部将の妻、大名の妻

藤堂高虎の妻という仕事は、何であろうか。
津藩の編纂史料に正室の働きを示す史料は存在せず、あくまでも婚姻とその一つの死が示されるのみであった。

そのような中で琴太郎先生は、彼女が如何なる人生を歩んできたかという難題に挑む。これはまさに偉業である。
高虎の人生は苦難の連続であるが、主人公・朝子さんは我々と等身大の目線で、感情移入しやすい筆致が見事。
更に時代の描写も素晴らしく、風俗に疎い私は読むたびに学びを得る程だ。

そして時代を知る私は、
「このあと朝子さんどうなっちゃうの~」
とドキドキが止まらないのである。

彼女が眠る四天王寺には、二対の肖像画が伝わる。一つは威風堂々たる藩祖高虎の肖像画、そしてもう一つは柔らかな正室の肖像画がである。
夫妻は今でも肖像画を通して、向き合い続けている。

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