第10話 桃の甘露煮(コンポート)

 今年は庭の照手水蜜桃てるですいみつとうが豊作でした。照手水蜜桃は小型で、市場にはまず出回らない桃です。

 豊作はいいけれど、中くらいの梅サイズから収穫期まで、見事なほどに雨続き。プラムサイズまでは生長してくれましたが、生食するには少々苦くて厳しい状況に。

 そこで、甘露煮にしてみました。



【材料】

照手水蜜桃 あるだけ

砂糖 適当(桃の重量の2~3割くらい)

水  適当


 コンポートにするならレモン汁や白ワインなどを入れるのですが、今回はシンプルに砂糖だけを使うことに。雨続きでしっかり熟れなかったので、それらを入れなくても充分酸味は出そうでしたしね。


 まず、照手水蜜桃の皮をむき、実を適当に削ぎ落とします。苦味が気になったので、種も念のため取り除きたかったのですよ。きっちり砂糖の量を決めて作りたかったら、削ぎ落とした桃の実の重さをここで量っておきます。

 適当な量の水を鍋にみまして、これまた適な量の砂糖を入れます。それを沸かして、先にシロップを作ります。と言っても、単に砂糖を水に煮溶かして一度沸騰させただけですが。

 そこに桃を投入。ひと煮立ちさせて少ししたら火を止めます。

 そのまま冷めるまで放置。保存したければ煮沸消毒したビンに流し込み、冷蔵庫へ。


 常温まで冷めた甘露煮を味見してみました。


 ――これ、桃缶じゃん!


 苦味はうまい具合に飛んでくれて、味わいはまさに「白桃の缶詰め」、そして香りは「不○家ネクター」!

 つまりこいつを裏漉しすれば、ピーチネクターになる訳ね♪

 こうして無事に、美味しく食べきることができました。



 さて後日。出張先で大量の花桃の実をいただきました。サイズとしては照手水蜜桃よりほんの少し小ぶりで、全体的に白っぽい実です。そして照手水蜜桃は食用種ですが、花桃は園芸種……つまり、食べることを想定していない実ということになります。

 うっかり照手水蜜桃の甘露煮の話をしたら「うちの花桃も今ちょうど完熟で大量にあるので、食べられるかわからないけどぜひ挑戦を!」と持たせてくれたんですね。神社の境内で花桃を収穫するという貴重な体験つきで。



 持ち帰った花桃は、照手水蜜桃と同じ手順で甘露煮にしました。生食するにはやはり苦くて無理。

 甘露煮にすると、桃の甘酸っぱい良い香りが漂います。この香り、やっぱりピーチネクター。これは期待していいかな?


 鍋に入れたまま冷まして、いざ実食。


 ――ん、いける!


 口に入れた瞬間、そう思いました。しかし……


 ――うぐっ! 苦いッ!


 いやー、後味が半端なく苦いッ!

 あの、グレープフルーツの皮をピールにせずそのまま食べたような苦味が口の中に長~く留まってくれます。

 これを食べ続けるのはかなり厳しい! でも貰った全量を甘露煮にしてしまったので、そのまま捨てるのも忍びない……


 ――舌に触れる時間を減らせば気にならないか?


 そう、ピーチネクター作戦を決行することにしました。


 カップの上に茶こしをセット。甘露煮をシロップごとスプーンですくって、茶こしに入れます。シロップの比率を少し多めにね。

 スプーンの背で甘露煮を押しつぶし、カップに落としていきます。が、目の細かい茶こしの下にはなかなかつぶした実が落ちてくれません。

 仕方がないので、茶こしの中のつぶれた実もカップの中に。充分柔らかいので、飲むには支障ありません。

 ティーカップ一杯分のネクターもどきが出来上がったところで、覚悟を決めて


「いただきます!」


 少し粗めの粒の残ったピーチネクター。口に入れた瞬間はまさにそんな感じで美味。喉ごしも良いです。しかし……


 ――やっぱり苦ッ!


 口の中を通り抜けたそれが残していくのは、圧倒的な苦味――触れる時間が短いので、残る時間も若干短くはなってくれましたが、やはり苦いものは苦い!

 ということで、残念ながらすべてを消費することは断念しました。悔しいので、なんとかしてあの苦味を消す方法を来年までに探したいな~。



 今回はお土産にできなかったお菓子の話ですが、番外編ということで。

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