転生したら料理人だった・・・

 毎日毎日、私は座敷牢。

 鎖に繋がれ、嫌になってます。

 ある時見知らぬ女の子に、あっという間に殺されました。


 はずだったのですが、気がつけば見知らぬ場所にいます。

「死んだよね?」

「死にましたよ」

 目の前には、綺麗なお姉さんがいます。

「まず、最初に殴っても良いですよ」

「え?」

「全てを救えないとは言え、貴方をあの状況に追い込んだ責任は私にあります」

 綺麗なお姉さんは、女神様らしいです。死後の世界なので、女神様がいても不思議ではありません。

「貴方に授けた加護は、ある目的がありました」

 空間魔法で、特殊な空間を作り、時間を経過させ発酵食品を作る。

 それは、あの男に強制されていた事です。

「本来は、ある御方の為の物を作る為の能力です。この世界には、常に数人同じ加護を持つ物が存在するように調整しています」

 通常、女神教の信者が確保して、教会に招いているそうです。

 私の場合、父親が教会の人間でした。この能力の使い方を知っているので、教会に渡す事をせず、自分の欲望のために利用する事にしたみたいです。

 教会を通さずに、自分自身で女神様に献上する事に・・・。

 自分自身で、最高の献上品を作り上げ、女神様にお供えすれば、女神様にお会いできると信じた父は、私を隠しました。

 素材を探す途中で、ホテルの支配人と知り合いました。世間知らずだった父は、支配人に騙され、殺されていたみたいです。

 私は、父が生きていると信じていたのに、父親の命を守る為に、無理をしていたのに、この世界に神様はいないのですか?

「一応いますよ、神様・・・。私達ですけど、微妙に役立たずで張りますが・・・」

 女神様の話では、神様というのは、世界を管理する存在で、人の全てを守るものではないらしいです。

 父が、そんな事を言っていたの覚えています。完全中身がいれば、お母さんは死ぬ事は無かったと。世界は、悲しみに溢れているから、神様へ最高のお供えを用意して、少しでも悲しみを減らしたいと願っていました。

「お父さんの魂は、天国にいけたのでしょうか?」

「死者は、基本的に次の世界に行き徳を積んで転生します。貴方のお父様は既に修行を終え、新しい世界へと旅立っています」

「お母さんは?」

「お父様の魂共に転生しています」

「もう少し頑張れば、私も一緒に行けたのに・・・」

 やっぱり、神様はいません。

「地上の事は、解らなくなります。貴方がこんなに早く、ここに来るとは思っていなかったのでしょう。後悔ばかりしていたお父様は、戦いの意思を失っていました」

「なら、私も早く転生します。お父さんたちに追いつけるかもしれないから」

「その前に、こちらのお願いを聞いてもらえないでしょうか?」

「女神様からのお願い?」

「はい」

 私は、その頼みを利く事にしました。折角なので、一回だけ女神様を殴るという恐ろしい事も達成しました。

 子供の、ぺっちというパンチでしたが、女神様は吹っ飛んでいきました。何故でしょう?


「酷いと思いませんか?」

 顔の半分を腫らした女神が、目の前で嘆いています。

「加護を与えすぎましたね・・・」

 現在の私は、戦女神の使途です。亜紳扱いなので、天使の採用権を持っています。世界は悲しみ溢れ、非道な行いをする存在は、決して消える事は無い。

 それでも、手の届く範囲、届いた範囲は救いたい。

 あの座敷牢に、囚われていた女の子。普通に助けるのは、時間がかかります。その分だけ、苦しみは募ります。ならばいっその事、権限を最大限利用しました。

 殺すことで、私の使途に下のです。能力的にも、有能ですよ。まだ幼いので、先行投資です。私の休暇中は、エメラルダたちが面倒を見ることになっています。

 人と神では、色々と違いがあるので、その辺の基礎知識をじっくりと学んで欲しいです。

「このホテルに関して、好きにしても良いかな?」

「レッド様の行いを、私達が介入する事はありません」

「それなりに、この世界に影響を与える事になるけど、良いの?」

「人の営みに関しては、元々私達が介入する事では在りません」

「なら、徹底して欲しい物です」

「それでも人を愛するのが、神なので」

 そう言って、エメラルダは消えていきます。腫れた顔は、自然に治るまで治療しないそうです。罪の意識とかではなく、罰を受け入れたのです。

 愛しすぎて、加護を与えすぎて、色々とゆがんでしまった世界。

 道具屋や、トトは序の口でしょう。

「さて、どうしたものか・・・」

 このホテル、サービスはそれなりに良かったです。支配人が駄目すぎです。

 従業員に罪はないとは言え、莫大な意利益を出していたトトが消えた事で、今後の経営に多くの影響が出るでしょう。このレベルを維持するには、資金的に苦しくなるはずです。

「そうなると、別の犯罪に走る可能背があります」

「間違いなく、そうなるね」

 サーシャの意見に賛成。

「折角なので、ガガガーンに情報を流しましょう」

 支配人の行いを、国に教えます。トトの監禁に関しては、罪に問えます。父親の殺害も重罪です。教会の人間を殺しているので、教会からも攻められるでしょう。

「トトを隠した事は、支配人の悪事に加算しましょう」

 極刑にはならないとしても、ダメージは大きいでしょう。

「その女の子、死んじゃったの?」

「私が、殺しました」

「そう・・・」

 レンは、悲しそうな顔をしています。

「貴方が、何かを行った事は、関係ありませんよ」

 転移前に、女の子気配がと言ったことを気にしたのでしょう。

「むーー」

「彼女は、死んでしまいましたが、使途として私の館の料理人になりました」

「それはそれで、羨ましい・・・」

「羨ましい?」

「ずっと閣下と一緒にいられるから・・・」

「それは解りませんよ。私は、必要があれば部下に死ねと命令できる司令官ですから」

「どういう場面で、料理人に死ねという司令官がいるんですか!保護するつもり満々じゃないですか!」

 この子、色々と鋭いですね。この世界の死後でよければ、使途に加えましょう。

「閣下が、怖い笑顔で、怖い事考えている気が・・・しませんね?」

 にやりと笑いながら、今後の事を考えるのでした。

 

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