フィナーレに向けて➀

 その言葉を最後にコエは完全に沈黙した。長い夢から醒めた感覚。頭がぼんやりする。


「そっかあ」と深川。「これ、小説なんだな」


「そうみたいだな。やっぱり嫌か?」


「そうじゃないけどさ。ってことは読者がいるってことだよな」


「そうだな。いるかもな」


「何か気になることでもあるんですか深川先輩?」


「いや、なんつーかさ、そいつらからしてみたら俺たちは登場人物に過ぎないんだよな? なんかムカつく」


「うーん。深川くんにしては深いね。あ、別に狙ったわけじゃないよ!」


「センパイ、別にいいじゃないですか。私たちが生きているって実感できれば」


「ああ、そうだな。ならさ、提案してもいいか? 俺たちさ、来月のホムフェスのダンス練習でこの島に来たんだよな? ならさ、もっと生きているぜーって実感したくないか? せっかく生きているんだから」


「ほうほう、つまり?」


「つまりー? ほら朝倉くんも!」


「え!? えっと、つまりー?」


「それが罪滅ぼしになればいいな。うん、つまりっ!?」


「深川センパイ冴えてますね! つまり!」


「深川先輩無茶ぶりですよ。まだ全然上手くないのに。まあでも! つまりは!」


「いいな、それ! 未来の俺に見せてやろう! 青春の煌めきを! つまり!!」


「よしっ! んじゃあ決まりっ!」


[[[[[[[[ダンスを踊ろう!]]]]]]]]


「あと寺坂先生! 頼みがあるのですが、私にバレーボールを教えてくれませんか?」


「ふむ。理由を訊いてもいいか?」


「はい。私は中学時代バレーボール部でした。しかし練習の厳しさ、試合のプレッシャーなどからいつしかバレーボールが嫌いになりました。ですが今、バレーボールともう一度向き合いたいと思います。そしていつの日か、バレーボールを楽しくプレーしたいです。大人になっても続けられるように手ほどきを受けたいと思います!」


「そうか。いい答えだ。しかし一点、守れないことがある」


「それは……?」


「練習は厳しいぞ? それでもいいなら体育館に向かおう」


「はい! お願いします!」

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