第22話 生徒会長権限!

 そう、この学校の生徒会長、3年A組の上似達代うえにたつよ先輩と僕は『姉ちゃん』『ショーちゃん』と呼び合う仲なのだ。しかも上似先輩は、僕の前では自分の事を『お姉ちゃん』と言っている・・・


 思わず墓穴を掘ってしまいましたあ! 


「お、おい並野!お前、きょうだいは妹しかいなって言ってたのに嘘だったのかよ!」

 いきなり論寄君は僕に食って掛かってきたけど、僕の方が迷惑してますー。というか、墓穴を掘ったのは間違いないけどー。

 でも、その上似先輩は論寄君の方を見たけど、相変わらず毅然とした態度だけは崩していない。

「あー、君、断っておくけど、に姉はいないよ。これだけは断言してもいい」

「そ、それじゃあ上似先輩が『姉』とはどういう意味なんですかあ?まさかとは思うけど、両親が離婚したからとかいう事はないですよねえ」

「君!いくら何でもそれは失礼な発言だぞ。本来なら生徒会長として君にビシッと注意したいくらいだが、事実を知らない人に注意しても意味がないからやめておくよ」


 そう、上似先輩は断じて僕の姉ではない!それは宣言してもいい!!


 その代わり・・・


「・・・ボクの母さんは、ショーちゃんの母親の姉だ。だからショーちゃんは従弟いとこなのだよ」

「「「いとこ?」」」

「そう、従弟。よって、生徒会長として裁定する!ショーちゃんとペアを組むのは、このボクだ」

「「「「はあ!?」」」」


 ちょ、ちょっと姉ちゃん!じゃあなくて上似先輩!いくら従姉とはいえ、僕とペアを組むってどういう事ですかあ!?僕だって『寝耳に水』です!


「ちょ、ちょっと上似さん、それってどういう意味なんですか!」

「そうよそうよ!いくら従姉弟同士とはいえ、強引すぎます!」


 見田目《《みため》先輩と証子しょうこ先輩はブーブー言ってるけど、肝心な本人は相変わらず毅然とした態度を崩してない!

「だーかーら、君たちの言い争いを終わらせる仲裁案を生徒会長として提案したんだぞー」

「「そ、それはそうですけど・・・」」

「君たちのどちらか一方がショーちゃんとペアを組んで出場すれば、もう一方が納得しない。それだけは間違いないのだから、ボクがショーちショーゃんとペアを組めば、君たちは言い争う理由がなくなる」

「「・・・・・」」

「まあ、それはちょっと言い過ぎだけど、ボクは君たちのように強引にショーちゃんと出場する気はないが、他にペアを組む人がいないなら、君たちの言い争いを防ぐ意味でボクがペアを組む。だが、もしショーちゃんが武代たけよさんや証子さん以外の別の誰かとペアを組むというなら、ボクは素直に降りる。いや、これはだ。これなら文句あるまい」


 姉ちゃんは相変わらずではあるが毅然とした態度で僕と論寄ろんより君、それと見田目先輩と証子先輩を順に見てるけど、誰も姉ちゃんに反論できない。い、いや、というより姉ちゃんのの前には誰も反論できないのだから、もう全員が姉ちゃんの意見に賛成するしかないのだ。

 ま、僕も誰も全然知らない人と一緒にペアを組んで出場するくらいなら、幼稚園に入る前から知ってる、気心の知れた姉ちゃんとペアを組んだ方がいいけどね。


 結局・・・全員が姉ちゃんの仲裁案を受け入れた。僕は金曜日の放課後、つまりエントリー締め切り時間までに別の誰かと出場登録をしない限り、姉ちゃんとのペアで出場する事が決まった。


 ただ・・・


 この事で校内中が大騒ぎになったのは言うまでもなかった。


 姉ちゃんは過去2年間、大勢の男子から「一緒に参加してくれ」というのを全部蹴ってエントリーそのものをしてなかったのに、よりによって自分から参加すると言い出したのだから。

 僕と姉ちゃんが従姉弟いとこ同士というのは、たちまち校内中に知れ渡ったが、それ以上に、校内ではボーイッシュな言動で知られる姉ちゃんが『お姉ちゃん』などと言った事の方が衝撃が大きかった!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る