エクストリーム・タイム④

 この命をありがとう。全員のメッセージ。


 俺はなんて良き仲間に恵まれたんだろう。


『伊野神けい。過去の俺よ。お前に伝えたいことがある。


 青春を歌え。踊れ。戯れろ。それがこの先待ち受ける大人と戦う為のたった一つの剣となる。信頼を得たいのなら行動しろ。金魚のフンと一緒だ。信頼は勝ち取るものじゃない。くっついてくるものだ。背中で語れ。後輩はいつでもお前の背中を見ているぞ。たまには振り返れよ。


 恋愛をしろ。異性ともっと交流しろ。


 ゲスな思いがあって言っているんじゃないぞ! 大人になったら大人の恋愛をしないといけない。学生の恋愛気分じゃ女性は振り向いてくれないぞ。今の内だ、今の内に練習しろ。でないとわかっているな? お前はきっとぞ。こんな妄想だらけの小説を書く未来だけは何としても避けてくれ。これに一年以上時間を割いてんだぞ? そんなの嫌だろ? こんな鬼畜な作業はプロに任せておけばいいんだよ。


 趣味や考えを主張しろ。


 相手の反応なんて気にするな。お前の形状を相手に伝えろ。クレーターのように大きく窪んでいても、山のように大きくせり出していても良い。凹と凸が互いに魅かれ合うように、お前にぴったり合う相手がどこかにきっといる筈だから。


 一センチメートルの人生が半分になったらもう元に戻ることはない。お前の寸法は徐々になくなっていくだろう。削られていく人生の中でその命を燃やせ。零になるまで燃やし尽くせ。テロメア配列が無くなるその時まで。


 もっと仲間をつくれ。


 今、俺は『読書会』という本好きが集まるコミュニティに参加している。本は読むものじゃない。共有するものだ。一人で読んでばかりいないで、お前が心の底から面白かった本をプレゼンしろ。初回は緊張して帰ろうかとすら思うが、その一歩を踏み出せ。そうしたら目の前には見たこともない世界が広がっているぞ。


 本が繋いでくれた縁、大切な仲間たちだ。本当にありがとう。


 最後に家族への感謝の気持ちを忘れるな。この十年、お前にとってはこれからの十年だが本当に支えられっぱなしだった。部活の遠征代、備品代、学費、今のお前が当たり前だと思っているお金は家族が汗水垂らして働いたお金だ。


 生きるとは孤独で辛い。働いてわかった。こんなものを書かないとやってられないくらいに。


 だから少しずつでいい。親孝行をしろ。感謝の気持ちを決して忘れるな。


 周りの声なんて気にするな。お前が決断しろ。


 小説好きな家族に恵まれたことを誇りに思いながら生きろ。


 お世話になった人たちに感謝するために生きろ。


 誰かにとってのテロメラーゼになれ。以上だ。健闘を祈る』

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