守るべきもの

「魔眼系の加護の子は、特別な立場だよね?」

「色々と、守るべき事柄があります」

 サーシャに確認します。魔眼という能力は、便利ですが危険です。

 加護とスキルがある世界なので、そのせいで起きた事件は数多く、対処法もある程度成立しています。

「魅了系はどうなっているの?」

「厳しい監視下に置かれる事がおおいです。違反すれば、最悪死罪です」

「このこの場合は?」

「生かす価値ある?」

 レンは、クズノハが私を魅了しようとした事を理解しているので、怒っています。

「無いでしょう」 

 サーシャも同じでした。

「そのようなこと言っても、よろしいのでしょうか?」

 クズノハは、取り乱すことなく落ち着いています。

「私は命令すれば、この子達は自害します」

 後ろに倒れている、生き残りの4人の事でしょう。

「別に、その子達を保護する義理は無いよ?」

「その中には、城塞都市の領主の子供がいます」

「それで?」

「あなた方が殺したとなると、不味いのでは?」

「別に、問題ないよね?」

「殺すのは、この女だよね?」

「そもそも、他人がどうなってもかまいません」

 レンとんサーシャは、人質に価値を見出していません。そもそも、交渉にもなってない。

「そこの達を助ける義理は、私達に無い。君は、何がしたいの?」

「自由が欲しい。せっかく、素敵な加護を授かったのに、利用される日々なんて嫌!」

「魅了の魔眼て、利用できるの?」

「魔物相手にも効果ありますから、重宝されます。貴重な魔物を、操れる事もあります」

「危険は?」

「勿論在ります。その分、規則で色々と縛ります」

「それが嫌なの。何で、自由に出来ないの!」

 クズノハが叫びます。

「その見返りに、色々と優遇されているはずですけど?」

「その約束を、保護にしたのはあいつ等じゃないっ!」

「なるほど、どちっちもどっちということですね・・・」

 例のごとく、クズノハの記憶を辿ります。

「有罪?」

「ギリギリ、有罪かな、私の感覚だと」

 魔物を魅了して、報酬を得る仕事を彼女はしていました。魅了の魔眼の危険性は、幼いころから教えられていたので、守っていました。

 そこに、加護は神の与えたもので、何者にも縛られる必要は無いという主義の団体が接触してきました。

 禁じられた行為ですが、人に対して魅了も魔眼をつかうことで、色々と夢が叶いました。

 最初は、些細な事でした。朝をゆっくり寝たい。この程度の事ですが、怒る親に対して、軽い魅了を使い、黙らせました。

 可愛くない魔物を使って、気に入らない人を襲わせました。

 その結果、兵士に捕まりそうになりましたが、兵士を魅了して、罪を他人にかぶせた。一度堕ちたら、ただ進むだけ。

 城塞都市から、領主の息子を誘惑して、逃げ出したところ、ここで捕まってしまったらしい。

 この盗賊、領主の息のかかった人攫いの集団だったみたいです。魔眼対策で、直接退治しない眠りの魔法をつかう専門の集団を派遣していたみたいですね。

 お互い、運が無かったです。

「戦力としても、不要ですね。破ればどうなるかという規則を守れない人間は、信用できません」

 ここで、見逃すわけにも行きません。

「見逃すと、罰せられる事案ですか?」

「そうですね・・・。教会の規約ですと、逃がした場合も罰せられますね」

「誰に?」

「この場合は、教会騎士団が事情を知れば、手配される可能性あります。この女、その城塞都市の重要人物誘拐しているみたいですし、手配されるのも時間の問題でしょう」

「私は、騙されたの」

「誰に?」

「永遠なる正義と名乗る連中よ!あいつらが、加護は自由につかうものだって言わなければ!」

「人のせいにしては駄目ですよ。守るべき事は、守るべきです。やり直しの聞かない世界ですよ、謝れば許されるものではありません」

「じゃぁ、どうすれば良いの?」

「どうする事も、今更出来ません」

「じゃぁ、私はどうなるの?」

「消えるだけです・・・」

 一応、慈悲として、痛みは感じませんでした。

 このこの罪は、かなりありました。自由にやった結果、城塞都市滅んでます。魅了した魔物が暴れて、住民はほとんど生き残っていません。彼女の両親もですね。

 暴れた魔物を、永遠なる正義という連中が討伐しています。

「この子は、利用されたの?」

「可能性は、あるけどね」

 彼女のいた場所を見ながら、考えます。

「その連中、処罰する?」

「リストの反応はありません。処罰する必要は無いですよ」

 無いけど、このままにしたくないという気持ちはあります。

 彼女も、強すぎる加護に振り回された犠牲者です。その命を奪っておいて、勝手なことを感じていますけど、ざわざわした気持ちが溢れています。

 そんな事を感じていると、前後から抱きしめられました。

「レン、サーシャ?」

 前からレン、後ろからサーシャに抱きしめられています。

「あるじ様の、やりたいように、やっても良いのでは?」

「突撃殲滅が、閣下の流儀ですよね?」

「やりたいようにですか・・・」

「もし間違えても、誰も無いも言えないですよ」

 それが一番怖い。この行為が、間違っていたらどうだろう?あの世界では、ある程度正解があったので、自信がもてた。この世界では、まだそこまでの根拠は無い。この行いは、非道だが、この世界では当たり前なのかもしれない。

「正直、今の世のなら荒れ放題です。気がつけば、後ろからバッサリですよ?」

「神がいるのに?」

「神がいても、地上は人の世界です。乱れる事は多いです」

「なら、神の使途として、神様の評判を上げるために、地上に介入する事は、問題ないのかな?」

「ついでに、評判をあげれば、問題ありません」

「いい加減な話だね」

「救えなかった命の分、出来る人がやってあげて欲しいです」

「そうかもね・・・」

 守るべき事を、守れなった少女。彼女に悪い部分もあったけど、それだけではなかったとおもう。

 私は、守るべきものがまだ解らない。異邦人で、この世界の基盤は無い。

 でもこの、理不尽な出来事への落とし前は、この血まみれの手に誓って果たしましょう。

 この世界での、自分の意思での最初の虐殺の始まりです。


 

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