最終試験 本当の開幕
俺たちがゴールに到着すると、順位は3位だった。思いの外高い順位だったのでラッキーである。
結果は以下の通りだ。
1位 Aクラス
2位 Bクラス
3位 Eクラス
4位 Cクラス
5位 Dクラス
これによってクラスポイントも加算される。その合計ポイントは以下の通りである。
Aクラス 176
Bクラス 143
Cクラス 46
Dクラス 14
Eクラス 44
Cクラスに追いつき始めたが、Aクラス、Bクラスとの差は圧倒的である。
今回の試験でどれほど差を詰めれるのか、そこが肝になるかもしれない。
俺は正直、今回の試験ではそれほど差を詰めなくても良いと思っていた。まだ時期が早すぎる。そう思っていたのだ。
しかし、Eクラスの成長ぶりを見て、その考えは変えざるおえなくなっていた。もう十分なのではないだろうか。
さらに彼らを成長させるためには、追われる立場を意識させること。そして、Aクラスを目指せると思わせること。その2つが重要になりそうだ。
そのためにも、今回の試験では圧倒的な差をつけて1位を取らなくてはならないのである。
12時になって動きが見られた。どうやら試験が始まるらしい。
「全クラスの脱出ゲームが終了いたしました。これより1学期最終試験を行います。各クラスごと、指定された部屋に入室してください」
Dクラス担任の
俺たちはその指示通り、Eクラスと書かれた部屋へ入室する。
入室してからしばらくして、三嶋先生と思われる声の放送が流れる。
「これより試験が始まります。それにあたって、解答者を決めてください。ただし、選んでいいのはプレイヤーの中から1名のみです。30分間で決めてください。なお、その間は教室にいる生徒とビデオ通話で相談しても構いません。それでは始めてください」
さて、どうしたものか。
この場の5人で決めるなら俺が解答者として試験に臨めたのだが、教室の意見も加味するとなると話は変わってくる。
そんな風に思っていると、目の前にあったスクリーンに教室の黒板が映し出された。
その前には陽と新名、あと赤城と真中、ついでに江口の姿も見える。
いざ話し合いをしろと言われてもなかなか始まらない。そんな中、意外にも赤城が最初に話し出す。
「っつーかよ、教室にいるほとんどのやつとか何もしてなくないか?プレイヤーの中から1人とか…そいつに俺らの運命委ねなきゃいけないのかよ」
それに対して反応したのは村田だった。その次に柊も反応する。
「この試験はあくまで全員参加だと思うよ。ただ、解答者が1人ってだけだよ。みんなで答えを考えるんじゃないかな?」
「まだ確信はできないけれど、その可能性は高いわね。できれば他の人の意見も聞きたいわ。頼めるかしら?」
「うん、まかせて」
今までのようにリーダーの2人で決めるのではなく、全員の意見を聞いていくようだ。時間は30分もあるし、十分だろう。
それに、これもいい成長だ。
こうやって団結していけばどんな困難にも立ち向かうことはできる。ただ、それが実るかどうかは運と実力次第だろう。
そうして20分の時が経った。もうそろそろ解答者を決めたい所だが、その答えは未だに出ていない。
そして、それから5分が経ってようやく結論が出る。
「解答者は、学くんに頼んでもいいかな?」
それが話し合いの結果だ。
正直、話し合いの内容はほとんど聞いていなかった。1位を取るとは言っても、こいつらの成長を促すのに俺が入る必要はない。
もし俺が選ばれなくても、それなりに参加できるのならそこで尽力すればいいと思っていた。そう思えるほど、このクラスは変わったのだ。
まぁ、俺が選ばれたのならそれはそれでいい。だが、その理由を知りたかった。
「みんながいいならそれでいいんだ。ただ、一応理由を聞いてもいいか?」
俺がそう聞くと、その質問に赤城が答える。なんか意外だ。嫌われてると思っていたのだがな。
「この意味わかんねぇ暗号とかのやり取りは、全部お前がしてたんだろ?それに、矢島を変えたのはお前だと聞いた。正直、お前がこいつを変えてなかったらこっちは大惨事だったわ…。んで、お前みたいに影ながら頑張ってる奴に託してぇって思ったんだ。なんか文句あんのか?」
矢島の奴、喋ったのか?詳細は喋ってないみたいだから良いんだが、赤城も成長したもんだ。少し前だったら、自分の感情で物事を決めていたように思える。それがこんな風になるなんてな…。
「いや、なら引き受ける。なぁ赤城」
「…なんだよ?」
「今度寿司でも食うか?」
「…おめぇの奢りなら考えてやるよ」
「わかった、それでも良い」
こうして試験の時間を迎えるのだった。
ついに始まった試験。解答者の俺は、1人で別の個室へ入った。目の前にはタッチパネルが置かれ、それ以外は俺が座る椅子だけだ。
そこで三島先生から放送でルールが説明される。
「試験の内容の説明です。皆さんには真剣最弱を行ってもらいます。画面を見てください」
俺は目の前のタッチパネルへと視線を移す。
目の前の画面は6分割されていた。それぞれの画面に54枚ずつのトランプが並べられている。
「これらの6組のトランプがそれぞれ混ざり合っていることはありません。皆さんにはこれら全てのカードを2分以内に覚えてもらい、その後12分以内に解答してもらいます。正解していた数に応じて、もらえるクラスポイントが決まります。ワンペア正解につき、1ポイントです。また、順位によってもクラスポイントが獲得できます。その配分は脱出ゲームの時と同じです。なお、ペア数が同着の場合は、間違えの少なさやスピードで判定を行います」
つまり、6組全てのカードの324枚の位置を2分以内に記憶していかなければならないということになる。
そして、やはり今回はかなり大きなポイントがもらえそうだ。
全てのペアを当てれば162ポイントがもらえる。さらに、1位を取れば50ポイントなので、最高で212ポイント。これまでのことを考えると、かなりの量だ。
「ルールは簡単です。解答するのは1名ですが、教室の生徒と他のプレイヤーの生徒もカードの記憶に挑戦できます。ですが、それぞれ見ることのできる画面は3画面のみです。解答者の生徒は全ての画面を見て覚えることができます」
なるほどな。俺は6画面全て記憶することができるが、それ以外は3画面しか記憶することができないのか。
教室で1〜3の画面を見て、プレイヤーが4〜6の画面を見る。そんな感じのことができるってことだ。
「教室側とプレイヤー側、合わせて5回まで解答者に答えを教えることができます。それ以外の答えは解答者が自力で解答してください。なお、一度間違えると再度その解答をすることはできません。気を付けて解答してください」
ややこしくなってきたな。とりあえず、間違えることはできないってことだか。あと、5回まではヒントをもらえるのか…。まぁ必要になったらもらうことにしよう。
「最後に10分ほど話合いの時間を設けます。その後すぐに試験がスタートするので、準備をしてください」
三嶋先生がそう言った後、すぐにビデオ通話に切り替わる。すると、すぐに陽が俺へと確認を取った。
「学くん、この試験だけど…いけそうかい?」
俺はそれに迷うことなく答える。
「記憶力には自信があるんだ、結構いけると思うぞ」
俺がそう答えると、陽は安心したように「うん、わかったよ」と言った。他の生徒もいくらか安心できたようだ。
「とは言っても、私たちが覚える必要もあるのよ。とりあえず、覚える画面を決めましょう。こちらのプレイヤー側では4〜6の画面を暗記するわ」
柊が陽とコミュニケーションを取っている。他のみんなも、真剣にその内容に耳を傾けていた。
「わかった。なら僕たちは1〜3だね。こっちは人数が多いから結構いけると思うよ。後でそれぞれ役割を決めるからね」
陽が俺の責任を軽くしようとそう言ってくれる。だが、そんな心配はいらない。信じてもらった以上、やるべきことはやるつもりだ。
今回の試験で、俺は力を出し惜しみはしない。
記憶が良いくらいなら、俺みたいな奴が持っていてもおかしくはない特技だからだ。
それに、俺の力をある程度解禁しておくことで、今後俺が試験に関わらなくなっても責められないようにしたいのだ。「あいつは記憶が良いから他のところで役立ってくれる」そんな風に思ってもらえるとありがたい。
「お前たちが託してくれたこの仕事、俺がなんとしてでもやり遂げよう。生憎、俺は記憶だけはできる。それだけは誰にも負けないからな」
俺はそう言った後、大きく息を吸う。
「約束しよう。俺はこの試験をノーミスでクリアする」
そう、宣言したのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
思いの外、かなり長い試験となってしまいました。
この短期間で、学とその周りの関わり方、そしてEクラスの雰囲気などなど…大きく変わってきましたね。
次で1年生1学期編は最終話です。
その次は、夏休み編 でちょっとした休憩を挟んだのち、1年生2学期編 体育祭編 へと話が進んでいきます。
もう少し話のテンポを上げられるように頑張りますね。
日頃から皆さんの応援が僕の力になっております。本当にありがとうございます。
あと、新作の方が出ました。
「天才の俺にラブコメは向かない。」というタイトルです。
こちらの方も読んでいただけたら嬉しいです。
これからもご愛読の方、よろしくお願いします!
かさた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます