第4話転生少女の事情

 前世の記憶って知っていますか?

 私には、それが少しあります。といっても、夢も希望も無い世界の話です。

 永遠に続く戦場。そこには、勝者も敗者もありません。

 ただ、敵を討つだけの場所。

 そこに、私はいました。そこで戦死した私は、規則ののっとり、この世界に転生しました。戦場の働きしだいで、色々と特典が貰えると言う話でした。

 私は、特に目立つ功績を出していません。巨大な、レッドナイトと呼ばれる人の部下として、ある程度戦っただけです。あの上司、規格外の恐ろしい存在でした。

 上司のおかげで、ある程度の格を手に入れた事は事実ですが、二度と会いたくない相手です。災厄級の魔物の群に飛び込んで、笑いながら殲滅する戦闘狂です。戦女神様は、その様子を喜んでいましたが、私には恐怖としか思えません。

 そんな上司をサポートしていましたが、敵の襲撃であっけなく死んでしまいました。それは、仕方ありません。転生の為の儀式なので、これでいいのです。

 転生した世界は、魔物の溢れる世界でした。

 女神エメラルダ様の加護の元、人は魔物と戦っています。

 この世界の人間は、10歳になると加護を授かるみたいです。加護を授かると、それに付随したスキルに目覚めます。

 人は、それを使って魔物と戦います。

 それだけでなく、有効に使い成り上がる人も多いです。 

 ただ、加護によっては、色々と苦労する不幸な人もいます。

 私も、その1人になってしまいました。

 私の加護は試練です。最初のスキルは、強化でした。ただ、自分を強化するのではなく、敵対する魔物を強化すると言うスキルです。常時発動で、解除は出来ません。余りにも、危険なスキルと言う事で、処刑されるところでした。

 この世界、加護とスキルで人を簡単に見捨てます。

 両親は、簡単に私を捨てました。私を殺すといっていた村長に、ある程度のお金をもらい、私を引き渡しました。

 折角、あの戦場での戦いを終えたのに、この仕打ちは酷いと、女神様に祈りを込めて呪いました。

 その結果かどうかはわかりませんが、教会からお告げが会ったという理由で。王都に連れて行かれました。

 冒険ギルドに登録され、冒険者のレベル上げの道具として利用される事になってしまいました。

 王都周辺の、最弱の魔物であるスライムとだけを条件に、魔物を強化する日々を過ごしました。

 私自身は、戦闘スキルが無いので、荷物持ちとしてパーティを組まされました。

 王都につれて来られてから1年が過ぎました。

 これまでの行動で、加護のレベルが上がり、スキルが増えました。

 ただ、この内容は他の人には秘密です。

・武器装備強化 装備している武器のランクによって、敵が強化される。

・防具装備強化 装備している防具のランクによって、敵が強化される。

・道具所持強化 所持している道具によって敵が強化される。

 これだけあると、敵の強化もかなりの物になってしまいます。なので、荷物もちとして最低限の装備にしていました。

 道具に関しては、荷物持ちの仕事上、かなりの量を所持します。それでも、ギリギリ倒せるレベルでした。先日、あるスキルが発言するまでは・・・。


・クリア報酬 試練を達成したものへの報酬。ドロップアイテムのレア度が強化に比例して上昇。


 このスキルが元凶です。これにより、スライムを倒して巨大な魔石が出るようになりました。これが、人の欲望を刺激しました。

 私のスキルとは言いませんでしたが、関係あると思ったのでしょう。

 新しく、勇者というレアな恩恵を受けた少年と組んだ時、破滅が訪れました。

 この勇者、物凄く強かったです。国が、支援する為に、最強の恩恵を持ったメンバーをそろえました。まだ未熟だけど、将来世界のバランスを崩すといわれたパーティの誕生です。

 最初は、強化スライムに苦戦していました。それでも、レベル差のある魔物相手に勝利を重ねます。その都度、スキルのレベルが上がったり、新しいスキルを獲て強くなっていきました。

 その途中で、賢者が鑑定のスキルを得ました。人物鑑定で、相手のスキルの名前だけわかると言う物です。私の中の、クリア報酬を見つけられました。

 スライムを倒したときに、レア度の高いアイテムが出た事があるので、関連付けられました。このスキルがあれば、ゴブリンの持つ魔剣が手に入ると、賢者が言い出しました。

 それを聞いた勇者が、ゴブリンと戦うことを決めました。私は反対しましたが、アイテムに目がくらんだ勇者たちに強引に連れてこられました。

 その結果、パーティは壊滅です。

 鎧の人が来なければ、全滅でした。

 でもこの人、この場所に少し前にいたのに、すぐに救助に来なかったのですよ。わまりの敵を優先したみたいです。こちらの状況を気づいていたと思います。それでも、優先しなかったと言う事は、どういう思惑があったのか、気になります。


 

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