RE:PROLOGUE - II
第26話 RE:トアル”者達”の奮闘
〜 ザッザッザッザッザッザッザッザッ……! 〜
……寒々とした風が吹き抜ける真夜中……一つの足音が響き渡っていた。
「ハッハッハッハッハッ……! 急げ……急がないと……!」
――しかしながらここは一体、何処だろうか?
十二世紀から十五世紀に掛けて発達としたと言われる、「ゴシック様式」の民家がズラリと並んでいるのは薄暗くも判るが……他に特徴的と言えるのは”直線状”ではなく、”緩いカーブ状”に民家が
〜 カツン、カツン、カツン、カツン、カツン……。 〜
――おっと? さらに言おうと思っていた、”土”ではなく”
「ッ!? 嘘だろ!? 一回、
――おや? どうやら、
さらに言って仕舞えば……”走る男”の頬は、酒を飲んだ後のように赤らんでいた……なんて事は、一切なかった。完全な
〜 ザッザッザッザッザッザッザッザッ……! 〜
「ハッハッハッハッハッ……! 急げ……急いで……知らせないと……ッ!」
――おっ? 走っていた男が少し開けた道に出た事で、少しだけ彼の
だが確かに、
〜 カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン……。 〜
――そう言える根拠として、開けた道に出た際に見えた彼の状態……月明かりに照らされた顔を含め、所々が”
〜 ザッザッザッザッザッザッザッザッ……ドンッ! ドテッ! 〜
「イッテテ……あぁ、クソッ! もう街の
――背後から付かず離れずの足音に気を取られ、何かに激突しては
その高さは優に”
中世ヨーロッパな街並みに、十メートル以上の石壁……その要素を含んだ可能性として挙げられるのは、「
〜 カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン……。 〜
「ヒィ!? まっ、まだ追って来んのかよッ!?」
――その詳細は、今現在も進行中な”ホラーorサスペンスな展開”に水を差しかねないので、今は割愛させてもらおう。だが、簡潔に言うのであれば……都市や街の一角に建てられたイカにもな”
意外かもしれないが……日本にも、”織田信長”と事を構えた”
〜 ザッザッザッザッザッザッザッザッ……! 〜
「早く……! 早く……ッ!」
〜 カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン……。 〜
――しかしながら、この
その根拠の一つとして先程、一瞬だが月明かりに照らされた”髭モジャの男”……血塗れではあった。だが一切、
もしも”髭モジャの男”が”
〜 ザッザッザッザッザッザッザッザッ……! 〜
「ハァハァハァハァハァ……やっ、やったッ! あそこだッ! あそこに行けば……ッ!」
――街の城壁らしい壁伝いにある道を走り続け……ずっと付いてくる足音を撒くためか、幾重にも路地裏らしき狭い道や、小道を通り続けた末……男はそう呟いていた。薄暗くも真っ直ぐ続くその道の先……
イメージが付かない”◯者の諸君”向けに言えばアレである……! ホラ……洋画など、海外の住宅では「地下室の入り口」や「地下シェルター」に大抵なっている、”両開きのアレ”に似た感じである……!
「……足音もない、撒けている……! ……よしッ!」
〜 ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ……! 〜
――【急げ! 急ぐんだッ! アイツが来ない内に……ッ!】――息も絶え絶えだった”髭モジャ”の男は、最後の力を振り絞るかのように……先程よりも強く、強く、地面を蹴っては、必死にその扉へと走り続ける……ッ!
「急げ! 急げッ! アイツの正体を、カルカ様に……!」
〜 ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ……バタンッ! ゴロゴロゴロゴロ……ッ! 〜
――【あっ、アレ……おかしいな……? まだ……走れるのに……!?】――おおっと!? 意外と疲労が溜まってしまっていたのだろうかッ!? 随分派手にブッ倒れてしまった物だ……!
「……クフフフフフ……」
……ッ!? なっ、何だ!? この……周辺が”吹き抜けのある建物”や”洞窟”でもないに関わらず、
〜 カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン……。 〜
――【ッ!? あっ、アイツだッ! 嘘だろッ!? いっ、嫌だッ! オレも……オレも”リュック”の野郎みたいに殺されるッ!】――イヤイヤイヤイヤイヤ……借金したのに返さないんじゃあ、そんな目に
……アレ? でも待てよ……? この髭モジャ……さっきから
〜 カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン……。 〜
――【……うっ、動け! 動けよッ! オレの体ァッ! アイツが来てんだろッ!? 逃げ道は目の前にアンだろッ!? なのに……何で、何でッ!? 脚も手も動かないんだよォォォォッ!?】――圧倒的恐怖を前にした、極限状態……と言う奴であろうか? 因みに、私は全くの未経験だが……成る程、余程恐ろしいのだろう……。
……アラッ? だが待てよ……? この髭モジャ……そうだとしても……さっきから
〜 カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン……ガシッ! 〜
――【……うっ、ウワァァァァァァァァァァァッ!? やめろォォッ!? やめてくれェェェェッ! 髪を掴むんじゃあねェッ!? オレを殺すんじゃあねェッ!?】――やれやれ、随分大袈裟だなぁ? もう
これに
「……クフフフフフ……また一人……迷える者を救えましたね……」
――【……え……?】――エッ?
〜 ポタッ……ポタッポタッ……。 〜
――【……あぁ……そうか……さっき…から……何で、腕や脚…どころ……か……頭…でさえも……ボ〜ッと……して…たのか……分かって…き…た……】――イヤ……実況怠慢とは思わないで欲しい……ッ! 私だって……途中から……信じたくはなかったんだッ!
時間が経って……この
〜 ポタッ……ポタッポタッ……ポタタタッポタッ……。 〜
「……迷える者に、救済を……!」
――【オレは……もう……
男は確かに、
だが……男は、全力ダッシュの時に派手に転んでもいた……。
……じゃあ、
〜 ボタタタッ……ボタッ……。 〜
――直前の音と、ここまで描写を読めば……嫌でも”髭モジャの男”の男の末路は分かるであろう……。何故言わないかって? ……私だって、慈悲はある。それが例え……ボス達にほぼ関係ないような”モブ”であろうとだ……!
「……クフフフフフ……今夜はまた一段と冷えますねェ……。ですが、迷える人達のために……もう一頑張り、
――だが……これだけはハッキリ言える。コイツは……この”髭モジャの男の頭”を未だに持ったまま、涼しい顔で犯行現場から去ろうとしているコイツは……ッ!
〜 カツン、カツン、カツン、カツン、カツン……。 〜
――ただの”殺人犯”じゃあ
「ペネトラシオン・アローッ!」
〜 ヒュゥゥゥゥゥゥン……グシャンッ! 〜
――少し時間は
〜 グン……マァァァ……ッ! ……グラッ、ドタァァァァァァァン! 〜
――それはいつしか、ボス達が倒すのに命を賭ける程に苦戦していた……”マグズリー”であった……! その当時、彼らが倒した際には”毛皮が売れない程”にボロボロだったのだが……この仰向けに倒れ伏した個体はそうじゃあなかった……!
”熊の急所”……熊が直立した際の”両前足のド真ん中”に、
〜 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……グサッ! 〜
「……フゥ、死んでるか……でもこれでやっと、一週間分の食糧になるかならないか……ってトコロかぁ……」
――腰に携帯していた”大振りのナイフ”を首に突き刺し、そう呟く狩人。……ふむ、冬に向けての食糧調達という感じなのだろうか?
深く被った深緑色のフードの所為か、その表情は全くと言って良い程見えなかったが……その声色は、
「……あぁ、ヤメヤメ。ジッと見てても食料は増えないって……! 早く、解体しなくちゃ……!」
〜 ……グサッ! ザクッ、ザクザク……ザクッ、ザクザク…… 〜
――
現状、伝えられるのは……方から
「おぉ、カンタン様! 素晴らしい成果ですな!」
――解体に没頭していた狩人の後方から、やけに親しげな声が控えめに響く。周囲の獲物に対する配慮なのかは
現れたその姿は、元は老兵なのだろうか……確実に初老は越えているにも関わらず、その肉体は
ファルシオン……とある
ただ、その当時に流通していたのはどれも”百センチ”は越えない物ばかりの、
また、
「……ジョゼフか。そういうお前はどうなんだ? 今はお喋りよりも、みんなに食わせるための食糧が必要だって事は、嫌でも分かっているだろう……?」
――カンタン……と言うらしい狩人は、そんなジョゼフと言うらしい彼を
「勿論……このジョゼフッ! 抜かりなくパルト・ディアーなどを、シッカリ狩っておりますぞ? ……
「……ハァ、全く……お前という奴は……」
――呆れたように軽く首を左右に振るカンタン。だが、完全に呆れ切ったような物言いではなく、何処となく”
そんな呆れた物言いをさせたジョゼフは、
「いやぁ、しかし……
「……そうか」
――少し離れた位置で、立ちながら話しかけるジョゼフに対し……黙々と狩った獲物を解体する手を止める事なく、素気ない返事をするカンタン。
「ただ、誠に勝手ながら……僅かながらでも、カンタン様の元から離れてしまった事を、お許し下さい……!」
「……ハァ、全く……お前は律儀過ぎ……!? 馬鹿ッ! こんな真夜中とは言えど、誰が見ているか分からないだろッ!?」
――タメ息を吐きつつ、何気なく後ろを見るカンタン。だが……背後でジョゼフが行っていた行為を見た瞬間ッ! カンタンは鬼でもなったかのように、血相を変えた……!
その行動とは、カンタンがどう見ても”一介の狩人”にしか見えないにも関わらず、まるで
「ハッ! もっ、申し訳ありませぬッ! か、カンタン様の前では、失礼な態度はど〜しても取ってはならないと思い……つい……!」
「ついも何もあるかッ!? オレ達は見つかっちゃあいけないんだよッ!? 分かってんのかッ!?」
「ほっ、本当に申し訳ありませぬッ! どの様な罰をも受けてみせますので……!
「もうッ! いい加減にしてくれよッ! ”傭兵崩れ”が罰を受けるとかッ! 生意気言ってるんじゃあないよッ!?」
――”見つかっちゃあいけない”……どのような理由があるか今はまだ分からないが、二人は周囲を警戒するかの如く、
その際にポカポカとカンタンは、未だ首を垂れ続ける彼の頭を殴っていた姿が……地味にシュールだったが……。
「全くもうッ! アンタ、戦う以外に何が出来るっていうのッ!?」
「ハッハッハッ、このジョゼフッ! 自慢ではないが……出来る事は傭兵の時に
「ハァ、全く……! アンタって人は……ッ!」
――”不器用”なのか”馬鹿”なのかは知らないが……どうやら、このジョゼフと言う男の「ヤらかし」は
だが、カンタンが即座にナイフを取り出すなど、弓を引くような行為を見せないところ……これでもジョゼフは、カンタンにとって
「おぉそうだ……!
「ハァ……何があったの?」
――呆れた末に、解体作業に戻っていたカンタンが……ウンザリしたような口調で、背後に居るジョゼフに尋ねる。
「カンタン様……本当、大変申し上げにくいのですが……情報収集に領主の館へと向かわせた”リュック”と”エリック”の二人が……死んでいたそうです。二人とも……首がない状態で……」
〜 ザクッ、ザクザク……ザクッ、ザクザク……ピタッ! 〜
「言っておきますが……これは我輩のいつもの冗談ではありませぬぞ? 先程、パルト・ディアーを拠点に収めてきた際に、拠点に居た者から……
「……またなの……?」
「……ウェ?」
〜 ザクッ、ザクッザクッザクッグサッ! グサッ! グサッ! グサッ! グサッ! グサッ! 〜
「クソッ! クソッ! クソッ! クソッ! クソォォォッ! あのビチクソ供がァァァァァッ! あの人を人と思わないビチクソ領主共めッ! あのクソ殺人鬼めッ! 一体何処まで、あの街をッ! 領民のみんなをッ! 苦しめれば気が済むのよッ!?」
「カッ、カンタン様ッ! 落ち着きなされッ! どうかご乱心せず、落ち着きなさって下さいッ!」
――うぉぉぉ……ある程度分かってきたが、この光景は凄まじい……!
ジョゼフから、カンタンの仲間らしき
それを
「……悔しくないの、ジョゼフ? アンタは悔しいと思わないのッ!?」
――ジョゼフに力強く手首を握られ、無理矢理動きを止められたカンタンは、悲痛な口調で彼に尋ねる。
「勿論、このジョゼフ……悔しくない訳ではありませぬぞ? ただ……今は辛くとも、当たり散らさず……耐え抜かねばなりませぬ……!」
「どうして……どうして……アンタって奴は……!?」
「カル……オホン、カンタン様。傭兵と言う者は、気を良くした
「……」
「そして、その感情の
「……」
「ですから、カル……オホン、カンタン様。完全に慣れろとは言いませぬ。ですが……カンタン様の民を想うその気持ち、決して忘れないで下さい……! そして……今は、耐え抜いて下さい……ッ!」
――ずっとカンタンのナイフを持つ手の手首を握り締めつつも、語り続けていたジョゼフ。だが……唐突にその手を離してしまう。握られてたナイフがカンタンの手から滑り落ち……そう思ったかと思えば、カンタンは素早くジョゼフの胸に顔を
唐突の出来事に、目を見開いてしまうジョゼフ。だが……血塗れになった手で自身を服を汚されていたにも関わらず、ジョゼフは全く怒らなかった……。
「全く……ホント、お前って奴は……お前って奴は……ッ!」
……カンタンは泣いていた。ジョゼフに対して悪態を
「ハッハッハッ。
――話の内容から察するに、何処かの街に革命を起こそうと奮闘する
まだまだ二人を詳しく知る筈もないのに、この時だけは……月明かりの真下、今にも
〜 ズルッ……ズルズルッ……ズルッ……! 〜
「ハァ…ハァ…ハァ……!」
――またまた少し時間は
〜 ズルッ……ズルズルッ……ズルッ……! 〜
「ハァ…ハァ…ハァ……!」
――えぇ? 何で暗闇なのに、人影だけで”女性”と分かったかって? フフフ……それはだなぁ、◯者の諸君よ? 例え変装の達人がこの世に居たとしても……その変装がどんなに完璧だろうと、決定的に変えられない物があるのだッ!
〜 ズルッ……ズルズルッ……ズルッ……! 〜
「ハァ…ハァ…ハァ……!」
――まぁ、勿体振らせてもしょうがないので答えるとしよう……。それはズバリ、「骨格」であるッ!
これは医療従事者や、
〜 ズルッ……ズルズルッ……ズルッ……! 〜
「ハァ…ハァ…ハァ……!」
――最も判り易いのは、「
逆に女性は、骨盤が”広く”、
判別した彼女は随分と
〜 ズルッ……ズルズルッ……ズルッ……! 〜
「ハァ…ハァ…ハァ……!」
――と言う訳で、今回はその「体の付き方」で”彼女”と断定した訳だ。だが……トレンチコートなど、一眼では男女の判別が付きにくい場合には、”
”
〜 ズルッ……ズルズルッ……ズルッ……! 〜
「ハァ…ハァ…ハァ……!」
――とまぁ、ここまで「実況orナレーター無双」と
いや何せ……ずっと何かを背負って引きずっている上に、その進行スピードが異様に遅く、
更に言って仕舞えば、周囲が
「おいッ! こっちだッ! 早く、来てくれッ!」
――よっ、ようやくだ! ようやく別の声が来たァァァ……ッ! これで実況できる……ッ!
「はっ!? 何なんだよッ!?」
「足跡を見つけた! あのクソ供……
「ッ!?」
――何かを引きずっていた女性は急に足を止め、声のした方向へ向けて素早く振り向く。その先……彼女のいる場所から
「よく見つけたなぁ? どうやったんだ?」
「バカッ! テメェらの
「ッ!?」
――足を止め、耳を
「ほぉ〜そりゃあ、スゲェや! アニキは
〜 スコンッ! 〜
「このアホベールッ! 何、呑気な事をくっちゃべってんだ? このスットコドッコイッ!?」
「イッテェェ〜ッ!? アニキィ〜? オレは、”ア
「バカ野郎がッ! グズグズしてたら領主様に怒られるだろうがッ!? 期限の一週間以内に、あの
「そ〜ッスけど〜、もう見つけたんなら〜そ〜セカセカしなくても〜」
「その期限の一週間が、
〜 スコンッ! 〜
「イッテェェ〜ッ!? だから、アニキィ〜? オレは、”ア
「全く……! 何でこんなマヌケが、オレの部下にいるんだよッ!?」
〜 ズルッ……ズルズルッ……ズルッ……! 〜
「ハァ…ハァ…ハァ……!」
――会話が一段落し、このまま立ち止まっていては不味いとでも思ったのか……女性……イヤ少女は、一刻も早く遠くに
「兄貴ッ! 早くあのガキ供を追い詰めましょうッ! もう目と鼻の先ですよ!」
「んな事、分かってるんだよッ!?」
「どっ、どうしたんですか……兄貴?」
「テメェら、忘れたと言わせねェぞ……!? 何でこうも一週間近くも、森の中で
「そっ、そんな事は……」
「じゃあテメェ、最初に居た……一週間前に居た、オレ達の人数は何人だったんだ?」
「えぇ〜っとぉぉ……そのぉぉ……」
「五十人だよッ! マヌケッ! 五十人ッ! それが今何人居るんだッ!?」
「えぇぇっと〜イチィ……ニィィ……あぁ、暗くて良く見えねェ……」
「八人だよッ!
そんな散々な目に
――遠目から聞こえてくる声のため、どのような態度や行動をしているかは分からないが……恐らく、今のリーダーらしき男の怒声で、残りの”七人”の部下らしき人物達は、自分達の”無能さ”を指摘されて、ションボリと沈黙しているのだろう……。
だが、一方でそんな事はお構いなし……いや、むしろチャンスと、未だ足を止めている追跡者一味から離れるように少女は脚を動かしていた……!
「ハァ……いいかテメェらッ! 分前が欲しかったら……何が何でもあの亜人のクソガキ供を探し出して、八つ裂きにしろッ! どんなにボロボロになろうと、
「「「「「「「ウォォォォォォォォォ〜ッ!」」」」」」」
――成程? 恐らく「鉄の決意」と書いて、「鉄決」なのだろう……。しかしながら、厄介な物だ。この追跡している傭兵団もそうだが、彼らが一週間近くも追跡している”亜人”だという二人……未だ
その容姿だけで、善悪を判別するのは? ……という声も上がりそうではあるが、”
「よ〜し、テメェら! こっちも
「「「「「「「ヒャッハァァァァァァァァ〜ッ!」」」」」」」
――うわぁぁ……士気の上げ方が上手いのだろうが……応答が完全に、
〜 ドドドドドドドドドドドドドドドド……ッ! 〜
――
「……ウゥゥ……ウゥ……!」
「ッ!?」
――
「に……げろ……ね…ぇ……ちゃ……ん……! オレ…を……おい…ても……!」
「……」
〜 ブンブンブンブンッ! ズルズルッ……ズルズルッ……ズルズルッ……! 〜
「ハァ…ハァ…ハァ……!」
――未だ暗闇の中、二人の姿はハッキリと見えないが……それでも”姉”だという少女は、背中に背負う
「ば…か……! ね…ぇ……ちゃ……ん……! オレ…を……おい…て……か…ないと……!」
〜 ズルズルッ……ズルズルッ……ズルズルッ……! 〜
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ……!」
――【置いてけない……絶対、置いて行かない……ッ!】――おっと!? やっと読み取れたッ! ……いや、また実況怠慢をしていた訳じゃあない……。自慢ではないが、私は大抵の人物の心は読み取る事が出来る。
だがこう……不思議な物なんだが……。この”姉”と言う少女は、何故なのだろうか……実に奇妙な物だが……
まぁ、
「アニキィ〜! 見つけやしたぜ〜ッ!」
「ッ!?」
――不意の
「……ナニィ? 何処だッ!? 何処にいるッ!?」
「ホラァ〜アソコ〜! あの木の傍で、人影っぽいの見えないッスか〜? ちょ〜ど、二人ィ〜? しかも〜引きずっている跡も〜アソコに続いてるみたいですし〜?」
「ッ!?」
――その
「……おい、アホベールッ!」
「ヒィッ!? なっ、何ッスか……?」
〜 バンッ! 〜
「ウッ!?」
「やれば出来るじゃあねェか!? エェェ!? ハッハッハッハッ!」
――姉という少女が戦慄のあまり足が
まぁ、何と言うか……こんなリーダーだからこそ、”マヌケ”しか集まらなかったんじゃあ……と、
〜 ズルズルッ……ズルズルッ……ズルズルッ……! 〜
「あっ! 逃げてますよ、アキニィ!? 今、木の影の方に動いてヤスッ!?」
――”
「出来したぞテメェらッ! あと一息だ! 追い詰めろッ!」
「「「「「「「ヒャッハァァァァァァァァ〜ッ!」」」」」」」
――その一斉に上げられた雄叫びに、もう逃げられないと悟ったのか……姉という少女はその場で縮こまりながら涙を流していた……!
【……お願い…します……! どうか……見つからないで……!】――彼女も相当の疲労が溜まっているのだろう。心中で呟く”
〜 ドドドドドドドドドドドドドドドド……ッ! 〜
「ヒャッハァァァ〜ッ! 見ィ〜付ッけたッ! ……アレェェェェェェェェッ!?」
――”アルベール”と言う
……
「アレェェッ!? アレェェェェッ!? アレェェェェェェッ!? おっかっしいィィなァァァァッ!?」
……◯者の諸君、大抵こういう時にこのような事を言っている人物は……相手の潜伏場所を分かっているのにも関わらず、
その証拠に、先程から周囲を再び見回したり、低木の根っこ部分を覗いたり、更にはその低木を腰に刺していた剣で切り刻もうともしていたのだが……見つからなかったのだ!
「アレェレェレェレェェェェッ!? おっかっしいィィぞォォォォッ!?」
〜 スコンッ! 〜
「イッテェェェェ〜ッ!? 何ッスか〜!? アニ……ッ!?」
――
「……おい、アホベール? お前、此処に例のクソガキ供が居るって言ったよな?」
「へっ、ヘェ。だから今、必死に探して……!」
〜 ゴンッ! 〜
「ムダな時間取らせてんじゃあねェよ!? このクソッタレがッ!」
「イッタァァァ〜ッ!?」
――強烈な”
【クソッ! けど、魔物が襲い掛かって来ないって事は……此処には居ないって事か……?】――成程? 今のような状況と似た手口で、あの
「うわぁぁ……アホベ〜ルのヤツ、
「「「「「イェ〜ヘヘヘヘヘヘヘヘ〜」」」」」
――リーダーがリーダーなら、その下の
「呑気に笑ってんじゃあねェぞクソ供がッ!? 期限は明日だって、このアホベールにしか言わなかったと思ってんのかッ!?」
「「「「「「……」」」」」」
「……よし、お前ら? その沈黙は分かってたって事だな? なら……とっと他の場所を探すんだよッ! クソ供がッ!?」
「「「「「「あっ、アイアイサ〜ッ!?」」」」」」
〜 ザッザッザッザッザッザッザッ……。 〜
「オラ! アホベールッ! いつまで寝てんだッ!? とっとと行くぞッ!」
〜 ザッザッザッザッザッザッザッ……。 〜
「……あっ、アイアイサ〜ッ!? ……って!? 待ってくれ、アニキィィィ〜ッ!?」
〜 ザッザッザッザッザッザッザッ……。 〜
……まぁ、何処となく酷い”ド◯フ的なコント”を見てしまった気がするが……
〜 ……パラ、パラパラ……プワサァァァァァァ! 〜
……Wh
本当に失礼、実況に戻ろう。エェ〜私が何を目撃したかと言えば……
「……ねぇ…ちゃ…ん……! むり……す…ん……なよ……!? マナ……も…う……ない……ん…だろ……?」
……とまぁ、焦らしはここまでに真面目に言うのであれば……
恐らくだが……アホベールが捜索時、低木の根っこ部分を覗いたりしても見つけられなかったのは……この状況のように彼女を中心に、ドーム状に覆い被さるように葉っぱが茂っていた事と、調べた際の光源の不十分さであろう……。
……残酷ながら、松明は負けだろう。それにアホベールの注意深さの
「……それ…に……マナ……も…う……ない……ん…だろ……?」
――『木を隠すなら森の中』……なんて事を彼女が知っていたかは定かじゃあないが……あの絶体絶命に近い
だが先程から”不自然に葉っぱが一斉に落ちた音”と……?
「ハァ……ハァ……ハァ……ウゥゥゥゥ……!」
〜 ……パキ、パキペキ……パキペキポキバキッ、ブワサァァァァァァ! 〜
――これまた、”不自然に枝が一斉に折れては落ちた音”がしたかと思えば……再び二人の人影が”低木の茂み”があった場所の一つから
そして、弟らしき少年の発言を推測すると……恐らく、姉という少女の残存魔力は、ほぼ
〜 ザッ、フラッ……ザッ! ……ズルッ……ズルッ……ズルッ……! 〜
「ハァ……ハァ……ハァ……!」
「……ねぇ…ちゃ…ん……! むり……す…ん……なよ……!?」
――もう、なんと
蚊の鳴くような声で心配する彼の制止を振り切り……スピードダウンしながらも、その歩みは止まらない……ッ!
「……すま…ねぇ…! ほ…んと……すま…ねぇ…! ねぇ…ちゃ…ん……!」
――その健気さに罪悪感がのし掛かったのか……弟らしき少年は、姉という少女の背中に突っ伏しては、なけなしの涙を流しては
……
だが、倒れてしまった……。そして助けられてしまった……
〜 パァァァァンッン! パァァァァンッン! パァァァァンッン! 〜
――だが、どうやら”
「アァァ!? 何の音だッ!?」
「「ッ!?」」
――少年と少女は気づいてしまう……! 自分達が
そして、そう遠くない場所……自分達が逃げていた
〜 ザッザッザッザッザッザッザッ……。 〜
「兄貴! こっちだッ! 足跡と引きずった跡が、またありやしたぜッ!」
「何ィッ!? あのクソガキ供! さっきはどうやって隠れてやがったんだッ!?」
――まだまだ遠くだが、
〜 パァァァァンッン! パァァァァンッン! パァァァァンッン! 〜
「聞いた事のねェ音だなぁ……? あのクソガキ供……魔物に襲われて応戦でもしてるのか?」
「でも〜こんな魔法の発射音とか〜? あんな音を出す魔法って、ありましたっけ〜? アニキィ〜?」
「……まぁ、どうでもいい。おい野朗供ッ! どちらにせよ、アイツらはただの”追
「「「「「「「アイアイサ〜ッ!」」」」」」」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァッ!」
――とんでもない”
〜 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……。 〜
「に…げろ……ねぇ…ちゃ…ん……! はや…く……! お…れを……おい…て……! に…げて……くれ……!」
「ハァハァハァハァハァハァハァ……ッ!」
――先程の音で警戒したのか、迫る足音は
……彼女の思いは読み取れなかったが……今正に、そんな思いが
〜 パァァァァンッン! パァァァァンッン! パァァァァンッン! 〜
「ッ!?」
――再び、”
「おい! 気を付けろッ! また音がしたぞッ!?」
「ヒェ〜!? ここらへん、まっ、魔物が多くなってるんッスかねェ〜?」
「……そうだろうな。だったら……くっちゃべってねェで、襲われたくなかったらより警戒しろッ! このッ! ボンクラ供がッ!」
「「「「「「「あっ、アイアイサ〜ッ!」」」」」」」
――考えが堂々巡りしていたのは、数分にも満たなかった。だが……それでも確実に、
「……ちき…しょう……! ……ちき…しょう……ッ! おれ…が……まだ……たた…かえ…たら……ッ!」
〜 パァァァァンッン! パァァァァンッン! パァァァァンッン! 〜
――またまた響き渡る”
「……スゥゥゥゥゥハァァァァァァ……ッ!」
「……ねぇ……ちゃん……?」
〜 ズルズルズルッ……ズルズルズルッ……ズルズルズルッ……! 〜
「……ッ!? ねぇ…ちゃん……! や…めろ……! やめろ……ッ!」
――覚悟を決めたかのような深呼吸をした後、姉という少女は今までにない速度で歩み出すッ! その行き先は、”
〜 ズルズルズルッ……ズルズルズルッ……ズルズルズルッ……! 〜
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァッ!」
「ねぇ…ちゃん……! や…めろ……! やめて…くれ……ッ!」
……恐らく、これは賭けだ。途方もない大馬鹿者がするような賭けだ。だが、この絶体絶命かつ絶望的なこの状況……! 彼女が考えられる最善の策は、もうこの賭け……いや、もう
〜 ズルズルズルッ……ズルズルズルッ……ズルズルズルッ……! 〜
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァッ!」
「やめて…くれ……ッ! ねぇ…ちゃん……! ま…もの……か……クソ……ニン…ゲン……かも……わか…ら…ない……のに……ッ! やめてくれ……ッ!」
――【魔物だろうと……! ニンゲンだろうと……ッ! 生き延びる……ッ! 私達は…一週間……! 生き延びてみせる……ッ!】――再びようやっと読み取れた……この彼女の思いこそが、この行動を突き動かしていたのだ……ッ!
〜 ズルズルズルッ……ズルズルズルッ……ズルズルズルッ……! 〜
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァッ!」
「ねぇ…ちゃん……! やめ…ろ……ッ! やめて…くれ……ッ! ねぇ…ちゃん……! ねぇ…ちゃん……ッ!」
「……おいッ! また跡を見つけたぞッ! こっちだ、こっちに居るッ! 確実に……この先にあのクソガキ供は居るぞッ! テメェらッ! もう一踏ん張りだッ! 警戒を怠るなよッ!?」
「「「「「「「アイアイサ〜ッ!」」」」」」」
――果たして、この緩やかなる”デッドヒート”は……? 姉という少女の”大博打”は……? この二組の内、勝利の女神はドチラに微笑むというのか……ッ!?
……無論、それは”神のみぞ知る”という奴だ……!
〜 ズルズルズルッ……ズルズルズルッ……ズルズルズルッ……! 〜
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァッ!」
「ねぇ…ちゃん……! ねぇ…ちゃん……! ねぇ…ちゃん……ッ!」
……だが私は……ここまで必死に頑張る二人が、”生き残る事”に……ボス達の……ハッ!? ちっ、違った! ……ウゥン! わっ、
<異傭なるTips> その頃のボス Part1
「ブゥェクッシュッ!?」
「ウワッ!? ど〜したのボスゥッ!? そんなデッカいクシャミして〜?」
「……いや、スマンなオルセット……なんか……
「タマシイをカケラレタ……? ……それって、ボスゥ? ”アラテのマモノ”なのォ?」
「おい、やめろ。
「そぉ〜お? ……あっ、ボスゥ! オ〜ユ〜、ワいてるよ♪」
「……おぉ、そうか。サンキュ、オルセット。……あぁ、
「あっ、ボクもココアでチョウダイね〜?」
「……おい、オルセット……? 寝る前は、甘い物はダメだって言わなかったか……?」
「……」
「言っとくが、訓練やったからそのご褒美に……! とかで、ゴネてもダメだぞ?」
「……」
「返事は!?」
「……ハ〜イ」
「……そう、スネんなよ。お茶なら入れてやる」
「ッ! じゃあ……!」
「ただし、砂糖は抜きだ。いいな?」
「……ハ〜イ」
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