新しい歴史ジャンル

OLさんが戦国時代にタイムスリップ、そんな奇天烈な設定から始まるお話ですが、そのOLさんは歴史改変なんてだいそれた事は考えませんし、異世界に投げ込まれて人格崩壊しちゃうようなやわじゃありません。

しかし、彼女は戦国の歴史を戦国の女としてたくましく生きていきます。その現代人の視点から見る戦国時代の人々の様子は、まさしくその現場に我々が存在したときに感じたであろう思いを代弁します。つまりこの作品は現代人をして戦国を眺めたときに思う自らの思いを感じさせる作品です。戦国を彼女を通して身近に投影し感じさせてくれます。そこが今までのタイムスリップ小説とは一線を画します。

これは戦国の中に飛び込んで戦国を見るという、歴史の記録を読むだけの従来の歴史小説とは一線を画す意欲的かつ実験的な作品です。

この実験はほぼ成功しています。読者はその主人公の環状を我が物に感じて、ついつい読み進めてしまいます。それはただ過去の記録を読んでいるからではなく、過去の世界を彼女を通して過去の社会を感じさせてくれるからです。

非常に意欲的な作品、まだ、完結にはなっていないと思いますが、今後の展開も非常に楽しみにしています。

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