しむべきかで悩んでいる。
そんな顔をしている。
「皆さん、あなた達が虐殺されていても国王軍はやってきません、なぜか? それはオレオレが怖いからです。さてあなた達に出来る事があります。それは人間爆弾となってもらうからです」
いまだに道化行進で人々は楽しんでいる。涙を流しながら楽しんでいる。
彼等には倉庫に整理されてあった爆弾の塊を背中に積む。
民衆達は涙を流している。
どうか助けてくださいという視線で向けられる。
のんのん、そんなに人生は甘くないよと目で教える。
ピエロは笑う。楽しそうににこにこしながら。
君達の運命はここで終わるのだとばかりに。
10人の男と女と老人と老婆と男の子と女の子とその他大勢にも爆弾を背負わせる。
「るんるんるん、さて、君達は今から突っ込みます。選ばれた馬鹿です。よかったですねー」
サキンテンは笑う。それが名前であったから、サキンテンは狂う、それが全てを奪われた物だから。
「さぁしゅっぱーーーーーつ」
人々は涙を流す。とてつもなく楽しくて、うきうきしている。
体が勝手に動く。
まるで催眠術かのように。
涙が止まらない、それは良い事だから? それはとても楽しい事だから?
「怒りなんて必要ない、苦しみなんて必要ない。なら何が必要か? それは君達の喜怒哀楽さ」
一方で国王軍はこちらに走って来る10名の人々を見ていた。
沢山の兵士達はなぜ彼等がこちらに突っ込んでくるのか謎に思っていた。
国王は今城の安全ポイントに隠れている。
兵士の隊長達はなぜ突っ込んでくるのかと思った。
それは全員が想った。
そして10名の男女は城壁にタックルするなり爆発したのだ。
それには皆唖然としてしまう。
「どうやら、敵はあいつのようです」
「だな」
爆発は連鎖していった。
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