旅のお約束

 ホテルの事は、ガガガーンに任せて、旅を続ける事にします。この世界で生きる人に、あまり干渉したくないので、細かい事は住んでいる人に任せます。


 元々、この世界の住人は旅をするというほど生活に余裕がありません。

 魔物のいる世界なので、城壁に守られた都市から移動するという感覚が、乏しいです。

 貴族が、王都で用事がある時に移動する必要があるので、街道はそれなりに整備されています。それ以外にも、商人も利用します。傭兵や、冒険者ギルドで依頼を受けた人もいるので、街道には色々な人が行き交います。

「何処から、目を付けられていたのかな?」

「そもそも、この地形は連中に都合が良すぎます」

「あるじ様、どうします?」

 最初の街から、次の街までの移動中、お約束に遭遇しました。

 盗賊です。

 街道を、ゆっくりと徒歩で移動していました、私達、体力と地力はあるので、徒歩での移動も苦になりません。下手な馬車よりも、移動速度は速いです。

 ただ、ゆっくり出来ないので、馬車の購入を検討中。

 その途中で、盗賊の待ち伏せを発見しました。

 林道になる手前の広場、その奥に隠れています。

 少し離れた場所に、深そうな森があります。その中に、それなりの人の気配があります。盗賊の別働隊かもしれません。気配が、隠れている連中と似ています。

「通行人を、手当たりしだいという感じじゃないよね?」

「私達を狙っている感じです。感じる視線が嫌らしい」

 サーシャが、忌々しげにそう言います。色恋関係ではないですが、女性が感じる視線というのは、敏感ですね。この感覚は、今までない物です。

 林道から、汚らわしい嫌な視線を感じます。

「女3人の旅人なんて、連中からすれば良い餌ですね」

「盗賊って、どうやって生活してるのか、気にはなるのよね・・・」

 ある程度、組織として成立しないと、盗賊なんて出来ないと思ってます。特に補給。生活物資を、全てうばうだけで、生きていけるとは思えません。

「この街では盗賊だけど、別の街では普通の人とか、距離が離れれば連絡手段が無いから、解らないものですよ」

「そうなの?」

「最悪、盗賊を支援する街もあるみたいです」

「仕入先が不明でも、商売できれば問題ないという分けですか・・・」

「どうします?」

「休暇の邪魔をする人は、皆殺しかな?」

「今すぐに?」

「一応、相手の出方をみましょう。盗賊でない可能性もあります」

「無さそうですけどね・・・」

 目的の場所まで、移動します。相手は、隠れたままです。

「素通りしても良いのかな?」

「反撃しないのですか?」

「まだ何もされてないのに?」

「この周辺、睡眠の魔法がかけられています」

「その手のは効かないから、気づかなかった。二人は大丈夫?」

「私には、神の祝福があります」

「私は、このレベルだと平気です」

「攻撃されたなら、反撃しても大丈夫。あと、慈悲はいらない」

 こちらの会話を聞いていたのでしょう。魔法が効かないとなると、眠らせる事は無理です。

 盗賊が、動き出しました。


 元々、美少女が来るという連絡を受けていたので、生け捕りにする作戦だった。

 攻撃魔法は下手だけど、状態異常にする魔法が得意な仲間がいる。

 待ち伏せして、眠らせて、つれて行く。

 いつもの仕事だと思ったけど、相手が悪かった。

 なぜか、いつもよりも体が動いた。

 全員生け捕るのは難しいけど、せめて一人は生け捕りたい。

 魔法が効かないという事は、それなりに腕の立つ冒険者かもしれない。

 それでも、数はこちらのが多いし、強さもある。

 簡単な仕事のはずだった。

 だけど、全滅した。

 何も感じない。すべては闇の中。子供たちは、生延びられるだろうか?


「さて、これはどうしましょう?」

「街まで連れて行くのも面倒ですね」

 襲ってきた盗賊は、全て消滅しました。

 粉々に砕いて、森の中。魔物が食べると危険なので、分子レベルまで分解しました。これくらいまでは、この体でも出来るみたいです。

「お前たちは、どうしたい?」

 後方支援と思っていたのは、盗賊の仲間の子供達でした。親の因果が、子に及ぶのは好きではありませんが、ここまで育った裏には、多くの犠牲があった事は事実です。

「首領たちは?」

「襲ってきた連中は、みんな殺した」

「お前たちに仲間は?」

「私達は3人だけだよ?」

 正直に答えます。どう行動するのか、興味があります。

「予定が変わったけど、お前たち!」

「それに気づかないほど、間抜けではないのにね・・・」

 木の上から、矢が跳んできます。こちらは、包囲されていました。

「あいつらを殺して、自由になるつもりだったんだ。死んでたまるかっ!」

「親じゃないの?」

「そんな事は、どうでも良い、あいつらの下で働くのはもう嫌だ!」

 だったら、まずこちらと話せば良かったのにね。攻撃した時点で、君たちに未来は無いよ。

「選択を、間違えたね」

「な、何だと?」

 そのこが最後に見た景色は、弾かれて落ちる矢と、素手で貫かれた自分の体。

「後、相手も悪かった」

 それが、最後に聞いた言葉だった。


「そっちの様子は?」

「生き残りが5人います」

「仲間かな?」

「誘拐された子供みたいです」

「人攫いの集団でしたか・・・」

 調べてみると、奴隷商人との契約書もありました。盗賊の生き残りはいません。最後に襲ってきた子供も同じです。

 誘拐してきた子供の中に、特殊な存在が紛れていました。

「君の名前は、クズノハで良いのかな?」

「はい」

 こちらをしっかりと見て、返事をする利発そうな女の子。

「言っておくけど、魔眼は通用しないから」

 この子、魅了系の加護の持ち主で、殺害リストに名前があります。

 この魔眼を利用して、盗賊たちの子供を操ったみたいです。私達も操ろうとしますし、この子、どうしましょう?

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