第13話 仮面の行進

【仮面分身】それは仮面の数だけ分身を作れるというものだ。

 

 道化ガルーダは空を飛翔しながら、空に仮面分身を大量に造った。

 爆発が城壁を破壊していく。

 城まであともう少しまで到達する。


 城壁にいるであろう弓兵も片付けて置く必要がある。

 沢山の死体が気づきあげられるが、それが今回の目的。



 自爆してくれた10名の勇士達を忘れないで置こう。

 その他のへっぴり腰達は全員殺して置いた。


 次は仮面の行進と行く。

 それも空からの、空からやってくるか面体のガルーダ。

 サキンテンはそう創造していた。



 地上では兵士の隊長達が言い合いをしていた。


 

「だから、あれはサキンテンが起こした事で」

「ですが、サキンテンは処刑したのでは」

「それが分からない、奴は生きていたのか?」

「サキンテンは恐らく何かを行ったのでは」

「うるさい、もう少し考えさせろ」

「奴はサキンテンです。いつものやり口が似ています」

「じゃが、あの時のサキンテンは勇者に会心させられた正義の道へ」

「そして俺達が処刑したのでしょう」



 最後に締めくくった俺達と言った人物はとても背の高いのっぽのような人物であった。

 彼は遠くを見ながら、空を見上げていた。


「まったく、懐かしいものですねサキンテン、あなたが生きていると聞いて嬉しいよ」


 だがその声はサキンテンに届かないものであった。


 のっぽの男性は剣を構えていた。

 そして仮面分身達が地上に降り立つ。

 その中にいるであろう道化ガルーダはその男を見た時に豹変した。



「これはこれは、のっぽさんじゃないですか」

「これはこれは、チビ介さんじゃないですか」



 のっぽとチビ介、のっぽが敵でチビ介が分身ガルーダであった。



「どのような時でも正義であれという勇者様の言葉を忘れたのか」

「その勇者も処刑したのがお前達でしょうね」

「それは失礼しました。ですが、殺しすぎてますよ」

「楽しいからいいではないですか」

「昔に逆戻りですか」

「そうでもしないと狂ってしまいそうなのですよ」



 そう話をしているのは無数にいる道化ガルーダ達であった。

 彼等はのっぽ男性に集中的に話かけている。

 そしてのっぽ男性は剣を構えると走り出した。



 道化ガルーダは一枚一枚の羽でもって剣を創造すると、それで相対していた。

 のっぽは剣術を学んだ奴で、道化ガルーダは剣術を学んでいないのであった。


 

 結論はすぐに出ていた。

 それを覆す事が出来るのがサキンテンであった。

 サキンテンの仮面分身たちは次から次へとのっぽの体をめった刺しにする。


 のっぽは1つ侮った事がある。

 それはガルーダのような羽毛を持つのが仮面分身であり、その肉体は本物であるという事。 

 先程殺した人々の体を利用して、仮面で操作していた。


 しかも仮面分身の力にはガルーダの力があり翼を生やす事が出来た。


 分身なら攻撃は透き通るはず。

 そう思うのが普通だ。しかしその分身達は本物であり羽の剣により全身を刺されたのっぽは地面に両ひざをついた。

 そしてかつての敵は、今も敵だった。



「さて、のっぽ君、死ぬ準備が出来たかね」

「ああ、出来たさ」



 道化ガルーダが翼でのっぽの首を両断した。

 ころころと転がる細長い頭。

 それを見ていた兵士達はパニックを引き起こした。


 

 仮面を付けられた死体達が次から次へと兵士達に斬りかかる。

 それもアクロバティックな動きをしながら。それこそピエロそのものであった。

 奇妙な笑い声をしながら、兵士達を追いかけまわす。

 そして飽きたら殺す。それを何度も何度も繰り返す。


 地獄に行った。天界にも行った。


 一度死んでいる自分が再びそこに行こうと怖くなんかなかった。

 それがはったりであっても、そこには狂った世界を知っている死者がいた。



 そうやって城を破壊しつくすと、片端から王家の人々を惨殺した。

 

 王様はそれを見ていた。

 ピエロが逆襲してきた後に王様は気付いた。

 王様は地面を這いながら、命からがら逃げようとする。


 しかしその背中を道化の靴が押し潰す。



「がは」


 

 少し痛い声を上げながら。道化ガルーダはその王様の顔をゆっくりとのぞき込む。

 王様はびくびくしながらその仮面を見ていた。

 仮面と王様の視線が行き交うと。

 そこにあるのは死のみだ。



「所で王様よオレオレの心臓知らない? えーと誰か知っている奴でもいないかい?」


 王様は身震いで分からない事を示すが、右腕の骨を折られて乾いた悲鳴を上げる。


「だから、さ、王様、オレオレは尋ねてるわけ、心臓知らない?」


「し、じらないいいいいい」


「次はこんなもんじゃすまないよ? 道化として聞いてるわけじゃない、1人の人間として聞いてるんだ」



 国王はもはや観念したとばかりに口を開いた。


「なるほどその大陸にある訳か、オレオレってそんなにすごい人だったのかな? 不思議だね、じゃね」



 ゴキンと国王の首を一回転にしながら回転させた。


「ほら、皆が元気かって聞いてるぞ」



 そこに転がるのは無数の生首。国王の首は回転している。

 だが周りにいる首は普通に置いてある。


 これが生首の劇場であった。


 生首だらけの劇場ほど恐ろしい物はなくて、道化ガルーダがどれだけ狂っているかが分かる。

 それがこの世界の仕組みだったのだろう。それがこの世界の悲しい所なのかもしれない。

 そしてそれがこの世界の狂った成り立ちなのかもしれない。


  

 いつまでも最後までも終わりがない無限の先までもサキンテンは狂っているのだから。


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