第8話 RE:Mission-7 食料確保二挑戦セヨ
――
ボス達は「トルガ村」を囲む、森のとある一角を歩いていた……。
〜 パチン! パチン! パチンパチン!〜
「クリッカー、クリッカー、クリッカー……。
あぁぁぁぁぁッ!? 何でオレは出来ないんだよッ!?」
――
その最中、何故かボスは”
「おっ、落ち着いてよぉ……ボスゥ……」
「でも、オルセットは出来んだろッ!?
「苦手……って言うよりも、コレしか出来ないんだけどね……」
〜 パチン! ボッ! 〜
――オルセットが右手で”指パッチン”をすると……? なんと! 何処からともなく、彼女の右手人差し指に、”火”が
無論……人差し指の第一関節が折れ、そこから
つまり、彼女はただ「指パッチン」をしただけで、人差し指の先に葉巻などに火を付けるには丁度良い……”小さな火”を
「それに……ボクだってすぐに出来た訳じゃあないんだしさ。
ボスだって練習していれば……きっといつか出来る様になるよ! 絶対ッ!」
「励まし、ありがとうなオルセット……。
……そんな日が来ればいいんだが……」
〜 パチン! パチン! パチンパチン……!〜
「もぉ、何そんな不機嫌になってんのさぁ……ボスゥ?
ボクが
「なりたくもなるわッ!?
仕方ない事とは言えど、一週間寝込み続けてた”オルセット”を”狩り”に駆り出さなきゃ行けないなんて、危険だろ!?」
「……ボス……」
――ボスに注がれる彼女の熱っぽい視線と共に、心なしか口元が緩む。
「……それに、オルセットに教えてもらったってのに……オレに
「……やっぱり、そっちなんだね……」
――哀れ、オルセット……。
微笑ましかった気持ちが、ボスの残念な一言によって一気に四散してしまう……!
「けど……そんなに
この魔法、誰が言ったかは覚えてないけど……
「だからだろ!? オルセットッ!?
〜 パチン! パチン! パチンパチン……!〜
「……そんな魔法よりも……。
ボクは”イセカイの事”をたっ、くさんっ! ……知っているボスが
――急に
それに対し、魔法が出来る彼女に羨望の余り突っ掛かり気味に話し、再び「クリッカー」という魔法に熱中していたボスは、思わず手を止め
昨日、彼女は自分自身が
「……そんなにか?
魔物はいないし……魔法もないし……平和だからこそ刺激的な事も少ない……。
退屈がほとんどな場所だって、この道中で話したろ?」
「……だからこそだよ。
魔物もいない、
……そんな魔法の代わりに、”カガク”が発達したボスの世界の方が……ボクは羨ましいよ……」
――「……金さえあればな?」……と、ボスは
それは、趣味でミリタリー関連の調べ物をしていた際に見た
アフリカ大陸の北アフリカに属する「スーダン共和国」……そこで撮られた、とある”子供の写真”だ。
「……マジかよ……!?」……彼も思わず目を背けたくなるような光景……。
それは、まるで
また、その子供らしき写真はもう一枚あった。お腹が空き過ぎたのか……サバンナらしき荒野に
朝昼晩と、
写真
「……異世界って……現実で言えば、”発展途上”や”内紛”が未だ続くようなモノ……なんだろうな……」
……思い出した後に続く彼の胸中の言葉は、何処かズレている気もしなくもないが……。
そして彼は、ゲームの
それが急に「記憶を失くした難民」……という風に変わったのを、痛感していた……。
「
「……スゥ、帰る事に
……オルセットが良いならな……?」
「……えっ?」
「あぁ……けど生憎、今はオレが元の世界に帰れる
だから……」
「”アイニク”……?
……フワァ! ボスゥ! それって、どんな”お肉”なのッ!?」
――昨晩の夕飯で、”ウサギ(らしき)の
「……”あまり期待するな”……って事な? 生憎は……」
「……へぇ〜、そうなんだぁ〜」
――無邪気に納得する彼女に、思わずタメ息を吐きそうになるが……ボスはグッと
「……とにかくだ。
いつかになるかは分かんないが……”帰れる時”があるなら……オルセットも来ないか? それまでは……オレが、お前のために
「……」
――彼の”愛の告白”とも取れそうな一言に、何故か彼女は
「……? どうした?」
「ううん、何でもない。
ただちょっと……ボスと一緒に”チキュウ”って”イセカイ”に行ったら……どんな楽しい事が待ってるか……って、ボンヤリと思ってただけだよッ!」
――だが、そんな表情もボスが声を掛けると……?
まるで”気のせい”かと
「……そっ、そうか?
まぁ、どうなって行くか分かんないが……頑張っていこうなッ!
オルセットッ!」
「うん! ボクも頑張るよッ!」
――悲しいかな……生まれて初めてなのか、「女性からの
先程の「記憶を失くした難民」という認識は何処へやら……僅かに残る”口元のニヤケ”を、オルセットは見逃してあげたかも定かではないが……。
二人は
しかし、そんな
〜 ジャリ……ジャリジャリ……ブホォ……ジャリジャリ……ジャリ……〜
――「……ッ! 隠れろ!」と、ボスと並んで歩いていたオルセットを、近くの茂みに押し込みながら彼は隠れる。「ちょっと! 何するのさッ!?」と勿論、彼女は抗議する。
しかし、彼女の叫びが森に響く前に、素早く彼女の口を左手で
そう言われて不満そうな視線を向ける彼女だが、この後に見た物に対し、彼の行動を納得せざるを得なかった……。
それは、彼が口に当てていた指を首元付近で
血走った凶暴そうな目……右の鼻の穴だけが異様に大きい豚鼻……それ以外はパッと見、地球に居た「ニホンイノシシ」に良く
~ウィィ~ン、ピピピピピ!~
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<コーカサス・ボア>
和名:
年齢:6歳(オス)
体重:96kg
体長:122cm
肩高:76cm
属性:無
<レベル:9>
HP:1044/1044(
MP:59/59
DE:5 (厚い脂肪)
能力値
[ Strength ]
<身体強化 Lev.1>
[ Perception ]
<嗅覚強化 Lev.4>
[ Vitality ]
<物理耐性 Lev.1>
[ Agility ]
<強壮 Lev.4>
<強靭 Lev.4>
《詳細情報》
バレッド王国辺境「スップリ森」など、ウォーダリア各地の森に必ずと言っていい程生息する、猪型の魔物。
鋭いトゲのように発達した二本の¨牙¨と、焦げ茶色の毛皮に、特徴的な¨一本角¨を額に生やす魔物であり、その気性は魔物らしく、荒く雑食性。
その上、とんでもない¨悪食¨であるため、目につけたモノは何であろうと仕留めて食するために、
強さ的にはその”習性”と、頑張れば戦闘経験がほぼ皆無な村人でも狩れる”行動の単純さ”相まって、冒険者ギルドの指定ランク最低の<ストーン
しかし、実際に定められている指定ランクは、¨2つ¨も上の<アイアンクラス>であったりする。
これは、ゴブリンに勝るとも劣らない¨繁殖力¨を持つ上に、とある
肉は、
街や首都では大した肉ではないが……
余談だが、鼻の穴の”右”が大きい場合には”
逆だった場合は”
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
……とボスは、
視線の先に居た……地面の土を鼻先で掘り返し、時折周囲の匂いも嗅ぎながら食料を探す「コーカサス・ボア」を……!
因みに余談だが……実はボス、このボアを既に見た事がある。
ただ、オルセットを助ける際に
ベルガの家付近にヒョッコリ迷い込んだ個体をだ……その際に「スキャン」したのである。
因みに、この「スキャン」の情報量を前に、「……うわ、今まで見てきたどのラノベよりも詳しいなぁ……コレェ……!?」なんて、
その反面、「村とかの安全な場所に魔物なんて……居るゥゥゥゥッ!?」……と、未だ
だが、そんな彼の横を”スルリ”……と、その日の薪割りをしていた斧を通りすがるが如く、彼の手から
まぁ、その日に食べていた「ボアのシチュー」が思いの
そんなこんなで、彼は
「ど……どうするの……? ボスゥ……?」
「ど〜するも、こ〜するも、病み上がりだし……。
その荷物を持ってちゃあ、オレを手伝うにも手伝えないだろう?」
――そう言うボスが向ける視線の先には、麻製らしき袋がオルセットの右肩に
「だ……大丈夫? ぼ、ボクに出来る事は……」
「心配すんな。……それともなんだ?
――悪戯っぽい口調で、
「そ、それは……」
「……気持ちは嬉しいよ。けどな?
オレもベルガの婆さんも、腹ペコじゃあ狩れるモンも狩れなくなるって……。
それに、あの婆さんの説教……”食料が取れませんでした”……って事で、オルセットも受けたいか?」
――昨日の光景を思い出すかのように、少し天を
すると、少しして彼女の表情が
「……イヤだ」
「……だろ?
けど……そんなに不服……いや、納得出来ないのか? その表情……」
「……」
「……まぁ、本当にオレを助けたいと思うなら……
「……”シュンソク”?」
「メチャクチャ”脚が速い”……って事な?
ホラ昨日、部屋の壁や天井を含め……縦横無尽に走っていただろ?」
「あ、あれは……必死……だったから……」
「何だ? 自信がないのか?」
「い、いや……覚えてないと言うか……その……」
――ボスは思わずタメ息……をせず、何とか右手で口を
「……いつかお互い、改善出来ればな」……そう胸中でボヤきつつも、彼はこれ以上彼女が不審に思わないよう、何とか言葉を
「ホラホラぁ、こうしてちゃあ……あのボアもどっかに行っちまうだろうし……。心配だと思うなら、今は少しでも離れておいてくれ……オルセット」
「う、うん……分かったよ。ボスゥ」
〜 ザッギュゥゥゥゥンッ! 〜
「早ァァッ!?」
――消失マジックの如き速さで、ボスの目の前から消えるオルセット。
思わず声を上げてしまった口を塞ぎつつ、慌てて周囲を見渡すと……?
まぁ、彼から見て”
〜 ……ブホゥ? 〜
「……えっ? あっ、ヤベェ!?」
――まぁ、ここまで
ボスから見ておおよそ20m、その先に居た「コーカサス・ボア」がようやく彼の存在に勘付いたようで、茂みに隠れていた彼を探すかのように……周囲の警戒をし始めていたのだ。
「落ち着け……
スポーツジャケットの胸ポケットから、
そして……僅かに茂みから顔を出し、まだボアが警戒をしている事を確認すると、フリピスを右手に握り締めながらゆっくりと茂みから出たのだ……。
勿論、現実の猪も
〜 ……ブホォォォ!? ザッ! ザッ! ザッ! ザッ……!
……スッ、チャキッ……!〜
――ベルガによって頭をカチ割られる直前のように……
それに対しボスは、ボアを真っ直ぐ
道具も動物も違うが……何故かその光景は、”闘牛”――あるいは”西部劇の決闘”を思わせる、異様な
「……フンッ、来いよ……! ブタ野郎ッ!」
〜 ……ブホオォォォォォッ!? ザッザッザッザッザッザッ……! 〜
――
……オルセットにも分かりやすく言えば、
〜 キンッ! シュボッ! ズバンッッ! 〜
――立ち上る
残り10m……と言ったところで引き金を引いていたボスは、
〜 ズザザザザ……バッ! ……ザザザザザザァァァッッ! 〜
――勿論、その滑り込んできた物体とは……
何せ、眉間の中央……そこにはこのボアを象徴する立派な角が
……まぁ、要するに”角に銃弾を
「……フゥ……まっ、日頃の訓練の
……
うるせェ……。
……まぁいいだろう。
私の親切な補足を邪険にしながら、ボスはフリピスの銃口から立ち上っていた硝煙を軽く”フッ!”……と吹き消した後、取り出した胸ポケットへと収めたのである……。
しかしながら……良くもまぁ、ビビリつつも大胆な狩り方が出来たのだ……?
……まぁ、銃あるしィ〜? オレは転生者(?)だし〜?
無双して当ォォォ然
真面目な話……種明かしをすれば、ボスはベルガから
その情報とは、”唐突に曲がる事はほとんどない”……と聞かされていた。
余程狩ってきたのか……何故彼女がそんな事を知っていたのか、何処か
だからこそ、彼はそれを活かし……こうやって”棒立ち”という
……まぁ、下記のスキルもあったからそうなんだが……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ガンスリンガー」
<
また、このスキルのレベルが上がる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
――「スキルも含めて」……と言う前提もナシに、その
ダ〜マ〜レェェ〜ヨォォォォッ!?
正体不明なのを良い事に、調子こきまくりやがってッ!?
あぁぁぁぁ!? 何だよッ!?
そんなにオレが”チートな無双”とかって、やっちゃあいけないのかよッ!?
地球じゃあ、絶対に味わえないような……
……随分と安っぽい”
ッ!? なっ、何で知って……ッ!?
――それに……今回の行動は”情報”という、”勝算”はあれど――”無謀”としか言いようのないモノだったぞ……?
……
〜 ……スッ、バッ〜
「よしっ、まずは
……いいかね? ボス君……?
何せ……転生でお馴染みの”トラック”程ではないものの、猪はそのトラックのおおよそ半分……約”時速45km”で走る事が可能なのだ。
〜 ……ブスッ、ザクッ、ザクザク……ザクッ、ザクザク…… 〜
「円状に肛門の部分に切れ目を入れたら……次は、内臓が傷つかないように、薄く腹を裂く……っと……」
――トラックより”軽い”から大した事なさそう?
いやいや、そんな甘い認識じゃあ困る……!
更には、突進してきたのが”
〜 ……ザクッ、スゥ〜ザクッ、スゥ〜ザクッ、スゥ〜 〜
「
――それは何故か……?
〜 ……グッ……グイッ! 〜
「……ハァ〜良かった……
えぇ〜っと……? 膀胱を持った後、引っ張りながら付近の筋を切り取って……最後は
〜 ……ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ…… 〜
……それは”雌”とは違い、雄の個体は”立派な牙”を持つからだ。
「
――こう言うのも、雄は衝突時に対象を”突き上げる”ような動作を取る事が多く、その際に(当たる高さの関係から)
〜 ……ザクッザクザクザクザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ……。
……コンッ! コンッ! コンッ! コンッ! コンッ! コンッ! コンッ! ……バキッ! 〜
「……うわぁ、喉辺りから血がスゲェ出て来るなぁ……。
まぁ、けど……後はこの”食道”っぽいの? ……切り離した白く
……
プロの
「……あっ、ジャッケットは脱いでおこう……。
もう手が血で真っ赤だし――これ以上、上着に飛び散るのはヤダからな……」
〜 バサァ! ……グッ、ググ……グググッ、ググググ…… 〜
……とまぁ、そんなリスクも知らずに無傷で狩れたのは、本当に”運が良かった”……としか言いようがないぞ? ボス君……?
……ボス君? ちょっと? お〜い? さっきから作業に夢中になり過ぎているようだが?
……聞いていますかァァァァァァァァァァァ〜?
〜 ……ベリッ、ベリベリッ、ベリッ、ベリベリベリベリッ……!
ベチャアッ! 〜
「よっとッ!?
フゥ……最後、大腸っぽいのを引き抜くのに苦労したわぁ……。
でもこれで……全部の内臓が、
……今更な知識出されても困るつ〜のッ!」
〜 ベチャアッ! 〜
……作業に集中していて聞こえていなかったにせよ……。
……
――いいかね、ボス君? 君はスキルのおかげで
……うるせェよ……。
――彼女を助けられた事も……今回の狩猟に成功したのも……
今し方の解体だって、「ディスメンティリング」という君のスキルから脳内に直接、”
……黙れよ。今から解体したコイツ木に吊るさないと、血抜きが不十分に……
――
……
……そのまま”
……黙れよ……!
――例えば……
「黙れ
……ボスは……ボスは、息も
とてつもなく……周囲に居た野鳥が一斉に飛び立つ程の……大きさで……!
私も初めて感じ取ったような……憎悪を込めて……!?
「何なんだよ……? お前は……ッ!?
只々、刺激のない……平凡で平和な毎日を送っていただけのオレが……!
ワケも分からず……!
”たった一人”でこんな森へ飛ばされて……ッ! 右も左もわからない中……ッ!
喧嘩もした事ないオレが……ッ! ”殺し合い”を……マジもんの”殺し合い”をしてッ! オルセットを助けて……ッ! 治療のために、死ぬ気で走り続けて……ッ! やっとこさ……やっとこさに!
見つけたこの世界の協力者である婆さんに! 借金吹っかけられて……ッ! 更に……! オレとオルセットのミスで、やった事もない
それなのに……何なんだよ……ッ!? お前は何をしてきた……ッ?
……異世界に来てから、ずっと……ずぅぅっと……!
……
ずっと苦労し続けているオレにッ! 何をし続けてたんだよッ!? クソ野郎ッ!?」
……
「あぁッ!? ダンマリってかッ!?
お得意の
「調子に乗ってはいけないのは、乗った瞬間……”
あぁぁッ!? どうしたッ!? おいッ!? お得意の下らない冗談でも言ってみろよッ!?
今は無理でも……いつか会った際に、細切れになる程の鉛玉をブチ込んでやるからなッ!?」
……
「ハァハァハァハァ……こんな……突拍子もねェ……! 訳も分かんない状況だってのに……ッ!
”
笑わず、恐れず、油断しない……
……
「オレが勇者かどうか分からないどころかッ!? まだ
オレ自身でも
……すまなかった。
「……はッ?」
……すまなかった……言い過ぎた……。
そんな……ジョジョに……
「……その程度? その程度の謝罪で許すとでも……ッ!?」
……二つ、お詫び”に
……確実な事?
そう……一つは、私は
……確証はねェよな?
て言うか……味方なら今後一切、
……それは無理な話だ。
……じゃあ、会った際に確実に鉛玉をブチ込む話は……!
……だからこその
……?
……二つ目、私の目的は君達の活躍を”実況する事”だけだったのだが……。
……”実況する”
……それをお詫びに変えよう。
ごく僅かだが、この実況で
……実況でサポート? ……丸で話が見えないが……アレか?
このオレやオルセットの様子を盗撮して、それが地球側に流れて……オレの必死な姿をお茶の間の皆さんが笑い転げて……いつの間にか、オレ達は
……こちらこそ、何故そんな回りクドく笑えない皮肉を言っているのだ?
……お前、”詫び”の意味を知ってるか?
これは失礼……。
お詫びはこれ以上増えないモノの、心からの謝罪と……未だ現実感のない君に、私の”サポート”をお見せしよう……!
……なぁ?
イチイチ、オレをおちょくらないと発狂するとかの病気なのか? お前は?
では、始めようか。手始めに……!
<今、ボス君の背後の木の陰で、オルセットが心配そうに君を見つめている>……!
……背後の木? んなワケ……?
「……ぼ、ボスゥ……? 大丈夫……?」
……ッ!?
……どうだ? 本当だっただろう?
「お、オ〜ルセット〜ッ? も、もう来てたのかぁ……?」
……どうだ? どうだどうだ? 本当だっただろう?
思わず、号泣していた涙を慌てて腕で
黙ってろよッ!? クソ野郎ッ!
「……うん。
聞き慣れない”音”がして……その後、嗅いだ事もない”匂い”もして……。
何かボスにあったのかなぁ……って、怖かったけど……戻ってみたら……突然、ボスが叫び出して……! それで……ボク……怖くなって……」
「あぁぁ待った。
……オルセット? さっきオレが叫んでた事は……
「……えっ?
……え〜ッとぉぉ……「ヘイボンデヘイワ」……だとか。
……「チョウシニノッテハ」……だとか。
後は……「オレガユウシャカドウダ」……だとか。
う〜ん……叫んでいたのは、ほとんど聞いてたかなぁ……?
……ほとんど、意味分かんなかったケド……」
――思わず、ボスは両手で顔を大きく拭った……。
「ヤバイ、絶対にオレ……頭のおかしな奴だって……絶対思ってるよ、オルセットッ!?」……と、首を
……もぅ、お前が弁明しろよ……ッ!?
――それも無理な話だ。
何せ、私の声は……基本的に
ハァッ!?
――それに、仮にできたとしても……私が出来るのは君の言う”下らない冗談”で、
……お前絶ッ対、直接会えたら鉛玉をブチ込んでやるからな……ッ!?
「ぼっ、ボスゥ……? ホント……大丈夫?」
「だ、大丈夫だって……!」
「……そう?
なんか……さっきまで”泣いていた”ような声も、聞こえてたケド……?」
「あっ、あぁぁ……急に……ボアが突っ込んできたからさ……。
初めての狩りだったモンだから、思わず……泣く程、怖かったみたいでさ……?」
「……怖かった?」
「? あっ、あぁぁ……臆病になっちまうくらいにな?」
「……オクビョ……」
「ちょっとした事でも、怖い……って思っちまう事な?」
「……そっか……」
「?」
「ボスも……
――そう言うと、彼女は両手を後ろに組み……思わず惚れてしまいそうな”微笑み”をボスに向けていた……ッ!?
「けど……イヤだなぁ……」
――しかし、唐突に彼女は視線を逸らして地面に顔を向け……表情も曇らせてしまうのであった……。
ボスからは見えなかったが、背後に回した手を忙しなく組み替えたり……
「……何が嫌なんだ?」
「ボクは……
「……戦えない?」
〜 ……ガサガサ……ッ! 〜
「「ッ!?」」
――素早く胸ポケットから
〜 ガルルル……ッ! 〜
――その視線の先には……茂みから姿を現した、
そして、極め付けは……その
ここまで来れば”狼か!?”……と、誰もが思うであろう……。
だがしかし、ここは異世界である。
異世界であれば、何かしらの違いはある……ッ!
それを大いに示すかのように……この生物は、「ヨーロッパオオカミ」に似た体に、何故か現実の「ブチハイエナ」よりも目まぐるしく
「これも……テンプレって奴に入るのかな……?」
胸中で緊張感のない言葉を呟くボスであったが、その額には数粒の汗が浮かんでいた……。
自身の横で、急に出てきた”魔物”に対し……面白いぐらいに
当然、「オルセットを失わせるか……!」……と考えている彼にとっては、自身が”逃げる”などの弱気な態度を見せ、「これ以上彼女に怖い思いをさせてはいけない……!」もしくは、「この状況で彼女を守り切れるか……!?」と言った
……あるいは、より明確な「
残念ながら、それを知る事は出来ないであろう……。
何故なら、私がその”答え”を知ろうとするよりも早く……彼が己の前に立ちはだかろうとする”魔物”に向けて、「スキャン」のスキルを発動させたのであったから……!
<異傭なるTips> スップリ森
「バレッド王国」南部――「トルガ村」周辺を囲む、自然豊かな森。
「トルガ村」やその周辺に点々と分布する「ガリド村」や「グリプ村」などの、複数の村々の生活を支えている。
ボスはそんな村々の中で、「トルガ村」とその近辺にある「
チートに関する”運”はなくとも、彼は”不幸中の幸い ”……という物には、
因みに、森内に生息する魔物は、
具体的に言えば、「森の西側」は、東側の山々の上流から流れ、その下流が大きく広がる部分や山々からの地下水が湧き出る場所など……”水資源”に恵まれているためか、
そのためか、このエリアで暮らす村々は多く……村の安全を守るために、積極的にここで生息していた”危険な”魔物達は狩られてきたためなのだろう……。
ここに生息するのは、総じて”草食”かつ”気性の大人しい”魔物ばかりと、言えるぐらいに多い。
平穏に暮らすには「食糧」「水」「安全」という点で、
逆に「森の東側」は、森の奥地に存在する
また、西側から「コーカサス・ボア」に追われた「ゴブリン」達が、広く分布するように住み着いたのだが……最近では、東側の森の恵みが豊富だった頃よりも……ゴブリンの数が急増し始めている……。
……これは、
そのためか、総じて食糧を得るため、
そんな危険地帯な東側だが、先祖代々……と
また、この
天国のような”西側”と地獄のような”東側”……これらの
「トルガ村」は、この”東側”と”西側”のちょうど中間辺りに位置し、
そして、人間によって出来た……「トルガ村」及び「村と城塞都市を結ぶ”道”」が、東側と西側の
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