第29話 RE:Contact-14 ¨怪シキ傭兵団¨ヲ撃退セヨ - 1
「……何だァ……? この
――無数の樹木の枝や低木を切り開き、道の邪魔となる背の高い草を幾重も踏み潰しては……ようやく辿り着いた場所。そこは、”スップリ森”に近いこの原生林の中に出来ていた、小さな広場であった。その中に、この声の持ち主が生涯を通して全く見た事もないような……”奇妙な天幕”が数個、並べられたいたのだ。
【見た事もねェ天幕があるな……しかも、それ以外にも全くオレが知らないような物も、幾つか……。何処か貴族の
「オイッ! テメェらッ! 早くコッチ来い!」
「「「「「「「アイアイサ〜ッ!」」」」」」」
〜 ドドドドドドドドドドドドドドドド……ッ! 〜
――複数の足音が、怒声を上げた男らしき者の元へ一直線に集まる。そして……奇妙な天幕付近で
「アニキィ! 探しやしたぜ〜? 途中でオレらの松明がダメになっちまうんモンだから……暗くて暗くて……」
「……」
――機嫌の悪そうな表情と共に、呆れ果てたような視線もその声の持ち主に送る、”アニキ”と呼ばれた男。
「あっ、トコロでアニキィ? 何でオレ達を呼んだんッスかぁ〜?」
「このッ、バカ野郎供がッ! 道理で付いてこないと思ってた理由がそれだとッ!? ふざけんなッ!?」
「ヒィィッ!? すいやせんッ! ……ところで、何を見つけたやしたんと……?」
「あの”長耳のガキ共”が隠れてそうな天幕を見つけたんだよッ!? このッ、バカ野郎供がッ!」
――今まで人生の中で、”知恵”や”賢さ”を
「「「「「「「ヒィィッ!? すいやせんッ! アニキッ!?」」」」」」」
「そこで声を合わせなくて良いんだよッ!? クソ供がッ! 後、俺様の事は”ラグジャー様”と呼べって言っているだろうがッ!?」
「「「「「「「……いえ、アニキはアニキですからッ!」」」」」」」
――”ラグジャー”と言う、アニキと呼ばれていた男に”
「だから何で、返事以外で合わせているんだ!? クソ供がッ! 俺様が、いつ!? 返事以外の事で声を合わせろと言ったッ!? というか……もう時間ねェんだぞッ!? テメェらッ!? 今日中に、あの”長耳のガキ共”をブッ殺さないと……!?」
「……全く、こんな
――ラグジャーは一瞬、ビクッと身震いする。……いや、自分の部下に”馬鹿しかいない事”に恐怖したんじゃあない……! いくら馬鹿な部下達とは言え……彼は
だが……今し方に聞こえた声は、その
〜 ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…ザッ……! 〜
「……初めまして、こんばんは……。こんな真夜中に、そんな大人数で私達のベース……いえ、野営地に何の用ですか……?」
――声のした方向に、ラグジャー達
【でっ、デカイ……!? なっ、何だこの男……ッ!? どっから現れたんだ……ッ!?】――声にはしなかったが、ラグジャーの内心は動揺しまくっていた……!
ここに来る以前に契約した領主……その
「なっ……何だテメェは……!?」
「質問を質問を返さないで下さい。恐縮ながら……貴方達は、別に”お貴族様”とかのお偉い身分と言う訳でもないでしょう? そんなみずぼらしく、手入れのなっていない……粗野な”革鎧”やら”武器”やらを、
「グッ……!?」
【きっ、貴族っぽい格好をした……テメェが偉そ〜に言ってんじゃあねェよッ!?】――だが、その言葉を心の中で言っている時点で、ある意味……”権力に屈している”と言っても過言じゃあないだろう……。
だが、そう悔しげに思いつつも……つい、長年の自身の人生経験を元に……舐め回すように目を動かしていた……! いかにも上等そうな
その他にも、天幕などを含め……全く見慣れない物がゴロゴロと、”宝の山”如く転がっていた……! これを
「……何、ジロジロ見ているんですか? そんな事をした後で、私にお世辞やオダてを言ったとしても……何もあげる物はありませんよ?」
――ラグジャーに対し……
「うっ、ウルセェッ!? オレらを
「ほぉ……? では、失礼な乞食でなければ……一体何だというのですか?」
――今まで和かに閉じていた目が見開かれ、鋭い眼差しで
「ハッ! 知らねェのかッ!? オレらは最近……王国と帝国との紛争で、名を挙げてきている、今や売れっ子の傭兵団ッ! ”
「「「「「「「そうだッ! 受けた依頼は、必ず守るでお馴染みのッ!」」」」」」」
「そして、その
「「「「「「「そうさッ! それこそ”アニキ”さッ! 誰もが知ってるッ! オレらのアニキッ!」」」」」」」
「だから何で、勝手に答えてんだッ!? このッ、バカ野郎供がッ!?」
「「「「「「「ヒィィッ!? すいやせんッ! アニキッ!?」」」」」」」
――【……何だ、この
ある意味、
「……恐縮ながら、全く知りませんねェ……? まぁ、ただ……そちらの団長さんの名前は、こちらが叩き起こされる程の、
――首が
「きっ、汚い……? 汚いだと……ッ!?」
「えぇ、誠に恐縮ながら……下品ですよ? 本当は言いたくなかったのですけどね? 叩き起こされるような怒声で……機嫌が悪くなってしまった物なので……」
――全く悪びれる様子もなく……
「おいテメェッ! アニキの弱みを指摘するんじゃねェよッ!?」
「「「「「「そうだ! そうだッ!」」」」」」
「アニキはなぁ!? この
「「「「「「そうだ! そうだッ!」」」」」」
「それで、何度も負けそうな逆境を超えてきた……! 数えきれない
「「「「「「そうだ! そうだッ! それこそ、オレらのアニキだッ!」」」」」」
「オメェら……! このッ、バカ野郎供が……ッ!」
――【……”愛すべきバカ達”って、奴なんだろうけど……。ホント、こんな奴らが、”武勇伝”を何個も築き上げてんのかぁ……? ……まさか、
その光景を、”貴族のボンボン”らしき男は……再び、
「そうだ! そうだ! それに、この声で十年近く……
「「「「「「アッ、バカッ!? それ以上を言うな……ッ!?」」」」」」
〜 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ! 〜
――背後に
「……おいッ、テメェら……ッ!」
「「「「「「「ヒィィッ!? なっ、何ですか……!? アニキィッ!?」」」」」」」
――ラグジャーの声に、
「……この仕事……終わったら覚悟しとけよ……? クソ供が……ッ!?」
「「「「「「「ヒィィッ!? すいやせんッ! アニキッ!?」」」」」」」
――そのラグジャーのドスの効いた一言に……”貴族のボンボン”らしき男は、一瞬ながらも彼の”傭兵としての
まぁ、相変わらず……
「……それで? いい加減、
――笑顔を
「おぉっと、そうだ! なぁ、えぇ〜っと……」
「……”ジョン”とでもお呼び下さい……」
「そっ? そうか……? じゃあジョンさんよ? ここに、”長耳のガキ供”が
――”貴族のボンボン”……もとい、割と気さくに名前を教えてくれた……”ジョン”という男の態度に少々戸惑いつつも、素早く顔の汚物を腕で拭い取った後に、ラグジャーは尋ねる。
「……”長耳のガキ供”……ナルホド? それは、”エルフ”と言う種族の人達の事を言うのですか……?」
――物腰柔らかな口調だが、
「エルフ? 長耳は長耳だ。
「……いえ、お気になさらず……。私のちょっとした趣味みたいなモノです……好奇心が強い
――再び首が痒くなったのか、さりげなく
だが、ラグジャーはそんな視線に一切気付かず……
「フ〜ン。で? 見たのか? 見てねェのか?」
「う〜ん、そうですねェ……? その人達の”見た目”や”特徴”……それに、貴方方が”何でその人達を探している”のか……? それらを聞けないと、私が知っている事を話しても……って感じですねェ……?」
――腕を組んでは、ワザとらしそうにウンウン
「チッ、何でだ?」
「人違いをしたくないのと……私にとって、”全く利がない事”ですからねェ……? 教えたとしても……?」
――再び両手を後ろに組んでは……呆れたような横目で、ラグジャーを見るジョン。
「……チッ、じゃあ何だ? 金か?
――そう悪態付きつつも、腰の背中側に着いていた……”ウェストポーチ”のような革鞄に手を伸ばす。しかし、ジョンは彼に向けて右手を伸ばし……”待った”とでも言うように、手のひらを見せる。
「いえ、お金は結構です」
「……アッ?」
「その代わり、さっきも言った……探している人達の”見た目”や”特徴”……それに、貴方方が”何でその人達を探している”のか……? そう言った”情報”を話してくれるなら……お教えしましょう」
「……ハッ? 何でそんな……」
「先程言いましたよ? 私は
――ラグジャーに向けて伸ばしていた手を、人差し指だけを残して握り……”
「チッ、まぁ良いか……やっぱ、ジョンさんみたいな”お貴族様”が考えている事は、分かりませんねェ……?」
――【……オレが貴族? ほぉ……?】――黙り込んでいたが、内心では……ほくそ笑むかのような事を
「オレらが追っていた”奴隷”は、
後は……何考えてるか分からねェ、”ボヤッとした緑っぽい眼”ですかねェ……?」
「……ボヤッとした緑っぽい眼……?」
「エェ、依頼主から詳しくは聞いてないんッスが……何でも
――【……だからか? 最初に会った際……”オレの目”を、
「それじゃあ……もう”一人のエルフ”と言うのは?」
「……何で、
――何かしらの違和感を感じ取ったのか……少々
「……ここだけの話、私は”隠し子”でね? 最近まで
――【……クソッタレ。別に意味が通ってんなら、怪しむんじゃあねェよ……クソがッ!】――内心、
「……フ〜ン、左様で?」
「……まぁ、隠し子とは言えど……
「……エッ!? こ、
「あぁ、そうだ……あの
「こっ、コレは失礼しましたッ! 公爵様ッ!」
――そう言っては、慌てて王に仕える
「……ッ!? バッ、バカ野郎ッ!? 何してんだよ、テメェら!? サッサとカシヅけッ! 首をチョン切られたいのかッ!?」
「「「「「「……ハッ!? ハッ、ハハァァァァァァッ! 申し訳ありません、コウシャク様ッ!」」」」」」
――【……ワ〜オ、ココだけ
……まぁもう、◯者の諸君は……この”ジョン”と言う男の正体は、知ってて当然だろうが……。
「ウム、ヨキニハカラエ〜」
「「「「「「「……エッ?」」」」」」」
「……じゃあなくて、そんな
「おぉぉぉッ!?
「「「「「「クソありがとうございますッ! コウシャク様ッ!」」」」」」
――【……ヤベ、調子乗りすぎてバレるトコだった……何で、そんなトコで妙に勘が良いんだよ……ッ!?】――有利に
ウッセェッ! 黙れっての……ッ!
「……それで? 先程聞いた質問の答えは? あぁ……因みにもう、カシヅかなくても良いぞ? 君達……?」
――少しでも失敗を取り戻そうとするのか……
……お前、絶対からかってやがるだろ……!? ナァッ!?
「そ、そうでしたね……もう一人は、男のガキです。特徴としては、枯れ木のような”黒い肌”に……血とクソみたいな色の髪が、グチャグチャに何本か混ざった……”汚ねェ赤髪”ですかねェ? 後は……オレの部下を……オレの部下達を……! あの、クソ野郎は……! 四十人以上もブッ殺しやがったんだッ!」
――ラグジャーの
【……四十人以上も!? じゃあ……あのボロ服にあった
「それは何とも……
――右片手を胸に当てながら、目を
おい、別に取り上げなくてもイイ事だろうがッ!?
「そうなんですよッ!? 聞いてくださいよ、公爵様ッ!? あの黒肌の長耳のガキッ!? 頭おかしいんですよッ!?」
「……ほお? 何処がおかしいと言うのだ?」
「『丸腰だから捕まえるのも楽であろう』……そう、
――余程、悔しい事でもあったのか……その両手の爪が、拳に食い込みそうな程に握り締めるラグジャー。
「……ほう? では何故、バケモノだったのだ?」
――好奇心が刺激されたのか、そう興味深そうに聞くジョン。
「奴らの首に付いた”奴隷の首輪”を、
「……それの何処が、”黒肌のエルフ”がバケモノだと言う理由に繋がるのだ?」
――チョッピリ
「しっ、失礼しました! 公爵様ッ! 何分、その時も後も……変わらないぐらいに苦労しやしたモンで……つい、愚痴が……」
「フン、まぁ良い……続きを申せ」
「ヘッ、ヘイッ! えぇっと……それから、苦労しつつもその長耳のガキ供を……オレ達、傭兵団は見つけたんですよ。その時は、
――【五十人……つまり、ここの
「ほぉ、五十人……!
「……そんなの居たら、こんな人数にはなってませんよ……公爵様。オレ達、鉄血傭兵団は……もう、この八人以外……
――ラグジャーの後ろに控える
「……本当なのか? その依頼主は、全くの保険を掛けていなかったと言うのか……!?」
――非常に驚く(……という、
「エェ、そうでサァッ! あの領主ッ! 報酬は良いクセに、意外とケチ臭かったんでさァッ! オレ達に援軍があれば……こんな、こんな……ッ!?」
「「「「「「アッ、アニキィィィィィィッ! な、泣かないで下せェ〜ッ!」」」」」」
「このッ、バカ野朗供がッ!? 公爵様の前で、テメェらの汚ねェ涙を見せるゥゥ……見せるんじゃあねェよッ!?」
「「「「「「「……スッ、すいやせんッ! アッ、アニキィィィィィィッ!」」」」」」」
――【……つまりだ。コイツらを”
まぁ、オルセットがもうあの二人に、ポーションを飲ませ終わったって聞いてるし……もう嘘がバレても
コイツらに依頼した、その”領主”って
「……貴方達が、亡くなった戦友に対する思いは痛い程、伝わりました……。ですが、そろそろ話に戻って頂けませんか? 貴方達の話を聞いてきて……”心当たり”はあるのですが……どうも、確信がなくて……」
「ほっ、本当ですかいッ!?」
「エェ。
――【……もっとも……そん時にテメェらが
「へっ、ヘェ! え〜っと、そうだ! あのガキ供を見つけたところでした…よね? 公爵様?」
「……まぁ、そうだな」
「ヘェ! ……けど、コレを聞いても……面白くないですし……只々、痛ましいだけですよ……?」
「……構いません。貴方方の話を聞いている内に……私も貴方達の気持ちに、少しでも寄り添いたいと思うようになったのです……! ですから、心苦しいかもしれませんが……お願いします……!」
――【……ホントは、寄り添うどころか……コイツらの顔面に、
もう少し
そして……その慈悲深さに、傭兵団の皆さんは再び一斉に”感謝の意”を示した後……ラグジャーが語り出す……!
「……あのクソガキ供に追い着いた時……依頼主の言う通り、二人は丸腰でやした。それに……奴隷の首輪には、主人への反抗が出来ないよう……”魔力
魔法が得意だと聞く長耳だろうと……それがある限り、その長耳は
――【……”魔力阻害の印”を
「ほぉ、エルフは魔法が得意なのか……! と言う事は……弓矢などのように、遠距離から一方的に攻撃される心配はないと踏んで……一気に捕縛しようと、傭兵団全員で襲い掛かったのだな?」
「ヘェ、そうでさぁ……。ただ……」
「待った。だが、不用心過ぎないか?」
「ヘェ?」
「相手は魔法が得意だと言う、エルフなのだろう……? なら、人間が扱える魔法はおろか、人間が
――己の
「なっ、なんと……!? 公爵様は”予知の魔法”を使えると……!?」
「使えませんよ? ただ、”可能性”を考えただけです……」
「そっ、そうですか……えぇ、そうです。何故か、二人の長耳は……見つかったオレらに
「……でも、
「こ、公爵様……お…オレだって……チョイとは、そう思ってたんです……! ですが……オレはその場に居たんです、その他の野郎供も傍に居たんです、でも……! 誰も勝てなかったんです……! そんな……そんな、現実が……!」
「落ちこんどる場合かァァァァッ!?」
「「「「「「「「……エッ!?」」」」」」」」
〜 パシッ! 〜
――【……ヤッ、ヤベェェェェッ!? なっ、何で”シュト○ハ◯ム少佐”っぽい……
やめてッ!? その後ォ! 『もしかしてオ◯オラですかァァァッ!?』……って、感じに責めないでくれよッ!?
「どっ、どうしました……公爵様……? 何で、口なんかを手で押さえて……?」
「……ウォホンッ! 申し訳ありません……。いつか、私も臣下が出来た際に……こうやって
――しどろもどろかつ、口に右拳を当てつつ、かなり目が泳ぎつつも……
……もう、許して……ッ!
「……おっ、オォォォォォ……ッ!? あっ、ありがとうございますゥゥゥゥッ! 公爵様ァァァッ!」
「「「「「「クソありがとうございますッ! コウシャク様ッ!」」」」」」
――【……バカばっかで助かったァァァァッ!? ただ、まぁ……とりあえず、結果オーライか? ……時間は稼げているワケだしィ……?】――目の前で、一斉にカシヅく
「まぁ、話を逸らしてしまって申し訳ありません……宜しければ続きを……」
「……わっ、分かりました……えぇっと……」
「二人のエルフが反撃してきた所です」
「そっ、そうでしたね! えぇっと……そう、引っ捕まえようと……一斉に、数人掛かりで取り囲んだんです……! 女のガキを守るように、男のガキが動いていやしたから……楽勝だと思ったんです……ッ!」
「……成程? 何とかして、女のエルフを人質にでも取れば……容易に捕縛できるとでも思ってたのですね……?」
「……そうです。でも……でも、違ったんです! アイツは……あのクソガキは……!? 丸腰にも関わらず、ワケの分からねェ”身のこなし”をしたかと思えば……オレらの
「……そして、丸腰だったのが一変……貴方達の
「……えぇ、しかも……それだけじゃあないんですよ、公爵様! あのクソガキは……剣だけしか
オレらの
「「「「「「「そうだッ! あのクソガキッ! アイツは悪魔だッ!」」」」」」」
――【……黙れ、クソ野朗供……ッ! ……って、このラグジャーとか言う、傭兵のオッサンの取り巻きに言ってやりたいが……今はガマンだ……ッ!】――締め付けられるような胸の内を秘めつつも……表情に出さずに、再び語り出すジョン。
「……つまり? ”弓”と”魔法”だけが取り柄と思っていたエルフに……貴方達は、得意の”剣”とかの武器で……
「でもヤられてばかりじゃありませんでしたよッ!? 公爵様ッ!? オレらだってやり返してやりましたよッ!? 一人二人ならまだしも……一気に六人以上でヤリに掛かれば、一撃や二撃を喰らわせる事は出来たんですよッ!
しかしですよッ!? そうなると、すぐに女のガキが……男のクソガキの腕を引っ張って
――【……ナルホドな。黒肌のエルフボーイは、”エルフ流武術の
後、ワケの分からねェ”身のこなし”ってのは……たぶん”CQC”みたいな、
「それはそれは……。でも、傷を負っているなら……到底遠くへは逃げられないでしょう? 簡単に追い詰めて、捕縛するのも容易なハズじゃあ……?」
「それが違ったんですよ、公爵様ッ!? あのクソガキ供の逃げた先を追ってみれば……何が居たと思いますッ!?」
「……その口振りだと、逃げた先に居たのは、そのエルフ二人じゃあなかったと言う事ですね……?」
「えぇ、そうですよッ! あのクソガキ供が逃げた先に居たのは……”ウルエナの群れ”だの、”ゴブリンの巣穴”だの、”マグズリーの狩場”だの……! そう言った、
まるで、
「……それはただの、”不注意”という奴ではないのか?」
「とんでもないッ!? あの黒肌のクソガキが、怪我する度にですよッ!? あのクソガキ程ではないにしろ……それで、どれだけ仲間を失ったかッ!?」
「「「「「「「そうだッ! あのヒキョ〜者の、クソガキ供めッ! 恥を知れッ!」」」」」」」
――【……
「……それはそれは、お悔やみ申し上げます……。だが、貴方達は諦めず……ここまで追跡を続けて来たと……?」
――【自分で言ったのも何だが……報酬のためとは言えど、とんだ”ロリ◯ン集団”だよなぁ……? お巡りさんが居ないのが、
「……そうです、そうですよ! 簡単な仕事と思っていたのに……もう、文句も言えない程遠く……もう、引き下がれない程に、仲間を失ってきました……! オレ達は……あのクソガキ供に、
「「「「「「「そうさッ! 依頼以外に、誓いも絶対果たすッ! それがオレ達、鉄決傭兵団さッ!」」」」」」」
――【……なんか、ここまで
「……余程……いい仲間に、巡り会えたんですね……」
「……えぇ、そうです。そうなんですよ……! だけど、あのクソガキ供は悪魔なんですよッ!」
「……と言うと?」
「何人もの仲間が必死になって……やっと、与えられた一撃が……! 何人もが犠牲になって……ようやく、与えられた一撃が……ッ! 次にその姿を見た際には、キレイサッパリッ! 傷が! 黒肌のクソガキに”あったハズの傷”が……
「「「「「「「チクショウッ! オレらの苦労を返せッ! あのクソガキ供! 悪魔供ッ!」」」」」」」
――【……まさか、”回復魔法”持ちかッ!? あのエルフガールッ!? ……イイねェ、策士な魔法使い……ッ!
いや待て……? それ以前に……アイツら、エルフとは言えど……
「……申し訳ありませんね。私には……本当、お悔やみの言葉を申し上げる事しか……出来ません……」
――またも首が痒くなったのか、さりげなく頸動脈がある付近を右手で擦りつつも……痛ましそうな表情で、そう語るジョン。
「も、もったいないお言葉でさぁ……公爵様ァ……こんな、
「「「「「「アニキィッ!? そんな事、言わないで欲しいでさぁッ!?」」」」」」
「何言ってんだッ!? このッ、バカ野郎供がッ! 公爵様の前だぞッ!?」
「「「「「「ヒィィッ!? すいやせんッ! アニキッ!?」」」」」」
「バカッ! 謝んなら、公爵様の方だろッ!?」
「「「「「「ヒィィッ!? すいやせんッ! コウシャクサマッ!?」」」」」」
「……大丈夫です、気にしなくていいですよ?」
「おぉぉぉッ!? 寛大な処置を、クソありがとうございますッ!」
「「「「「「クソありがとうございますッ! コウシャク様ッ!」」」」」」
――【……ハァ、ほんのチョッピリ心苦しいが……まぁこの後の、エルフ達二人への事実確認のためだ……ようやく、コイツらの”雇い主”の事を聞き出す事が出来そうだなぁ……?】――表情には出さなかったが、長くなっていた”
「……では最後に二つ、確認したい事があるので……それを教えて頂いたら、コチラも貴方達が探していると言う人達の、”心辺り”を……お教えして差し上げましょう……!」
――そう、
「おぉ、やっとですかッ!? では……何を!?」
「まず、一つ目。ここまで、心苦しいながらも……貴方達は、”鉄決傭兵団の悲劇”を語ってきてくれましたが……その”エルフ達”の
そして、その増援の見込みもなく……それを
「……えぇ、そうでさぁ。援軍を呼ぶ手段どころか……あの黒肌のクソガキが、借りていた”奴隷の首輪”を探知する魔道具を、
「「「「「「ホント、辛かった! クナンの連続ッ!」」」」」」
――【……聴き忘れてたから、ちょっと
「では、最後です……貴方達に依頼を出したのは、
――ちょ、ジョン君ッ!? 声が! 声がッ!? 声がその……
「……へっ?」
「いえ、少し聞き疲れてしまったので……私の声や口調は気にしないでください……。それで? 貴方達に依頼を出したのは、
「いえッ……それは……」
「あぁ、聞きたい理由ですか? 簡単な話ですよ。お忍びながらも……貴方達と
――いやだから!?
……いや、コイツらを始末するために、”最後のピース”が必要なんだよ……!
「いやッ……だから……」
「……何ですか?
「いや、ですから……申し訳ないんですが……!」
「デキるワケがねェだろォッ!?」
〜 ググググ……ググッ! 〜
「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」
――ラグジャー及び、ジョンを含め……その場に居た全員がその叫び声に、一斉に振り向く……ッ! その一斉に視線が集まった場所には……ジョンに向け、文字通り矢を
「「「「「「あ、ア
「うるせェェェェェッ! オレは、ア
――叫びつつも、ジョンに向ける弓を引くのをやめないアホ……もとい、アルベールという男。更にその気迫は、
「……何のつもりですか、貴方? 今……貴方がしている事を、理解しているのですか?」
「うるせェェェェェッ! 黙れェェェッ! クソ貴族がァァァァァッ! それ以上、そのクサッたクソマミレな口を、開けるんじゃあねェェェェェッ!」
「ばっ、バカ野郎ッ! ヤメやがれ、ア
「うるせェェェェェッ! 黙れェェェェェッ! このッ、ボケ団長がァァァッ! ここまで来てそこのクソ貴族に……ヘコヘコするって、言うのかァァァァァッ!?」
――恐らく、貴族によって”酷い目にあった過去”でもあるのか……。その目から、今にも
「「「「「「おっ、おいッ! ア
「うるせェェェェェッ! 黙れェェェェェッ! テメェら、ボケ供もだよォォォォォッ! オレらが何で傭兵になったと思ってんだ!? エェッ!? クソ貴族に
「「「「「「「ッ!?」」」」」」」
「……フン、いつもオレをバカにしやがって……ッ! そんなオレに、そう言われて……そうすぐに言い返せねェなら……ッ! オレの行動を止めるんじゃあねェェェェェヨォォォォォッ!」
「「「「「「「バカッ!? 止めろ、ア
〜 バヒュゥゥゥゥンッ! 〜
――鉄決傭兵団の全員が、アルベールを取り押さえるよりも早く……放たれてしまった矢は、ジョンの”頭”目掛け……真っ直ぐ飛んで行く……ッ!
〜 バシィィッ! 〜
「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」
「……全く、まだ”サイン”も考えていないのに……こんな荒っぽいオファーをされても、困りますねェ……?」
――【……あ、
まぁ、危ない橋だったが……コレで”最後のピース”はゲットした……ッ!】――そう思うのは、首を僅かに動かして”凶弾と化した矢”を
『……ボスゥ、さっきも言ったケド……もうとっくに二人の”オウキュウショチ”はオワッタし、ソッチに出てイイかなァ〜? もう、さっきから……イヤな声とニオイがプンプンして、ボク……もうガマンならないんだけど……ッ!?』
――左手で首の左側面の頸動脈を
『……我慢しろ、オルセット。さっきから”打ち合わせ”している通り……お前が思いっきり
『ケッキョク、”メジルシ”って……何なの?』
『……”銃声”がしたらテントから出て来い。そうしたら話すから』
『モォ〜ハヤクしてネェ〜、ボスゥ? さっきからムズカシイ話ばかりで、ネチャいそうだよ〜』
――オルセットの
『あとちょっとだ。
『リョ〜カ〜イ。オルセット、アウト〜』
『あぁ。ボス、アウト』
――さて、この
よって、このボスとオルセットの”念話”が行なわれている間……
そして、素手で矢を掴み取り、首を擦りつつ”
「……こ、公爵様? お、おっ、お怪我は……?」
――ある意味、
「……んっ? あぁ……心配してくれたのね? 別イイよ、もう……」
「「「「「「「「……ヘッ!?」」」」」」」」
〜 ザッ、ザッザッザッザッ! ドゲシャァァァッ! 〜
「「「「「「「「ドワァァァァァッ!?」」」」」」」」
〜 ゴロンゴロンゴロンゴロンゴロン……ドサァッ! 〜
――おっと、ここまで
するとどうだ? まるで”
「……イッ、テテテテテ……ハッ!? もっ、申し訳ありませんッ! 公爵様ッ! ア
――平伏し、全力で謝罪した後のラグジャーの目には……
「フンッ、コレで良く十年も……彼女にフラれつつ、生き残ってきたモンだな?」
「……へッ?」
「まだ、気付かなねェのか……? どんだけアホなんだよ、この傭兵団は……?」
――ラグジャーにはハッキリ見えなかったが……左手で両目を覆いつつ、”やれやれだぜ”と言わんばかりに、首を左右に振るボス。
「こ、公爵様……? これは、どう言う……?」
「あのなぁッ!? オレは公爵どころか、貴族ですらねェんだよ!? クソッタレ供がッ!?」
「「「「「「「「……えっ、エェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!?」」」」」」」」
――【もう……イヤッ! この傭兵団ッ!? 同情していたオレが、馬鹿だと思っちゃうぐらいに……ホント、コイツらどうやって戦争を生き延びてきたんだよッ!? アホ過ぎるだろッ!?】――ボスの中で、目の前の
「じゃ、じゃあ……公爵……いや、テメェは一体ッ!?」
「……別にオレが誰かだなんて、ド〜でもいいだろ? それに……それを、テメェらに教える義理すらもねェんだよ……ッ!」
――ようやく”傭兵の目付き”とも言える、怒りの
……さぁ、ここからが……ボス達の
<異傭なるTips> ポーション
飲んだり、負傷した
これは「ベルガの家の地下室」にあった、”ベルガ”自らが調合して作成していたらしいの遺品の一つであり……この世界の市場だと”通常のポーション”よりも
そんな高級品を”数十本”程、ボス達は所有していたようなのだが……どうやら、テント生活を送る上で、使わざるを得ない状況に陥る場面が、何度かあった模様……。そのために、”残り少ない”とオルセットが言っていたのであろう……。
自ら調合を行なった事もある”ベルガ”の話によれば……『色が薄い程「粗悪品」、濃厚な色になっている程「良質品」』という法則があるらしい……。(恐らく、調合に使用した”薬草の成分”の抽出が、上手くいってるかいないか違いなのだろう……)
現状、その調合方法は不明ではあるが……その治療効果は、ある意味”万能”の一言に尽きる。使用すると、即座に激痛を感じなくなる程の”
盗賊団との戦闘の際、
ただし……
……と言うよりも、一般にでも出回っているようなポーションに、そんな過度の期待をしてはいけない……。主人公が、”
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