第19話 RE:doss Battle-1 下剋上盗賊騎士 赤壁ノ”グラヴォキエ” - 2


 〜 キンッ! シュボッ! ズバンッ! 〜


 ――赤壁のグラヴォキエとボス、この二人によるデスマッチの開始を告げるゴングは、ボスのフリピスによる発砲音であったッ!


 〜 ……チュインッ! 〜


「……クソッ、対物アンチマテリアルライフルが欲しくなる硬さだな……!」



 ――ソビえ立つ巨大な盾タワーシールドに弾丸を弾かれ、舌打ちをしつつ鬱陶うっとうしそうに言うボス。

 因みに、馴染みない人向けに「対物アンチマテリアルライフル」を簡潔に説明させてもらうと……ボスが持つ”フリピス拳銃”でもブチ抜けない強固な物体を、容易くブチ抜く程に強力な威力を持つ「大型ライフル」という物になる。


 どうしてそんな物が生まれたのか……というのは、今回の話を軽く”三万字以上”にしてしまう可能性があるため、恐縮きょうしゅくながら割愛かつあいさせてもらう。しかし、その威力に関する・・・・・・性能は、前述のブチ抜くウンヌンのように”フリピス”を遥かに凌駕りょうがする。


 因みにだが、ボスが扱う”フリピス”。ずっとこの章で使用している代物であるが、参考程度にこの銃の威力を明言しておこう……。ただ、使用する口径や発射薬の違いがあり、ボスの物は確実に”それだ”とは言えない事は了承してほしい……。

 

 さて、肝心の威力だが……これはとある”吸血鬼アー◯ード”が使用している改造弾の元となった「454カスール弾」というマグナム弾の威力に近い。より詳しく言えば、映画や漫画でよく聞くであろう「44マグナム弾」なら約”二倍”、日本のお巡りさんが使用する拳銃の弾薬である「38SPスペシャル弾」であれば、おおよそ”十倍”の威力に相当する。


 しかしながら、そんな威力も”対物ライフル”の前にはかすんでしまう。何故かと言えば、とある検証では、おおよそ五十メートル離れた先から「H形鋼エッチがたこう」という建材を、縦に三つ並べた状態で発砲した。すると、それ以前の検証で使っていた拳銃ハンドガン小銃ライフルでは、良くて”一枚”しかブチ抜けなかったのが……「対物アンチマテリアルライフル」では、”二枚”を軽くブチ抜き、三枚目に大きな傷・・・・・・・・を残す程の威力を見せつけたのである。


 しかもこれは序の口である。拳銃ハンドガンなどで歯が立たない物をブチ抜く以外の用途では、「長距離狙撃」に使われるのだ。何せ、(遠い程弱くはなるものの……)その威力を十分に発揮出来る”有効射程”は、脅威の「二千メートル二キロメートル」……ッ! 現代の歩兵用の装備としては、最長の部類に入るのだ。


 これを熟練の狙撃手スナイパーが使えば、それだけの距離が離れた敵に対して一切悟られる事なく……瞬く間に、頭を赤い血飛沫ちしぶきに変えたり……時には上半身と下半身を離婚状態真◯二つにするなど、残酷な事も余裕で可能になるのである……。

 まぁ、ボスはそんなあったら速攻で決着が・・・・・・・・・・つく・・代物をご所望な訳だが……勿論、無い物強請ネダりである。


 ここまでの運命さんによるボスへの”遊びのサービス時間”は、終わりを告げる……。ここから先は……全身全霊は勿論、工夫を凝らし、貧弱な装備の中……勝利を掴み取りに行く、覚悟が必要になるのだッ!



「フン、多少威力が強かろうが……所詮は弓矢と同じか……」


 ――大盾の上部から目を覗かせつつ、ボスをあざける団長。


「チッ、守るしか能のない装備をしている、引きもり野郎に言われたかねェよッ!」


「……引き篭もりだぁ? それならオレも、コソコソとその”チンケな弓矢モドキ”を再びつがえようとしている貴様になんざぁ、言われたくないなぁ……?」


 ――視線をこちらに向けつつも、両手はフリピスの再装填リロードを行っていたボスに対し、見下すように睨みつつ言う団長。


「ッ!? チッ」


「それと……教えといてやる。オレの装備はただ単に”守る事”だけじゃあなく……貴様が自慢げに語っていた、”飛び道具”になる事もなぁッ!?」


 〜 グッ、ブゥオォォンッ! 〜


「ッ!? オワァァッ!?」


 〜 ヒュルルル……バッ! ……ルルルル……バコォォンッ! 〜


「……ゥゥ……ッ!? おいおい、嘘だろ!? キャプ◯ン・ア◯リカかよッ!?」



 ――突如飛来した物体を”飛び込み回避ローリング”することで、何とかかわす事に成功したボス。その正体が何かと、音のした方向に視線を向けると……そこには、団長が左腕に装着していた筈の”丸盾”が、洞窟の壁に深々と突き刺さっていたのである……!


 その攻撃方法が、ボスのオタク知識の中にあった”アメコミアメリカン・コミックヒーロー”にあまりにも似ているため、咄嗟にその名前を口走ったのだろう……。


 ……実写版がカッコ良かったからな……。だが、あのクソ盗賊と同じにして欲しくねェよ……ッ!



「きゃぷてん……誰だ、ソイツ?」


「テメェとは比べ物にならない程に偉大な英雄Heroだ! 特に、愛国心と正義感に関してはテメェ以上の、高潔で偉大な人物だッ!」



 ――立ち上がりつつ、団長に指を差しながら叫ぶボス。因みに軽く補足すれば、その英雄Heroが居た世界での第二次世界大戦では、悪の組織が世界各国の主要都市に爆撃しようとしていた際に、その組織の最新鋭の爆撃機を襲撃。


 だが、最初のターゲットとなっていた祖国アメリカに爆撃を止める事が出来ないと分かった彼は、自分ごと爆撃機を北極に沈める事で世界を救った……という、”究極の自己犠牲”を成し遂げた英雄Heroなのである。


 因みにそんな彼には、「土曜の日、ダンスをしないか?」……と言うのは禁句である。



「愛国心? 正義感? フン、くだらねェ! それでオレの部下達の腹が膨れていたのなら……盗賊なんぞ、ド低俗な事に手を染めなかったんだよッ!」


 ――団長がそう叫び、自身の顔の傍に左拳を掲げると……なんと!? 左拳が僅かに光ったのだ……!


 〜 ……ググ、パラパラ…… 〜


「クソッ、やっぱフリピスはリロードが面倒……んッ? ウワァァッ!?」


 〜 ヒュルルル……バッ! ……ルルルル……バシィィッ! 〜



 ……恐らく、魔法の力なのだろう……。団長の左拳が光った後、それに共鳴するかのように壁に刺さっていた”丸盾”もほのかな光を帯び、もがくように僅かに動いたかと思えば……次の瞬間、大砲にでも射出されたかのように、ボスの後頭部目掛けて高速で飛来していたのだッ!


 その時のボスは、【もう一度投げるにしても、遅かれ早かれ取りに行くだろうし……今がリロードのチャンス!】――なんて思いながら、二丁目のフリピスの銃口に早合を押し込もうとしていた。だが……盾が一人でに動いた際の”不自然な崩れる音”を耳にし、振り向いた時……! という感じで、再び”飛び込み回避ローリング”することで、何とかかわす事に成功したいたのだった……!



「チッ、当たると思ったのに……」



 ――顔を軽く歪ませながら、飛来した丸盾に左腕を伸ばし……まるで着陸する飛行機を迎え入れるかのように、スルッと丸盾に付いた持ち手のベルトに、左手を滑り込ませるのであった……!



「なっ、なんだよ!? その盾!?」


「……僅かだが、王国で産出された”王魔金”を含んだ特別製の盾だ。”魔金剛”よりも強度は心許ないが……それでも青銅や鉄よりも遥かに高い強度と、”魔銀”を遥かに超える”魔導性”を持つ……オレの誇りの一つだ……!」


「おっ、オリハルコンッ!?」



 ――チョッピリ恍惚こうこつとした表情で、舐め回すように丸盾を眺めつつ語る団長に対し……立ち上がりつつ、驚愕のあまりか叫ぶボス。



 因みに、こちらも軽く解説すれば……古代ギリシア・ローマ世界の文献に登場する、銅系の合金と考えられる金属である。ファンタジーな世界では”伝説の金属”としてよく登場しては、”伝説級の武器や防具”の材料としても使用される。その性質は産出される異世界によって異なるが、大抵は『とてつもなく硬い』のが特徴だ。


 ただ……この『ウォーダリア』では、”魔導性”という言葉から推測するに……魔力を通しやすい性質・・・・・・・・・・を持つのかもしれない。でないと、あの”丸盾”の挙動は説明しきれないだろう。



「……オリハルコン? 何だそれは? オレのこの盾に含まれているのは”王魔金”だ」


「はっ? 何で二度もオリハルコン入りだって、自慢してんだよッ!? クソがッ!」



 ――これは……何とも奇妙な光景だ。ただ、私が推測出来る事が一つある。それは、ボスのスキルにある『バレッド王国共通言語 マスタリー』と言うスキルだ。理由としては海外の言葉を翻訳ほんやくした本などを読んだ際に、「アイルランドなまりの英語」や「ロシア訛りの英語」というのが文の中にあったりするであろう。


 では、それを完全に「日本語に訳す」事は可能であるだろうか? ……答えは『どんな翻訳家であろうと、匙加減さじかげんに悩む物』なのである。つまり、翻訳家によってその”訛り”は「大阪弁」になるかもしれないし、「博多弁」になるかもしれない……。


 もっと言えば、「弁当」のように元からその国にはなかった言葉が、「Bento」として新しく作られる事だってありうる……。これを踏まえて、彼の『バレッド王国共通言語 マスタリー』と言うのは……正確にはその言語の全てが脳味噌にインプットされるブチ込まれるのではなく、限りなく精度の高い翻・・・・・・・・・・訳機・・が、スキルによって脳内に搭載とうさいされる……と見た方が良いのだろう。


 よってこの現象は、ボスの耳には「王魔金」という言語が彼の世界ではない故に、「オリハルコン」と聞こえ……また団長の耳には「オリハルコン」と言われていても、彼の世界ではその名詞がない故に”王魔金”と言い張る。ここまでの話で散見された現象も含め……お互いが、分かる言葉でしか理解出来ていない故に起きている、言語スキルのエラー・・・・・・・・・が起きている可能性が高いのだろう……。


 話のテンポを削ぐような長話で大変恐縮であったが……もしかすれば、今回の試練を乗り越えたとしても……今後の冒険によっては、ボスは”言語の壁”と言う難関にブチ当るのかもしれないだろう……! その可能性もあると見て、続きを見て欲しい……。



「貴様ァァァァァッ! オレの部下ならず、オレの”誇り”まで、また訳の分からん事で侮辱ぶじょくする気かッ!?」



 ――【……これ、もしかして……”オリハルコン”って、オレにしか分かってないのか……?】――鋭いね、ボス君。座布団でもあげたいが……ここであげても、この戦闘じゃあ無価値に等しいだろうから、代わりにあの偽善盗賊さんに何か言ってやってくれ。


 ……別に、ウケは狙ってねェんだけど……。



「フッ、かもな? どうゆう意味かは……その悪事しか思いつかない立派なオツムで、考えられるモノなら考えてみな?」


「貴様ァァァァァッ! 生きて帰れると思うなァァァァァァッ!」


 〜 グッ、ブゥオォォンッ! 〜


「うおッと!?」


 〜 ヒュルルル……バッ! ……ルルルル……バコォォンッ! 〜


「……考えろ、って言ったのに……なら、行くぞォォォッ!」



 ――そしてボスは走り出す。正面がダメなら側面を……! そう考えて走り出す。近くまで走る道中、石を拾っては投げ付ける。即座に反応され、大盾でふせがれようとも……何度も何度も拾っては投げ付けまくる。


 無策かつ我武者羅ガムシャラにやっているように見えるが……彼は完全に思考を放棄した訳じゃあない。巨大なダムでも小さな穴を原因に、大きく決壊けっかいしては崩壊ほうかいするように……目の前の鎧達磨よろいだるまの”スキ”を見つけるべく、試行錯誤しているのだ……!


 そうして続ける事、数十分……その証拠に、幾度も彼へ往復するように強襲してきた丸盾が、直線上に洞窟の壁から彼の頭目掛けて解き放たれた時……素早くしゃがんでかわしては、奴の左腕に戻る僅かな隙を突き、頭目掛けて石を全力投球するッ!

 


「グッ!? 小癪こしゃくな……!」


「よし、今だッ!」


 〜 キンッ! シュボッ! ズバンッ! 〜


 ――数十回と繰り返した後に、ようやく額近くに命中した石が団長の顔を大きくそむかせる。そこにすかさず、ボスはフリピスを素早く引き抜いては、祈るように引き金を引いたのだったッ!


 〜 ……チュインッ! 〜


「クソッタレェッ! ストラックアウトどころか、野球すらまともにやった事のねェオレが、ようやく当てた一球だぞッ!? もっと怯めよッ!?」



 ――”投石”は古代から続く立派な”攻撃手段の一つ”であれど……人の手で握れる石などでは、ビデオゲームでもそうだが……”大将首”などてる物じゃあないぞ? ボス君? (まぁ、特殊な水森◯水にヤラレチャタりする、大将首カ◯レ・デ◯スもいたりするが……)



「クソがッ! 農民風情でもやれる浅知恵程度で、オレを倒せると思うなァァァッ!」



 ――銃弾を弾いた大盾から顔を出しながら叫ぶ団長。しかも、当てられた額部分の出血はほぼ・・と言って良い程になかった……! ……言うのもしゃくだが、戦争と言う修羅場を幾度も超えてきた肉体故か……はたまた経験Lv,の高さの故なのか……?


 だがボスは、その効果の薄さも……お返しとばかりの飛来する丸盾が迫っても……諦める気はなかった。【……なら、次の策だ!】――腹の底からグラグラと脇立つ苛立ちを、その心の一喝で押し込めた彼は背後に並び立つ掘立て小屋目掛け、走り出す。


 突撃した掘立て小屋内で、素早くガサ入れ家宅捜索を済ませると……恐らく盗賊団員の”私物”か”支給品”であろう、ナイフを、棍棒クラブを、ショートソードを、手斧ハンドアクスを、ありとあらゆる”武器の類”を、次々と押収しては投げ付けた!


 初めは彼の行動に理解出来ず、奴はポカンとしていた。だが数秒も経たない内に理解した瞬間、爆発するかのように憤慨ふんがいした。そうして怒りの末に目が曇ったか……仲間の私物を漁る不届き者目掛け、丸盾を次々とブン投げては仲間の家掘建て小屋なんてお構いナシに破壊し、その瓦礫がれきが幾度も当たろうと……彼は辞めずに押収品を投げ続けたのだ……ッ!



「クッソッ! 壊れろ! 壊れろよッ! このッ!」


「クッ、鬱陶ウッとうしいぞッ! 貴様ァァッ! この大盾も、私の丸盾同様、王国で僅かに産出された”魔金剛”を含んだ盾だッ! 千人近い攻撃を防いできても壊れなかったこの盾が、貴様の幼稚ようちな武器投げ程度で壊れるかァァァァッ!」


「ハァ、ハァ、ハァ……あっ、アダマンタイトォォォッ!? フッざけんなよッ!? 何でそんな”伝説級の金属”を使った防具を、ポンポンクソ盗賊なんかが持ってんだよッ!?」



 ――再びの解説で恐縮だが、ボスが言う「アダマンタイト」を軽く説明しておこう……。まず「アダマント固い」いう英語がある。これは”征服されない”を意味するギリシア語の”アダマス”から派生した言葉になる。そしてその「アダマントadamant」に「ite」を付けて鉱物名っぽくしたのが「アダマンタイト」と言う言葉になる。


 日本では”金剛”と訳されるこの「アダマント」。その言語の元となった鉱石は”ダイアモンド”である。最強の硬度を持つ(ただし、摩擦やひっかきに限る)と名高いこの鉱石がモチーフとなっている「アダマンタイト」の特徴は、何と言っても”硬い”の一言に尽きる。


 その硬さは産出される異世界によっては異なるが、大抵は前述した”オリハルコン”を遥かに凌ぐ硬さ・・・・・・・を持つ鉱物なのである。ただし、その他の特性はなかったりする事が多いが……”伝説級の脳筋重く硬く扱いづらい装備”を好む者達にとっては、生唾ゴクリものな”伝説の金属”なのである。



「貴様ァァァッ! 二度も同じ手で、我が誇りを侮辱する気かァァァッ!?」


 〜 グッ、ブゥオォォンッ! 〜


「クソッ!」


 〜 ヒュルルル……ゴロンッ! ……ルルルル……バコォォンッ! 〜



 ――”アッパーカット”の要領でブン投げられた、縦方向に回転する丸盾を”飛び込み回避ローリング”して回避するボス。その後方付近で、一件の掘立て小屋が豪快な破壊音を立てた直後に、洞窟の壁に減り込んだ音を耳にし、ほんのチョッピリ身震いをするが……?



「ハァハァ……ハッ! 知らなかったり、学ぼうとも思わない自分がいけないとか、微塵にも思わねぇのか……よッ!」


 〜 フォンッ! キィィンッ! 〜



 ――丸盾を投げた直後の姿勢から、ほぼ変わっていなかった所を見たボスは、僅かに見える首元を狙って押収したナイフをとうテキするッ! だがしかし、それよりも早く団長の体は大盾の後ろに引き篭もっては、ナイフを弾き飛ばしてしまう……。



「ハァハァ……クソ、やっぱダメか……」


「貴様ァァァァァッ!」


「後、その盾投げ……拍手する程の威力だろうけど、同時にあくびが出る程に”単調”なモンだなぁ?」


「アァァァッ!?」


「だって、さっきから投げ続けてオレに一回でも当てられたぁ? これが試合ゲームだったら、躱し続けたオレにもう”三十点”ぐらい点数が入ってんぞ?」


「……ヌヌヌヌヌヌ……!」


「因みに、テメェは勿論……絶賛、れい点中な?」


 ――両膝に手を突いて中腰な状態から、団長に指を差しつつ小馬鹿な口調で語るボス。


「クソガァァァッ!」



 ――だが、馬鹿にされて”怒り”を覚えない人間はほぼ存在しないだろう……。団長もそうだ。再び左手が光ったかと思えば、壁に減り込んだ盾が共鳴しては飛び出してボスの頭に……!


 〜 ヒュルルル……ッ! 〜


「ッ!?」



 ――いや、低いッ!? 軽く後ろを振り向いたボスが見たのは、地面スレスレを飛来してくる丸盾であった……! だが奇妙な事に、洞窟の壁に刺さったのは今飛来する彼の”足元に近い位置”よりも、頭に近い高い位置・・・・・・・・の筈なのだ……。


 つまり団長には、丸盾を戻すだけじゃあなく……ある程度”操作”する事が出来る能力があると言う事に……!?



「クッ、オラァッ!」


 〜 ……ヒュルルル……グッ、グォォンッ! 〜


 ――おおっとッ!? しかしながらここでボス、見事な”バック宙後方宙返り”でスネを強打しようとした丸盾を回避するッ!


 〜 ヒュルルル……ゴォォンッ! ……スタッ! ……パシィィッ! 〜


「クソがァァァ……! 随分と身軽だな……?」


 ――ボスがバック宙から着地するのとほぼ同時に、大盾に弾かれ真上に飛んだ丸盾を……左腕を突き出す事で、丸盾を保持する持ち手に器用にも滑り込ませる団長。


「ハァハァ……喋る言葉まで、ゴブリン並みに単調になったかと思ったけど……今のは少しヒヤッとしたよ……」


「……クソッ」


「ハァハァ……以前は出来なかった動きだけど……まぁ、テメェんトコのクズ三十人も、無駄な経験値にはならなかったってトコかな……?」



 ――おおっ、と言う事は……三十人の盗賊を始末した事で、少なからずボスは「レベルアップ」を果たしていた事なのだろう! 成る程。どれ程かは知らないが……それなら、あの副団長の執拗しつような蹴りに耐えられた事や、今のバック宙を成功させた運動神経も納得な物だ。



「ウナナナナナナナ……ッ!」


「ハァ……けど、意外とチョロ過ぎだな。絶望的な戦力差だけど……精神面では一人勝ちって感じかなぁ? その証拠に、また怒りに囚われて言語がバグってるし……」


 〜 グッ、ブゥオォォンッ! 〜


「ウオっとッ!」


 〜 ……ゴロンッ! ……バコォォンッ! 〜


 ――再び縦方向に回る丸盾を投げられたボスは、”飛び込み回避ローリング”で回避する。


「その軽薄な態度を、いい加減やめろォォォォォッ!」


「……やめて欲しい? なら……今すぐ、武装解除した上で、素っ裸になって土下座しろ。そしたら、今すぐにでもお口チャックするけどォ?」


 ――う〜ん、ドS! オルセットの件に加え、絶望的な戦力差でも負けたくない故か……ボスの”口の悪さ”は絶好調であるッ!


「クソォォォ……! 当たらないからと舐めくさりやがって……! ……なら、こんな動きならどうだ?」


 〜 メキメキメキメキ……バコォォンッ! 〜


「ッ!?」



 ――その音を聞いたボスは、迷わず洞窟の天井を見上げる! それもその筈、飛び込み回避ローリングした先の傍で地面に減り込んでいた・・・・・・・・・・筈の丸盾が、唐突に洞窟の天井高くに一人でに打ち上がった・・・・・・・・・・のだ!? 団長が顔付近に掲げる左拳が、輝いている事から丸盾を操作している事は予想に容易いが……?



 〜 ヒュルルル……グンッ! 〜


「ッ! ウオァァッ!?」


 〜 ……ゴロンッ! ……ドコォォンッ! 〜



 ――団長が勢い良く下げた左拳に連動リンクするかのように、丸盾がボス目掛け”急降下攻撃”を仕掛けるッ!? 洞窟の岩の地面を僅かながらも隆起りゅうきさせる一撃を前に、流石のボスも驚きの表情を隠しきれなかった……。



「は、ハッ! だから何だよ? ただ横から縦に、当たらない攻撃を変えたとこで……」


「今更だが……よくもオレの部下達の家を勝手に荒らしてくれたな……?」


「……ハッ?」


「オレには聞こえるんだよ。無念な最期さいごげたであろうアイツらが……貴様を殺したくて仕方がないと……!」


「……いっ、今更何を……?」


 〜 ……スパッ! 〜


ゥッ!?」


 〜 ……カランッ! 〜



 ――再びボスは訳が分からなかった……。何故か急に腕に切り傷が出来た事、何処からともなく押収して投げ付けた筈のナイフが、足元付近に転がっていた事に……!



「……そのまま死にたければ、そのナイフが落ちてきた事・・・・・・についてでも、考えてろ……」


「……落ちてきた……ッ!?」



 ――その一言でボスは理解する! そして、素早く上を見上げて戦慄せんりつしてしまうのであったッ! いつの間に”洞窟内天気予報”が行われていたのか……”押収された武器の雨”が、彼目掛けて降り注ぐのを目にして……ッ!



「嘘だろォォォッ!?」



 ――いや、私はおろかボスでさえもこの目の前で起きている現象は、公園のシーソーなどで使われている”梃子テコの原理”によるモノだと、容易に予想はついていた。その原因についても……地面に減り込んだ丸盾によって、隆起した洞窟の地面が前述の例えに出た”シーソー”のように、彼が押収した武器を打ち上げた事・・・・・・も同様だ……。


 だが、今も必死に走って”武器の雨”から逃げる彼には恐縮だが……ここまで打ち上がるのは……雨となって襲いかかる程になるとは……正に”ファンタジー補正力”と言うか……と、流石に苦言はしたくなるものだ……。



「戦場では一切試せず思いつかなかった物だが……丁度良い。偶然とは言え、巫山戯た貴様をナブるには丁度良い天気であろう?」


「最悪の天気だよッ! クソッタレェェッ!」



 ――どんな困難も乗り越え・・・・・・・・・・という意味で、「雨が降ろうが槍が降ろうが」……という言葉があるが、流石にボスもそれを現実として……しかも様々な武器で、その身に体験するとは思いもしなかっただろう……。


 今も尚、彼は全力疾走で回避はしているが……降り注ぐ武器の雨によって”切創”は勿論、”打撲”や”刺傷ししょう”などの無傷では済まない怪我を、ジョジョに蓄積していた。


 しかし、痛みで若干策を練るための思考力が鈍らされようとも……彼は自身よりも笑えず冴えない冗談ジョークを言っては、勝ち誇ったかのように醜悪しゅうあくな笑みを投げ掛ける団長の顔に、ますますムカッ腹を立てずにはいられなかった……ッ!



「フンッ、そう喜ぶな。ホラ、まだしばらく降るそうだぞ……?」


 〜 クンッ! メキメキメキメキ……バコォォンッ! 〜


 「ッ!? あぁクソッ!」



 ――最後の雨を避け切り、両膝に手を付いて息を切らしていたボスであったが……あの丸盾の音を再び聞いては悪態を吐かずにはいられなかった。団長の左拳の動きに連動して動く丸盾を躱せても、反撃させまいと副次的ながらも降り注ぐ”武器の雨”……!


 【クソッタレェェ! 何でオレの異世界特典は、こんなオンボロフリントロック拳銃・ピストルからしか使えねェんだよッ!?】――決して無視出来ない小さな負傷を再び蓄積しながらも、武器の雨に加えて、跳ね続けながら自身を・・・・・・・・・・追尾する丸盾・・・・・・からも必死に逃げるボスは、自身の転生(?)特典を呪わずにはいられなかった。


 考えた策は無謀と徒労という結果に至り、更には自身の策が”ホッピングし続ける殺人丸盾”によって、”武器の雨”として半恒久はんこうきゅう的に利用されている・・・・・・・この状況に【これ、ク◯ゲーだろッ!?】――と、彼の個人的な経験と似た状況を前に……ブッチャケ、出来たら本気で泣きたい気分となっていた……。



 〜 ……ドコォォンッ! バラバラバラバラ……! クンッ! メキメキメキメキ……バコォォンッ! 〜


「ホラホラどうしたッ!? 俺の部下達よりも、走るのが遅くなってるぞォォォォッ!?」


 ――素肌があらわになっている両腕を中心に、ジョジョに血塗れ、傷塗れになって行くボスを見ながら……醜悪な表情で野次を飛ばす団長。


「ハァハァハァ……! クソォッ! 何かしらで止血してェ……!」



 ……えっ? そんな周りクドくて、逃げ回るような事をしてないで……大盾をブッ壊すなら、遅くても”フリピス”をサッサと撃ち込みまくればいいじゃあないか……だって? ……なら、先に結論を言っておこう。ボスにとって、弾切れは死を意味する・・・・・・・・・・のだ。


 彼は「ガンクリガンズクリエイト」や「バレクリバレッドクリエイト」と言ったスキルに、魔力MPを使用する事で、武器や弾薬を供給サプライする事が出来る。ただ、ここで勘違いしないで欲しいのは……入手は出来ても無限で・・・・・・・・・・はない・・・事だ。「無限弾」なんて”チー特典”を、ボスは持っていないのだ。


 現存する魔力の使い道は「装填済みのフリピス」と、彼は心に決めていた。

 だからこそ、団長に散々馬鹿にされながらも……残り”四発”となった予備弾をブチ込める活路を見出すために……! この苦肉の策を、摩耗まもうし続ける肉体を、心臓が破裂寸前なスタミナを……! この絶望的に近い戦いから”生きて帰る”ために……内心は泣き喚き全力逃亡したくも、命を削る覚悟で酷使こくししているのだ……ッ!


 全ては、オルセットにチャンと面向かって直接……【仲間になってくれ】――と、彼が言いたいがために……ッ!



 〜 ザッザッザッザッザッ……ガッ! 〜


「ッ!? しまっ……」



 ……だが、人生とは時としてとてつもなく残酷な現実を見せつける物だ……。一つ例えるならば、『”試験終了チャイム”直前まで必死こいた気分で問題に喰らい付いてきた受験生でも、最後には無念ながらも志望校に落ちてしまう時がある』ように……時として”人の苦労”と言うのは、徒花あだばなに終わる事があるのだ……。



 〜 ……ドザァァァァァァッ! 〜



 ――もう、ストーカーと言って良い程にしつこく降る”武器の雨”と、”魔力操作で動く殺人丸盾”によってばかりに気を取られていた彼は……足をすくわれてしまったのだ。……水溜り押収した武器によって……。



ゥゥゥゥ……! クッソッ! オレは”ミ◯タ予備弾”四”発”じゃあねェってのにッ!」


 ――おっと、チョッピリ実況が漏れていたかな?


 〜 ……ズンッズンッズンッズンッズンッ……! 〜


「万策尽きたかァァァッ!?」


「ッ!? あぁ、クソッ! マジかよッ!?」



 ――あぁ、だが……私も茶目っ気を見せている暇は、今も絶体絶命な危機にさらされているボスのようにないようだ……。何せ、”要塞の壁”と形容しても過言じゃないだろう大質量の大盾を構えたまま……転んだ彼目掛け、団長がき殺さんばかりの勢いで”突進シールドチャージ”を仕掛けて来ているのだから……!


 しかし、つもりに積った怪我と疲労を放置したツケか、今の彼には即座に”飛び込み回避ローリング”をする瞬発力はなかった……! だが、彼にはタダで殺される気は更々なかった。それを指し示すように素早くを周囲を見渡しては……?



「……ッ! クッソ、イチかバチか……!」


 ――ボスの傍に転がっていた、鉄製らしい戦棍メイスを……!?


 〜 ……ズンッズンッズンッズンッズンッ……! 〜


「ウォラアァァァァァァァァァァッ!」


 ――雄叫び一発ッ! 暴走機関車の如く迫る大盾に、一矢むくいるかのように叩き付けるのであったッ!


 〜 ……ゴウィィィィィィィィンッ……! 〜


「……ゥゥゥゥゥ〜ッ! ッ――ッテェェェェェェッ!?」



 ――人生で初めと言って良い程の、強烈な手の痺れを経験しながら思わず叫ぶボス。恐縮な表現だが……まるで除夜じょやかねの如き響きを出しつつも、一切の傷が入っていないのは……微量な合金らしいとは言え、流石”伝説の金属アダマンタイト”と言ったところか……。


 だが、彼の賭けは一応……成功したようだ。大振りかつ、袈裟斬りのように繰り出した渾身の一振りは……奇跡的にも団長の突撃を押し留め……!



「……フンッ、腰が入ってないなぁ……? 武器の扱いに大体慣れたとほざいていたが……どうやら、とんだ”大ボラ吹き”だったようだな……?」



 ――ち、違った! 大盾の上部から見下すように目を覗かす団長がしているコレは……”舐めプ”だッ! ボスの一撃は、奴の突進を毛頭無い程に止めてなどいなかった・・・・・・・・・・のだ……ッ!



「クソ……ッ! 急に舐め腐りやがってッ!」


「……散々舐め腐ってきた貴様が、今更言うなぁぁぁッ!」


 〜 バァィィィンッ! 〜


「ウオァァァァァァッ!?」


 〜 ドコッ! バコッ! ゴロゴロゴロゴロ……ッ! 〜



 ――怒りからか更に押し込もうと、戦棍メイスの柄を持つボスの両手に力が入るのもむなしく……至近距離で放たれた団長の”大盾打撃シールド・バッシュ”により、跳ねるゴムボールの如く、彼は無様ブザマにも洞窟の壁際まで弾き飛ばされてしまうのであった……!


 【うぅ……クソッ! 身体中が……イテェ……!】――おのれの”ステータス”を見ずとも分かる、ボスの本能が”体の限界”を警告アラートする! うつ伏せからなんとか体を起こしつつ……”ポーション回復薬”が入ったズボンのポケットに手を伸ばそうとするが……。



 〜 ……ズンッズンッズンッズンッズンッ……! 〜


「そのまま、壁のシミとなれェェェェェッ!」



 ――なんてこった! ほぼ間髪入れず、再び盾を構えてはボス目掛けて”突撃シールドチャージ”してくるとはッ! このままでは彼は”サンドイッチのハム”になる事まっしぐらだ!



「……クッ……ソッ……! 動け……動…け……ェェェェッ!」



 ――弱虫な胸中は未だボスの中にくすぶるが、それでも彼は諦めなかった! 痛む体に鞭打っては、生まれたての小鹿のようだろうと何とか立ち上がるのであったッ! ヨシッ! 後は何とか左右に避ければ……!



「ウオォォォォラァァァァァァァァッ!」


 〜 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……! 〜


 ――なっ、何をトチ狂ってんだボスはァァァァァァァァァッ!?


 〜 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ダンッ! ……ゴィィィンッ! 〜


ゥゥゥッ!」


「馬鹿めッ! 戦棍メイスでさえ通じないのに、貴様の”飛び蹴り”程度でこのオレの誇りが砕けるかァァァッ!」


 〜 ダッ、ガッ、ガシィッ! 〜


「ッ!?」


「フッ、これで良い……!」


「馬鹿か!? オレの大盾にしがみついて勝ったつもりかッ!?」


 ――ホント、何考えてるんだボスはァァァッ!? あぁぁ! ホラ、ブンブン振りほどかれようとされてるしッ!


「ハァハァハァハァ……ッ! オレの誇りから、離れろクソ野郎ッ!」


「ハァ、ハァ、ハァ……やだね。離して…欲しかったら……ハァ、ハァ……さっき言ったように……”壁のシミ”に…してみたらどうだ……負け犬?」


「ッ!? まっ、負け犬は……貴様の事だろ! クソがァァァァァッ!」


 ――あぁぁもうッ! 実況しなきゃいけないのに、見てらんないッ!


 〜 ……ズンッズンッズンッズンッズンッ……! 〜


「ブッつぶれよぉォォォッ!」


 〜 ……ズンッズンッズンッズンッズンッ……ダッ! 〜


「ッ!?」



 ――ッ!? かっ、隠した指の隙間から覗いていたのだが……けっ、蹴った? 洞窟の壁に激突しようとする直前……ボスが大盾の上部にしがみついたままかと思えば、大盾を蹴って……!



「とっ、跳ん……」


 〜 ……ズンッズンッズンッ、ドゴォォォォンッ! 〜


「ッ!? しっ、しまったッ!」



 ――うぉぉぉッ!? ”壁のシミ”を作るべく全力疾走していた団長が、大盾ごと壁にメリ込んだぞォォッ!? しかもだ! 上記の台詞セリフを言ってから、奴は必死に大盾を引き抜こうとしているが……一向に抜ける様子がないッ!


 それに、その壁と大盾の間には……”壁のシミ”も”サンドイッチのハム”でさえも、出来上がってなぞいなかったッ!



 〜 ……ダッ! ……クルンッ、ジャキッ! 〜



 ――そして肝心なるボスは、まるで”赤い帽子の配管工マ◯オ”か……あるいは、”銀河最強のバウンティハンサ◯ス・ア◯ンター”かのように……! 盾から壁へ、壁から空中ソラへと! 「二段壁キック」で、っくき団長を跳び越していたのだッ!


 そしてそして、”壁キック”に加え……空中で逆さになるように姿勢を変えたのも、”レベルアップ”の賜物たまものか……! その状態で伸びるボスの右腕には……!?



「喰らえェェッ!」


 〜 キンッ! シュボッ! ズバンッ! 〜


 ――勿論、引き金を引かれたフリピスであるッ! そして、その銃口から、無防備にガラ空きとなった奴の後頭部目掛け、乱回転する六十口径約15.24mmの鉛玉がスッ飛んで行く……ッ!






 〜 ……チュインッ! 〜


「……嘘だろッ!?」


 〜 ……ゴロンッ、ズザァァァッ! 〜



 ――【ぱっ、パルクールをチョビッとカジっといたから良かったけど……クソッ! 何で見えてねェのに防げたんだよッ!?】――おしい。実に惜しいッ! 確実に二メートル近くを”二段壁キック”よって跳び上がりつつ、落下する直前で団長の後頭部を撃ったボスだったのだが……。


 まさかまさかで、撃たれる直前に奴は素早く左腕を後頭部に回し、装着していた”丸盾”で防ぎ切ったのだッ! 驚愕の表情を浮かべながらも、重力には逆らえず頭から岩の地面へと落下する彼……だが、この前述のようにパルクールの”ロール受け身”を繰り出し、何とか両足の骨折などを免れていた……!



 〜 グンッ! グンッ! グウゥゥゥンッ! 〜


「クソォォォッ! 抜けろッ! 抜けろォォォォォッ!」


「ハァハァハァ……そうだ! ヘコたれてねェで回復……ッ!」



 ――何度踏ん張っても、未だ抜ける様子のない大盾を前に必死に奮闘する団長。一方のボスは、先程の一連の行動が、”起死回生の策”であったのか……ショボンと落ち込んでいたが、すぐに襲い掛かった強烈な疲労感と蓄積された痛みから、回復する事を思い出し、急いでズボンのポケットから回復薬ポーションを引っ張り出しては飲み干そうとするのだが……?



「ング、ング、ング……ッ!?」



 ――半分程飲み干したところでふと、ボスが団長に目を向けた時……彼は気づいてしまったッ! 戦争の時に破損したかどうかは知らないが……彼の着込む”金属鎧フルプレートアーマー”の背中が、パックリと大きく開いており、それでも着たいが為か……”交差するような形×マーク状”にベルトで補強されるのを……ッ!


 【あそこなら、防ぎきれないハズッ!】――そう思ったボスは、せそうな勢いで残りの回復薬ポーションを飲み干し、木瓶を投げ捨てる。そして、回復薬を取り出したズボンのポケットとは別のポケットから、”早合”を取り出すと、急いで持っていたフリピスのリロードを始めるのであった……ッ!



 〜 グンッ! グンッ! グウゥゥゥンッ! 〜


「クソォォォッ! 何で……抜けな…いィィィィッ!」


「良し! リロードOK! ……もう一丁行けるか……?」



 ――未だ団長が大盾を抜けない様子を見て”まだイケる!”……とでも思ったのか……。再びポケットから早合と共に、もう一丁のフリピスを取り出しては、リロードを始めるボス。


 だが、恐縮ながら言わせてもらうと……一発でもイイから、サッサと撃った方が良いと思うぞ!? 急所である頭や心臓などを狙えない以上、少しでも手数を増やそうと思うのは分からなくもないが……!?



「フンッ! フンヌゥゥゥゥ……ッ! チッ、コソコソするなッ!」


 〜 グッ、ブゥオォォンッ! 〜


「後は 銃口に……ッ!? ヤベェッ!」


 〜 ヒュルルル……ゴロンッ! ……ルルルル……バコォォンッ! 〜


「イテテ……ッ!? あぁクソッ! 火薬がッ!」



 ――ほら言わんこっちゃないッ! 大盾を抜くのに必死だった団長だが、ふと振り返ってボスを見た際に彼が”何か”をしていたのは明白だった。何度も彼の策にハメられていた奴は、そのまま見逃す事を面白く思わないのは当然だろう……。そこで、振り返りつつ”縦回転する丸盾”をブン投げては、彼の妨害を行ったのだ。


 結果は見事に成功。彼に対しての直接的なダメージは、”飛び込み回避ローリング”された事により与えられなかったが……彼は銃口に込める”発射薬黒色火薬”をこぼしてしまったようで、実質的に残弾はリロード済みの銃を含めなければ、”残り二発”となってしまったのである……!



 〜 グンッ! グンッ! グウゥゥゥンッ! ミシミシミシ……ドコォォンッ!〜


「あぁ……マジかよッ!?」



 ――更に運の悪い事に……ボスが撒き散った発射薬を集めるか決断する暇もなく、洞窟の壁に深く減り込んでいた大盾を、団長がついに引っこ抜いてしまったのである!



「ハァ、ハァ、ハァ……! クソがァァァ……! 何処までシブといんだ、貴様はァァァッ!」



 ――肩で息をしつつも、ボスに憎悪の眼差しを向けながら喋る団長。一方のボスは、リロード済みのフリピスを素早く片手で構えては、奴の頭を再び狙う。だが、もう慣れ切っているのか……奴がその行為を視認すると、素早く大盾に身を隠すしてしまうのであった。



 〜 キュポンッ! グビッ、グビッ、グビッ…… 〜


「ッ? アイツもポーションを? 傷一つ付いてないのに……?」



 ――大盾の後ろに隠れる団長の行動を推察しつつも、抜かりなくリロードを行いながら呟くボス。一応の確認だが、これでボスが使える残弾は……装填済みが”二発”、完全な早合が”一発”となっている。これを使い切れば残すのは、”ガンクリ”のスキルを用いた「装填済みのフリピス四丁」のみとなる……!



「プハァ! ハァ、ハァ、ハァ……」


「ところでさっきから気になってたんだが……」


 ――大盾の背後から、木瓶が投げ捨てられるのを見つつボスが言う。


「原因なオレが言うのも何だけど……ホントにオレをブッ殺しちゃていいの? あのお笑いコンビとかには、オレを”捕まえる”とか言ってたよな……?」


「……答える必要が何処にある」


「おぉ〜怖い声。けど、お互いポーションなんて飲んで、試合途中のインターバル休憩時間って感じになってるじゃん? なら、先に終わっちゃてたオレは”暇潰し”って事で、地味に聞きたいワケよ?」


「……何処までも巫山戯やがって……!」


「当然だよ。こっちはオルセットをボコボコにされて、とことんムカッ腹が立ってるからなッ! 戦車とか無理なら、”M60ライトマシンガン”をラ◯ボー張りにブッ放して、テメェをハチの巣にしてやりたぐらいだよッ!」


 ――【だが出せねェけどなッ!】――ノリなのか自虐なのか、何故かそう叫ぶボス。


「……全く、とことん巫山戯た奴だ……。こんな、こんな巫山戯たクソ野郎に……オレの部下達は……!」


「好きなだけ垂れ流してろ。いくら負け惜しみを言っても、テメェのクソ供は帰って来ねェよ」


「ッ! ……良いだろう。部下の事を口にするのはもうやめだ……」


「おっ? いさぎよいな? じゃあ、何でオレを捕らえずにブッ殺そうとするのか、暇潰しに……」


 〜 クンッ! メキメキメキメキ……バコォォンッ! 〜


「ウェッ!?」


 〜 ヒュルルル……ゴロンッ! ……ルルルル……パシィィッ! 〜



 ――地面に埋まっていた丸盾をボス目掛けて飛翔させ、自身の左腕へと呼び戻す団長。勿論、ボスは引き抜かれた際の音で察知してはギリギリ”飛び込み回避ローリング”で回避していた。



「オレに”マナポーション”を使わせたのは、お前が久しぶりだ……」


 ――そう言っては、大盾を持つ右腕を天高くかかげる団長。


「もうお喋りはお終いだ……。ここからは……貴様を全力で……潰すッ!」


「なっ、何だ? 大盾タワーシールドが光って……!?」


 〜 ブウォォォンッ! ドグゥオォォォォォォンッ! 〜


 ――超重量を持つであろう大盾を、団長が地面に叩き付けるッ!


槌盾裂破シールド・クエイクッ!」


 〜 ブウゥゥゥンッ! カッ! ……ゴ…ゴゴ…ゴゴゴ…ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ! 〜



 ――大盾に収束されていた”魔力マナ”と思われる青白い光が、刺さった大盾からまるで”拡散する稲妻いなづま”のように一気に洞窟の床にホトバシるッ!


 すると、ジョジョにであったが……調理場にあった木瓶が一人でに転がり……団長によって破壊された掘立て小屋が次々に倒壊とうかいし始め……最後にはボスが両脚を踏ん張っても立ってられない程の地震・・が、巻き起こるのであったッ!



「なっ、何で地震がッ!?」



 ――【やっ、ヤベェ! このままだと……!】――両脚の踏ん張りも虚しく、地面に手を突きながら思っていたが、もう遅かった……! 数秒後、地震が収まりかけた時……顔を上げたボスの眼前には既に”突撃シールドチャージ”によって距離を詰めていた団長が……!



「フンッ!」


 〜 ゴッ、バァィィィンッ! 〜


「ブベァァァァァァッ!?」


 〜 ドコッ! バコッ! ゴロゴロゴロゴロ……ッ! 〜



 ――顔面が押し潰されるような強烈な痛みを感じながら……ボスは団長が”突撃シールドチャージ”によって助走を付けた”大盾打撃シールド・バッシュ”により、再び洞窟の壁際へと弾き飛ばされてしまうのであった……ッ!



「ウゥ……クソ……ッ! 回復したばっかだってのに……ッ!」



 ――だが、どうやら弾き飛ばされる瞬間、両腕をクロスして防御態勢を取った事で……何とか実際に顔が潰される事をボスはまぬがれていた。だが、弾む丸太のように転がされた以上……その他は部位は、回復薬ポーションを飲む前に逆戻りな惨状となっていたのだ……!



 〜 ズンッズンッズンッズンッズンッ……ドゴッ! 〜


「ブホォォォッ!?」



 ――ボスが立ち上がったその時……! 彼が意識を周囲に向けるよりも早く、再び団長が仕掛けた”突撃シールドチャージ”によって、ボスは洞窟の岩壁に叩きつけられてしまう!



「クッ……ソッ……! ゾンビでもねェのに、死体倒した相手に蹴り更に攻撃する事して……楽しいかよ!?」


 〜 ガッ、グィィィ……! 〜


「ガッ!? クソッ! 放せェェェ……!」



 ――うつ伏せに倒れていたボスの胸元を左手で掴み上げる団長。そうして自身の目線まで持ち上げると……憎悪の込もった目付きで睨め付けた後、【フンッ!】――と一声上げたかと思えば、再び洞窟の壁へとボスを叩き付け、右手に持っていた大盾でガッチリと壁ドン的に押さえ付けてしまうのであった……ッ!



「……ハッ、”ボスサンドイッチ”の出来上がりってか? 言っとくが、オレを食ったら下痢ゲリばらかかえるハメになるぞ?」


 ――諦めたくない意思なのか……口元は引きつりつつも、不敵な笑みを浮かべながら軽口を叩くボス。


「……その鬱陶うっとうしい口を、二度と開けないようにしてやる……!」


「おおっ、怖い。でもオレがヤラレチャッても、夜な夜なお前の枕元に化けて出て……」


 〜 ガブッ、ギュゥゥゥゥンッ! ガブッ、ギュゥゥゥゥゥゥンッ! 〜


「おっ、おい? 何盾に噛み付いては回して……ッ!?」


 〜 ガブッ、ギュゥゥゥウィィィィィィィンッ! 〜


 ――ボスは信じたくなかった……! 青ざめるしかなかった……! 目の前で現れた、ファンタジーには似つ・・・・・・・・・・かわしくない技・・・・・・・を前にして……!


「……嘘だろ、チェーンソーッ!?」



 ――動いていた! 高速で動いていた! 物理的に殴るか、投擲するしか攻撃手段がない筈の丸盾に……突如として出現した、サメの歯のような形の細かい、微小な、しかも鋭い”魔法で出来たやいば”が、丸盾のフチを高速で滑るように動いていたのだッ!


 更に、仁王におうの如き憤怒ふんぬの表情でボスをめ付ける団長とは裏腹に、魔法の刃の一個一個が発する”微小な青白い光”が、丸盾の縁を高速回転する事で、ほとんど光の刺さない洞窟内でも、神々こうごうしさすら感じる輝きを放っていたのだッ!


 ……因みにだが、ボスは”チェーンソー”と言ってたが……丸盾のフチから出て回転している形状な以上、”バズソー丸鋸”……さながら”丸盾鋸シールド・バズソー”と言った所であろう……。



「はっ、放せ! 放せよッ!」


 ――無言のまま、ゆっっっくりと……ボスの首目掛けて”丸盾鋸シールド・バズソー”を迫らせる団長。


「クソッタレッ! 放しやがれよッ!」



 ――正に絶体絶命……ッ! だが、ボスは諦め切った訳じゃあなかった!


 【そうだ! こんな至近距離だ! 俯いてコッチをまともに見ていない以上、今の内にフリピスを頭にブチ込めれば……ッ!】――打開策を思いついた彼は、必死にズボンの後ろポケット・・・・・・へと手を伸ばそうとしたッ!


 ……だが、勝った! ……と思った◯者の諸君。今の状況、彼は”ボスサンドイッチ”になっている事を、失念してはないだろうな……?



「と……取れねェ? 挟まれて……取れねェ!?」



 ――具沢山のサンドイッチと言ってもその形状は、完全に”三角柱”や”四角柱”などになる訳じゃあない。様々な具材が挟まる・・・以上、どうしても”隙間”は出来てしまう物だ。よって、”サンドイッチのハム”となっているボスの”ボスサンドイッチ”も、ある程度は腕が自由に・・・・・・・・・・動く・・


 だが、ハムボスチーズ岩壁にガッチリ挟まれてしまった”ピクルスフリピス”は論外だ。”脚”や”ズボン横”のポケットに仕舞っていれば……と思い悔やんでももう遅い。ボスが出来た最後の抵抗と言えば……?



 〜 ギュゥゥゥウィィィィィィィンッ! 〜


「……すまねェ……オルセット……! 何とか逃げてくれ……!」



 ――オルセットに再開出来ない事に対する懺悔ざんげいながら……上を向いては目をつむり、迫る”丸盾鋸シールド・バズソー”の痛みに耐えるべく……歯を食いしばるしかなかったのだ……!





 〜 ギュゥゥゥウィィィィィィィ……ドッゲシャァァァァァァァァッ! 〜


「ボォォォォスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!」


「……ッ!? おっ、オルセット……ッ!?」



 ――こっ、これは!? 何と言う……ファインプレーッ! 何処からともなく、彗星すいせいの如き速度で現れたオルセットが、ボスに夢中になっていた団長の右側頭部に……! ”ドロップキック”をブチ込み、大きく滑るように転倒させたのであったッ!



 〜 ドンガラガッシャァァァァンッ! ……ガシィ! ズザザザァッ、スタッ!〜


「痛ってェェ……ズボン破れてねェよな……?」



 ――団長の身の丈に迫る大盾に”ボスサンドイッチ”されていたボスだが……していた張本人がフッ飛ばされた以上、再び二メートル近い高さから落ちるのは明白だろう。だが、洞窟の壁の突起を落ちる途中で上手く掴み、その後壁を滑り降りる事で何とか上手く着地したようであった。



 〜 ガィィィンッ! ガィィガィィィンッ! ガィィィンッ! 〜


「このッ! このッ! ボスをヨくもッ!」


「クッ、何故だ!? くたばりぞこないの獣が、何故ただのポーションで、こんな鬱陶しいまでに回復しきっているッ!?」


「うわっ、スッゲェ……!」


 ――負傷しているにも関わらず……思わず回復薬を飲む事を忘れてしまう程に、ボスはオルセットの荒れ模様に只々目を見張るしかなかった……!


「あれェ……盾、ヘコんでるよな? 見間違いじゃあないよな!?」



 ――誰に対して言ってるかは理解不能だが、ボスが言っている事は正しかった。

 オルセットのドロップキックを喰らった後……意識が飛ぶ寸前だった団長は、なんとか踏み止まっては素早く体勢を立て直していた。


 しかし、それは無駄に等しく終わる。間髪入れずにオルセットがとんでもない速さの”飛び蹴り”で強襲を仕掛け、それを奴が大盾で防ぐも、続け様に足踏みをするような”連続蹴り”を大盾に叩き込み続けた末に……ついに奴は再び地面に背を付けてしまっていたのだった……!


 そして今も、ボスの事で若干暴走しているオルセットによって、何度も何度も肋骨ろっこつが折れるんじゃあないかと錯覚するような”踏み付け”を喰らい、それを大盾で凌いでいる真っ最中であったのだ……! まぁだが、今はそれを見ていても介入のしようもないと思ったボスは、大人しく注文を発し続ける体に”回復薬ポーション”を流し込むしかなかった……。



 〜 ガィィィンッ! ガィィィンッ! ガィィィンッ! ガィィィンッ! ガィィィンッ! 〜


「このッ! このッ! このッ! このッ! このッ!」


「えェェいッ! 鬱陶しいぞッ! この獣がァァァッ!」


 〜 キュゥゥゥイィィィィィィン……ッ! 〜


 ――団長の怒声と共に、再び大盾が青白く光出す……ッ!


「このッ! このッ! このッ! このッ! このッ!」


「オルセット、離れろッ! なんかヤベェぞッ!?」


波衝ショック……砲盾・シールドッ!」


 〜 キィィィンッ! ブゥオゥォォォォォッ! 〜


「フギャァ……ッ!?」



 ――ボスの忠告は間に合わず、オルセットは吹っ飛ばされていた……! 大盾から突如として放出された、まるで大砲の発射炎マズルフラッシュのような青白い光の奔流ほんりゅうによって……ッ!



「オルセットォォォォォォッ!」


 ――洞窟の天井高くオルセットがフッ飛ばされたのを見ていたボスは、走り出す……! 


「よしッ、ちょ……右……あぁぁちょっと左……オワァァ!?」


 〜 ドサァァァ! 〜


ゥゥ……あっ、おい! 大丈夫か、オルセットッ! おいッ!?」


「……うっ、ウ〜ン……ボスゥ……?」


「ッ! そうだ、オレだ。オルセ……」


「ボスゥッ!」



 ――横抱きお姫様抱っこでキャッチした際に、踏ん張り足らずで尻餅しりもちをついてしまったボスだが……久々に感じるこの”抱きつきタックル”の方が、数倍衝撃が強いと確信してしまうのであった……。


 【ゴメェェンッ! ゴメェェェェンッ! ボスゥゥゥゥゥッ!】――まぁ、それはともかく……この元気でワンワン猫獣人な筈なのにと泣き喚くオルセット見るからに、先程団長が放った技は魔力的なダメージはないと見て良いだろうと、彼は推測していた。



「お、落ち着け! オルセットッ! オレは大丈夫だってッ!」


「ゴメェェンッ! ゴメェェェェンッ! ボスゥゥゥゥゥッ! ボクがァァ、カッテにィィ、行くからァァァァッ!」


「分かった! 分かったからッ! だが泣くのも、俺に謝るのも後にしてくれ! アイツをブッ倒すのが先だ!」



 ――彼女の頭を撫でつつなだめようとした後、撫でた右手で団長の方を指差しながら諭そうとするボス。一方の奴だが、”連続踏みつけ”に相当こたえたのか……大盾を持ったまま、荒い息をしながらグッタリとしていた……。



「ニャグ、ニャグ……ゴメン、ボスゥ……」


「謝んのは、今はイイって。それよりも……」


「……んっ?」


「オルセット……何か、お前……顔……怖くなってないか?」


「ウニャァ?」


「イヤ、だって! 顔の模様とか、真っ赤になっているじゃあないかよッ!?」



 ――オルセットの両肩を掴んでは押し退け、彼女の顔を見つめるボスは驚きを隠せずにはいられなかった……!


 何かのスキルの影響なのか……いつものクリっとした猫目とは異なる、瞳孔が”アーモンド型”にスボまった鋭い眼光……いつもよりチョッピリ鋭く長く伸びた”犬歯けんし”に、最も大きな変化として、彼女の象徴的な「波状のフェイスペイントらしき模様」が、彼が言ったように黒から真紅へと染まり・・・・・・・・・・切っていた・・・・・事だ。


 この状態で模様以外を白粉おしろいで染めれば、宛ら歌舞伎カブキの”隈取クマドリ”に近い感じとなっていたであろう。



「……ウニャァ?」


 ――【まだ正式に仲間だと言ってないのに、勝手に”スキャン”を使って調べるのもなぁ……】――状況把握も大事だと私は思うが……自覚ナシなオルセットを前にそう思うボス。


「あぁ……記憶喪失な案件っぽいから、無理に答えなくていいよ。ところで、話題を変えるけど……体調はどうだ?」


「うんッ! ダイジョウブッ! メッチャマズかったけど、ボスがノませてくれた物? のおかげで、ホラ! この通りッ!」



 ――【オレも口に含んだが……まぁ、ありゃ……青汁を数十倍も濃縮し・・・・・・・・・・ような、ポーションよりもヒドイ味だったよな……】――そう思うボスのかたわら、素早く彼から三回転もする”宙返り”で離れたかと思えば……鋭い”ハイキック”など蹴り技や、新体操選手も顔負けな”ステップ”や”片足バランス”などなど……飛んだり跳ねたりしては、彼に元気さをアピールするオルセット。


 ただ……彼女は気にしてなかったが、ボスが幾らかこぼしてしまった影響か……彼女の体の所々にある”火傷”は、一生治らないような”古傷”の如く、未だ痛々しく体に残ってしまっていたのである……。


 だが、それ以上に……ボスはとんでも無い事に気づいてしまっていたッ!



「おっ、オルセットッ! 前ッ、前ッ! オレのスポジャケスポーツジャケット着るのは良いけど! 前を閉めてくれ・・・・・・・ッ!」


「ウニャァ?」



 ――元気アピールを中止しては、トボけた顔でボスを見つめるオルセット。一方のボスは全力で顔を背けていた……! まぁ……当然だ。何せ、彼が服を預ける以前の彼女は原始じ……失礼、”前衛的なワンショルダーワンピース”を辛うじて着ていた物なのだ。


 そんな彼女が、ボスのスポジャケにそでを通し、彼のピンチに颯爽さっそうせ参じたのだが……。元気アピール中に、どうしても揺れてはスポジャケの隙間から主張してくる”ア〜ンなトコ”や……”宙返り”や”倒立前転”の際などに、どうしてもチラチラと垣間かいま見えてしまう下半身の間の”コ〜ンなトコ”ところが、ボスの目へとジョジョに侵食しんしょくして……!


 ダァァァァァァァァッ! それ以上言うなッ! クソッタレェェェェッ!



「ほっ、ホラァッ! トボけてねェでコッチ来いッ! 分かんねェなら、閉めてやるからッ!」


 ――そう言っては目を逸らしつつもオルセットを呼び寄せるボス。オルセットは何処か不服な表情をしつつも、彼によってスポジャケのファスナーを閉められるのであった……。


「う〜ん、こうすると、おっきいし……ダボダボでちょっと動きニクいなぁ〜」


「押し付けるようで悪いけど……オルセットはもう少し”恥じらい”ってモンを覚えろよッ!」


「……ハジライ?」


「あぁ……もう、またか……」


「……クソォォォォォォォォ……ッ!」


「「ッ!?」」


 ――唐突とした唸り声の方向に、ボスは銃を構え、オルセットは身構える……! 勿論、その唸り声の主はのっそりと立ち上がって行く団長であった……!


「このクソ獣がァァァ……ッ! よくもやってくれたなぁ!?」


ニャンだとッ!?」


 ――【待て、オルセット! 落ち着けッ!】――今にも消失マジック超スピードを発動しそうだった前傾姿勢のオルセットに、急いで羽交はがめをしては止めるボス。


「放してよ! ボスゥッ! ボクだったらアイツなんか……ッ!」


「落ち着け! オルセットッ! さっき蹴りまくっても、ダメージを与えるどころか転ばせる事ぐらいしかできなかっただろッ!」


「でっ、でも! あの”カッタイカベ”を、ボクはヘコませられたんだよ!」


「……カッタイ壁じゃあなくて、シールド大盾タワーシールドな? それと、ヘコませられてもそれまでだろ? それ以上に出来た事は・・・・・・・・・・?」


「ウッ……ない……」


「だろ? だったら一緒に……!」


「ヘコ……ませ…た……?」



 ――オルセットの耳に呟くように話していたボスだが……恐らく、そんな事をお構いなしに大声で喋っていた彼女の言葉を聞いたのだろう……。今までに見たことない放心したような驚愕の表情で、団長が呟くと……恐る恐る、自分の大盾を右腕から外しては、表面を眺めるのであった……!


 そこには、彼女の怒りがこれでもかと刻み込まれた……月のクレーターの如く、ボコボコに凹まされれた大盾タワーシールドの姿だった……!



「あっ、あんなクソ王からたまわった物だが……オレの……オレの誇りが……!」


「誇り誇りうっせェんだよッ! そんな事をされてもおかしく無い事を仕出かしてんのに、自覚がないのかよ! クソッタレェェッ!」



 ――丸盾さえも掲げていない、無防備な団長の頭に狙いを付けながら怒鳴るボス。だが、引き金は引けなかった。あの”二段壁キック”でも防がれた故に、無自覚ながらも彼の”射撃に関する自信”は、チョッピリ揺らいでいたのだ……!



「黙れェェェッ! 貴様には永遠に分からぬ事だッ!」


「いや、さっきから言ってるけど……知りたくもねェよ! クソ野郎ッ!」


「そうだよッ! ド〜でもイイ事だよッ!」


 〜 プッツンッ! 〜


「人間の生活も知らぬ獣がァァ……偉そうに言うなァァァッ!」


 〜 グッ、ブゥオォォンッ! 〜


「ッ! 避けろ! オルセットッ!」



 ――怒りが爆発した団長が、豪速球の如くオルセット目掛けて丸盾を投擲するッ! コレを嫌と言う程に避けて来たボスは直様、回避行動を取ろうとするが……何故か必死に呼びかけても彼女は動かない……ッ!?



 〜 ヒュルルル……バアィィンッ! 〜


「「ッ!?」」


「……オソいね。ソレ」



 ――【け、蹴り上げたァァッ!? 何ちゅ〜動体視力してんだよッ!? オルセットォォッ!?】――背後でアングリと口を開くボスの前で……見事な”I字バランス”と錯覚しそうな”蹴り上げ”によって、迫る丸盾をオルセットはじ伏せたのだッ!



「ふっ、フンッ! 甘く見るなァァァッ!」


 〜 クンッ! フォンフォンフォンフォン……グンッ! 〜


「上だッ! オルセットッ! 戻ってくるぞッ!」



 ――青白く光る左手を動かし、宙に回転しながら舞う丸盾へと急降下の指示を出す団長。一方、経験済みなボスが再び忠告する中、再びその場を動かず、急に回転をやめた丸盾を見つめるオルセット……。もしかしてコレは……!?



 〜 ヒュルルル……ッ! 〜


「……だから、オソいってソレ」


 〜 ヒュルルル……バッ、バアィィィィンッ! 〜


「どっ、胴回どうまわし回転蹴り……ッ!?」



 ――オルセットは軽く飛び跳ねた後……空手などで、大技として認識される・・・・・・・・・・”胴回し回転蹴り”をいとも容易く繰り出しては、ギロチンの如く急降下してくる丸盾を、強烈な勢いで大盾の方へと蹴り返したのであったッ!



 〜 ビュルルル……ドガイィィィィンッ! 〜


「何ィ!? ドワァァッ!?」


 〜 ズルッ、ドテェェェンッ! 〜



 ――蹴り返された丸盾を大盾で受けるも、その衝撃を殺しきれず……押し倒されるようにスッテンコロりんと倒れてしまう団長。その後の様は、奴にとっては不本意かつ皮肉であろうが……偶然ながらも、床と大盾による見事な”団長ダンチョイッチ”の完成である……!


 その一方で話は変わるが、”胴回し回転蹴り”は本来……不意打ちカウンターかつ、捨て身に近い技である。その技の出し方の特徴上、どうしても蹴りを放った後は地に背を付ける事・・・・・・・・になる。


 ……だがなんと、オルセットは蹴りを放った後、助走のようにジャンプしてから放ったおかげか……尻餅を付かずに両脚で立つ程のしっかりとした着地をしていたのだ……!



「ミテミテ〜ボスゥ! 言ったでしょ!? ホラ! 今みたいに、ボクだったらヤレるってッ!」


 ――それに、ボスに引き続き”元気アピール”する余裕すら彼女オルセットにはあった……!


「……あっ、あぁぁ……そうだな……」



 ――【イヤ、思っていた以上に規格外過ぎるだろ!? オルセットのちからァ!?】――曖昧な返事をしてしまっていたボスの視線の先には、今も”団長ダンチョイッチ”されている中……見事に大盾に突き刺さっていた・・・・・・・・丸盾の姿があったのだ……!


 流石にここで”理◯雄先生”に、オルセットのパワァーを試算してもらうような検証は出来ないが……どうやらここまで”無敵”と言えるような硬さを持つ”団長の大盾”も、完全無欠でない・・・・・・・と言う仮説が出てきた訳だ……!


 Fe炭素C添加てんかして作り出された合金は、”はがね”である。これは普通の鉄よりも頑強な物だが、炭素量が多いと硬くも・・・・・・・・・・脆くなる・・・・のだ。このように、丈夫で粘りのある強靭な合金を作り出す際は、配合する”バランス”が重要である。


 よって、恐らく団長の持つ大盾を構成する”鉄”と”魔金剛アダマンタイト”の配合は、そのバランスが悪いか十分・・・・・・・・・・ではなかった・・・・・・のだろう。硬さは負けるハズの”王魔金オリハルコン”合金であろう丸盾が、彼女によって砲弾の如く蹴り飛ばされた末に……弾き返されず、突き刺さってしまったのが良い証拠だ。



「ヘヘッ、じゃあ今すぐにでも行って……!」


「まっ、待てッ! オルセット! ステイ、ステイィィッ!」


「……も〜何なのさ? ボスゥッ!?」



 ――【……形成逆転出来たと言えど、このまま蹴り続けさせればあの大盾タワーシールド壊せるだろうが、傷が治ったポーションを飲んだオレの疲労が抜けないように……オルセットの体力スタミナは無尽蔵じゃあ無いハズ……。クソッ! 結局火力が足りねェ……ッ! 何か……決定打になる火力……”爆弾”とかでもあれば、こんな苦労は……!】


 ……唇を右手の人差し指と親指で抱え込むように拳を口に当てながら、肘を左手の甲で支えつつ上記の事を思案するボス。その周囲を特攻を止められたオルセットが文句を言いつつ、ウロチョロしているが……結局はそうなのだ。


 結論……と言うか、ブッチャケて言えば……前話に彼が語った装備の”手榴弾グレネード”が複数個あれば、もう少し有利に戦局を進められていたのだ。


 現代ではいくら高性能な防弾チョッキボディアーマーが開発されようとも、それが体の全てを守り切ってくれる訳じゃあない。防弾チョッキでも防御カバーしきれない、”防具の隙間”から銃弾や手榴弾の破片が入り、致命傷に至ってしまう事があるのだ。


 それは脇の下や股、兜の覗き穴などの”防具の隙間”がある板金鎧ばんきんよろい全身鎧プレートアーマー)も例外じゃあない。



 〜 ズズ、ズリリ……ドゴォォン! ……ムクッ 〜


「ッ!? 嘘だろ……こんな……こんな事があって……!?」


 〜 グンッ! グンッ! グウゥゥゥンッ! 〜


「抜けろ……抜けろォォォォォォォ!」


「ッ!? ぼっ、ボスゥッ!? アイツ、起きあがっちゃったよ!? ド〜すんのさッ!?」


「待て! ……今考えてる!」



 ――【……出せるだけフリピスの弾を出して、出した黒色火薬で原始的な爆弾を……イヤ、火薬の量も少ないだろうし、何より爆弾用の容器どころか作る時間すらもねェ……!】――地面に置いた大盾を脚で抑え、刺さった丸盾を引き抜こうとする団長を横目に、ボスはあ〜でもないこ〜でもないと、必死に策を考えていた……!


 しかし、いくら考えようとも……シブくカッコいいボスは突如、反撃のアイデアがひらめく……訳もなかった。現実は非情である。



「ボスゥ、ちょっとボスゥ!」


 〜 ガッ! モファァァ! 〜


「ッ!? ゲホッ! ゴホッ! 何だよ、オルセット!? 今考えて……!?」



 ――ボスの態度にイラついたのか、地面を蹴り上げたオルセット。すると、そこはちょうどボスが撒いた”小麦粉の床”だったのだろう……。彼女の脅威的な脚力によって、ちょっとした煙として舞い上がり、ボスの鼻を刺激する。しかし、この時にボスは……!



「……小麦粉……」


 ――舞い上がった小麦粉を見つめながらボスが呟く。


「……松明……ハッ!?」



 ――そして、舞い上がった小麦が四散した後……盗賊が照明に使っていたであろう、洞窟の壁にあった未だ火が付いていた、壁掛けの”松明”がボスの目に入ると……?



「……天啓てんけいが……来たァァッ!」


「うわぁ!? 何ィ、ボスゥッ!?」


「……オルセット、ちょっと耳貸せ」


「えぇ? 何を……!」


「いいから早く!」


「うっ、うん……」



 ――男性と女性の理想的な身長差ぐらいに、ボスとオルセットの身長はある性か……ほぼしゃがんだりする事なく”閃いた策”を彼女に耳打ちするボス。



 〜 グンッ! グンッ! グウゥゥゥン……ボコォォンッ! 〜


「ハァ、ハァ、ハァ……クソォッ! 貴様らよくもォォォッ!?」


 〜 ……ゴニョゴニョゴニョゴニョ…… 〜


「……ってワケだ」


「……イチオウ、全部キいたけど……それイケるの? ボスゥ?」


「まぁ、この世界の呼吸が”酸素以外”だったら無理な話だろうが……一かバチかの賭けでも、ヤリ甲斐は十分にあるッ!」


「う〜ん……」



 ――団長が大盾から丸盾を引き抜き、ボス達に雄叫びを上げる中……耳打ちを終え、自信を取り戻した感じのボスに対し、話した内容の実感が湧かなかったのか……若干ノリ気でない不安な表情をするオルセット……。



「と言うワケで……こっからは”タッグマッチ”と行くぜ! オルセットッ!」


「……たっぐまっち?」


 ――思わずズッコケそうになるボス。


「ねぇ、ボスゥ? たっぐまっちって……」


「とっ、とにかく! ”一緒に戦う”って、事だよ! OKッ!?」


「んっ!? うんッ! おっ、オ〜ケ〜ッ!」


 ――ボスがボクシングなどでやるような、”ファイティングポーズ”を取るのに呼応するように、オルセットも見よう見まねでそれっぽい構えを取る……ッ!


 〜 ドゴォォォンッ! ガブッ、ギュゥゥゥゥンッ! ガブッ、ギュゥゥゥゥゥゥンッ! ガブッ、ギュゥゥゥウィィィィィィィンッ! 〜


「もう、許さんぞ……貴様らァァッ! 出し惜しみは無しだ、今度こそ全力で叩き潰してくれるわァァァッ!」



 ――再び”丸盾鋸シールドバズソー”を発動させ、今度こそ決着を付けんとばかりに雄叫びを上げる団長。一方のボス達は、呟き声で耳打ちした内容の最終確認をしていた。



「……気を付けろよ、オルセット。あの丸盾の光っている部分に当たりでもしたら、一瞬でズタズタに斬られるからな……!?」


「……ダイジョウブ、さっきのサクセン? ドオりに、投げて来てもゼ〜ンブ! ケり返してやるから!」


「しっ、静かにしろ……! 絶対に、お前が囮だって……気取られないようにするんだぞ……?」


「うん、分かってる! 任せて、ボスゥ!」



 ――ようやく邂逅かいこうを果たしたボスとオルセット!

 鉄壁かつ(現状)無敵に近い、「赤壁のグラヴォキエ」に勝つための秘策とは!?


 このまま一気に語りたいが、◯者の皆さんの集中力をこれ以上削ぐにもいかないため……恐縮ながら、ここで一旦区切らせて頂こう……。


 えっ? 「次でちゃんと”ドス戦”は終わるのか」って?

 ……だっ、大丈夫だ、問題ない。





<異傭なるTips> グラヴォキエの技(現時点)



丸盾投擲シールド・スロー(仮称)」

・左腕に装備している丸盾を投擲とうてきする。

 ボス達は全て回避しているため、威力は不明に思えるが……どうやらこの投擲に当たった人間の兵士や、中型の魔物の頭蓋骨でさえも、ほぼ一撃で陥没かんぼつする程の威力を持っているらしい。



魔操丸盾ソーサル・シールド(仮称)」

・左腕に装備している丸盾を投擲後、魔力を消費して”磁石”のように盾を引き寄せたりする。

 ”魔導性”が高いらしい「王魔金オリハルコン」を含んだ合金だからこそ成せる技のようで、主に”丸盾投擲シールド・スロー”の後に丸盾を素早く回収したり、その回収過程で”不意打ち”を喰らわすために使用しているらしい。



跳降武器ウェポン・レイン(仮称)」

・地面に散乱していた様々な武器を、”魔操丸盾ソーサル・シールド”によって跳ね飛ばし、自由落下させて攻撃する。

 ボスとの対戦が初めて起きた現象ではないらしく、戦場でも起きていたようだが……その不確実な命中率と威力を前に、技として認識するには至らなかったらしい。



大盾突進シールド・チャージ(仮称)」

・右手に装備している大盾に身を隠したまま、前方に勢い良く突撃する。

 強度と硬さに優れた”魔金剛アダマンタイト”を含むこの合金製の大盾を用いた突進は、並の兵士や魔物の攻撃を容易く弾き……突進上にいた者を全てをハね飛ばすか、き殺していたらしい。

 無論、当たったまま壁に叩き付けられれば……超人や神と言った超越者じゃあない限り、即死らしいであろう。



大盾打撃シールド・バッシュ(仮称)」

・右手に装備している大盾に身を隠したまま、大盾を前方に突き出したり、振り払うようにして殴り付ける。

 単体や少数の敵相手に良く出していた”通常攻撃”とも言える技らしい。特筆すべき事はほとんどないが……重鈍な”鎧”かあるいはそう言った”体重”を持たない限りは、容易く吹っ飛ばされてしまう程の威力を持つらしい……。



槌盾裂破シールド・クエイク

・右手に装備している大盾に魔力を集中チャージさせ、地面に叩き付けて小規模の地震を起こす。

 グラヴォキエの奥の手の一つらしい。”魔金剛アダマンタイト”は、”魔導性”に優れないようだが……”ゼロ”と言う訳ではないようで、「相手の行動を阻害する程度」なこの威力の低さも”王魔金オリハルコン”製であれば、相手を空中へとハね飛ばす程の威力が期待できたらしい……。

 また戦争時では、群がる軍隊目掛けてこの技を放ち、行動を阻害した後に「大盾突進シールド・チャージ(仮称)」で轢き殺したり、「丸盾鋸シールドバズソー(仮称)」を投擲したりするなどして、大群を一気に殲滅しては、部下達のための活路を切り開いてきたらしい……。



丸盾鋸シールド・バズソー(仮称)」

・左手に装備している丸盾に魔力を集中チャージさせ、盾のフチに沿うように高速回転する”魔力刃まりょくじん”を顕現させて殺傷力を上げる。

 グラヴォキエの奥の手の一つらしく、この技をあまり使いたがらないのは「魔操丸盾ソーサル・シールド」と比べ、常に魔力を消費(集中チャージ)しないとこの状態を維持出来ない……非常に燃費の悪い技だかららしい。(イメージとしては、充電池に常に充電を施しておかないといけない感じらしい……)

 だが、その性能は凶悪と言って良い程らしく、過去の帝国との戦争で出た兵器の一つである「岩巨人ロックゴーレム」を、投擲による遠距離から容易く切断する程の切れ味を持っていたらしい。

 因みに、何故に「噛んで回す」かと言えば……単純に”大盾で常に右手が塞がる”だからしい……。



波衝砲盾ショック・シールド

・右手に装備している大盾に魔力を集中チャージさせ、その後盾の正面に向けて一気に放出する。

 グラヴォキエの奥の手の一つらしい。劇中では「殺傷力はない」とあったが……吹き飛ばされた勢いで、”壁”など何かしらに打つかれば、充分に致命傷や最悪”即死”になり得る程の、衝撃波を放っているらしい。

 また、本来は一人に向けて放つ技ではないらしく、戦争時にグラヴォキエに群がる兵隊達を一旦押し戻す(仕切り直す)ために、この技は編み出されたらしい。




 ……だそうだぜ? ボッヨヨ〜〜〜ン! (by,噂話が大好きな奇妙な石)

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