第3話転生少女との出会い

 さて、森の中で1人になりました。意識を拡散する事で、周りの存在を確認します。

 世界の基礎知識は、刷り込まれているみたいです。言語だけでなく、魔物と野生動物の知識、植物や鉱物の知識もあります。

「少しは、実践してみる」

 手ごろな魔物目掛けて、駆け出します。

 魔力で全身を強化して、魔物に接近。ゴブリンという、この世界で一番多い種族の魔物です。繁殖力が高く、知恵もあり、色々な方向へと進化する魔物。戦女神の好む試練になりやすい魔物です。

「ちょい、とう、やー!」

 殴る、蹴る、殴るの連続攻撃。魔力で強化された体に、魔力を包みこんだ鎧。

 触れるだけで、魔物は弾け飛びます。

「まだまだ、いくよ!」

 ゴブリンは、周囲に30匹いました。何かの、集団と戦闘しています。その周辺のゴブリンだけ、能力値が高いです。この世界で言う所のレベルという物が、その付近の10匹だけ倍以上になっています。

 その集団と戦っているのは、それよりも弱い存在です。5人の人間だと思います。

 すぐに助けるか悩みましたが、この世界の人間の生死に、あまり介入するのは良くないと思い、先に周辺のゴブリンを倒す事にします。

 その後で、生き残っていたら助けましょう。強さが無ければ、生きられない世界なら、その理に従います。

 全力で踏み込むと、地面が陥没するので、足元に結界で土台を作ります。あの戦場で学んだ技術は、問題なく使えるみたいです。

「レッドいざ参ります!」

 魔力で強化した体を、接近戦で叩き込む戦法を使っていました。機械に憑依していたので、ゴーレムと思っていた人もいたみたいです。人の体は弱いので、肉体だとすぐに壊れてしまいます。今回、エメラルダがくれた全身鎧は、あの戦場で使っていた機械と同じ金属で出来ています。なので、体に馴染みます。後輩のお手柄です。

 魔力を通す事で、音も消せます。動きを確認しながら、ゴブリンを確実に仕留めます。あっという間に、殲滅できました。

 この世界で、修行する必要は無いみたいです。

 違います。元々、休暇です。修行する必要張りません。休みです、遊ぶのです。折角なので、かわいい女の子を見つけて、可愛がります。自分の性別なんて気にしない。むしろ、同姓だから出来ることに挑みます。未知の領域です。楽しみなのですよ。

 新しい目標が出来たので、戦っている集団に向かいます。

 反応が一つ消えています。1人、死んだみたいです。ゴブリンの数は変わっていません。窮地みたいです。ここまで生き残ったのなら、助けてもいいでしょう。

 確認できた、人の死体の数は6です。生き残っているのは4人。

「っく、やっぱりこいつを連れてくるんじゃなかった」

「こいつを殺せば、私達だけでも助かるのかな?」

「それが出来れば、やっている!」

 不思議な状況でした。ゴブリンと戦っているのは3人です。1人が女性で、後は男。その後ろに、1人の少女がいます。荷物持ちなのか、大きな鞄を持っています。男二人が、攻撃を凌いでいますが、残った女性が、荷物持ちの少女に向けて、武器を構えています。

「だから、私言いました。戦うのはスライムだけにしてくださいって、なんで森に行くのですか?」

「ゴブリンごとき、強化されても、問題ないはずだったんだ・・・」

「畜生、みんなお前のせいで死んだんだっ!」

「無理矢理、つれてきたのに酷いです」

「五月蝿い。ギルドに戻ったら、お前は仲間を殺した罪で処刑してもらう」

「・・・」

 どうやら、この周辺だけ、ゴブリンが強いのは少女に関係しているみたいです。

「ぐぁああ・・・」

 頑張っていた戦士が、攻撃を避け損なってダメージを受けました。致命傷ではないですが、戦線の維持は難しいでしょう。

「助太刀するよ!」

 そう言って、割り込みます。強化されているといっても、問題ありません。

「覇っ!」

 高速で接近して、拳にこめた魔力を叩き込みます。

「覇っ!覇っ!覇っ!もう一つおまけで、闘!」

 連続して、一撃ずつゴブリンを仕留めます。その全ての、頭を吹き飛ばし、ゴブリンは全滅しました。

「あーー、済まない、これは想定外だった」

 吹き飛ばしたゴブリンが、荷物持ちの少女に向かって倒れたので、彼女は血まみれになっていた。

「レッドナイト?」

 その少女は、自分を見て、そう呟く。その名前、戦場での自分の通り名だったけど、偶然かな?それとも、関係者だったのかな?この子には見覚えが無いし、格

は低そうだから神の関係者でもないと思う。

「お前のせいでっ!」

 生き残った剣士が、少女に向かい剣を振り下ろす。

「仲間割れは、止めた方がいいと思うよ」

 その瞬間、私が回りこんで剣をはじきます。こんな事をしたら、天罰が下りそうです。

「助けてくれた事は、感謝するが、余計な事をしないで欲しい」

 剣士は、距離をとって、こちらを睨む。

「どうせこの子は、町に戻れば処刑される。今ここで、俺の手で始末したい!」

 仲間を失った反動で、冷静な判断が出来ていないのだろう。

「私は、悪い事はしていません。処刑なんてなりません」

 震えながら、少女は言います。血まみれなので解りにくいけど、中々可愛い子だと思います。色々と、面白そうな予感がします。


 倒したゴブリンの素材は、自分がもらう事になりました。死んだ冒険者の遺体は、必要な物を回収した後、その場に埋葬しました。全てを持ち帰るのは不可能だったので、仕方ありません。

 血まみれの少女の事は、街に戻ってからとなりました。行く当ても無いので、一緒に、その街まで行くことにします。良く見ると、この子何処かで会った気がします。どこかというと、戦場しかありません。転生した部下の誰かかもしれませんね。話を聞くのが、楽しみです。

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