ついに夏休み、そして新たな試験へ

 束の間の休息を終えて、普段の日々が戻ってきた。


 そういえばあの後、矢島のことについて散々聞かれたが、一方的に絡まれたということにしてとりあえず追及は逃れた。

 矢島には悪いが、特に気にすることもないだろう。



 そんなわけで、俺はやっと訪れた平穏な生活を堪能する毎日を送っている。

 特に変わったことはない。と言いたいところだが、何故か隣の新名がよく絡んでくる。

 まぁ彼女のことは嫌いではないから、別にいいのだが。


 あと変わったことといえば、村田とよく話すようになったことくらいだろうか。






 学校側が期末テストで何かを仕掛けてくると予想をしていた俺たちだが、そのようなことは一切なかった。


 とは言っても、赤点を取れば退学というルールは一応設けられていたようだ。しかし、それ以外に特に変わったこともなく、試験と呼ばれるようなものも存在しなかったのだ。


 このまま夏休みまでこの毎日が続けば良い。そう思っていた生徒も少なくはないだろう。実際に、その願いは叶ったと言っても良いと思う。

 しかし、この毎日はから、突然の終わりを迎えたのだった。





 夏休みという長期休暇を利用して大規模な試験を行う。そう伝えられたのは終業式終了後だった。


 担任の中村紗江は驚くEクラスの生徒を見渡し、試験の内容を伝え始める。


「もう一度言うが、この夏休み期間を利用し、君たちには大規模な試験を行ってもらう。とは言っても、試験としては今までやってきたこととそう変わりはない。ただ、君たちにはゲームを行ってもらう」


 ゲーム。それは一言で言えてしまうが、その種類や方法は多種多様だ。結局のところ、何をするのかが全く説明されていない。


 だからだろう。説明不足だ、と言わんばかりに江口が騒ぎ出す。


「い、いや〜ちょっと先生?それじゃちょっとわからないっていうか…そのー。結局俺らは何をするんすか?」


「脱出ゲームだよ。だが、ただのゲームではない。まぁ詳しいことはこの紙に書いてある。とりあえず配るから江口、お前は座れ」


 その言葉で江口は黙り込んで座った。それと同時に先生から資料が配られる。そこに書かれている内容はこうだ。




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 夏休みの3日間を使い特別試験を行う。その間、原則的に帰宅は認めない。食事、飲み物、着替えなど、生活に必要なものは学校側で用意する。



ゲーム内容


脱出ゲーム。


 各クラスはプレイヤーを5人選ぶ。男女の比は問わない。

 その5人はプレイヤーとなり、ゲームの攻略に挑むことになる。

 プレイヤーになった生徒は目隠しをされた状態で、ある施設の部屋に送り込まれる。

 教室にいる他の生徒と協力して、その施設からの脱出を達成すればゲームクリアとなる。


 行動できるのは朝の8時〜夜の8時まで。

 その間にチェックポイントとなる場所を探し、そこで寝泊りをすることになる。


 もし見つけられなかった場合は、前回のチェックポイントへ強制的に帰される。

 トイレは様々な場所に設置されているため、そこで済ますように。


 教室の生徒とプレイヤーの生徒のコミュニケーション方法は、メールによって行われる。

 試験の当日に学校側が用意した携帯とカメラをプレイヤー側に一台ずつ配布し、教室にはパソコンを一台配布する。

 それらがこの試験での唯一の連絡手段である。私物の携帯の使用は一切認めない。


 教室側には、試験の当日に脱出までの道のりが記された資料やチェックポイントの記された資料が配布される。

 それをもとにプレイヤーを導くことになるが、この時、直接的に答えを与えてはならない。ヒントとなるように助言をすることが条件である。

 また、わかりやすいものでヒントを出すことも禁ずる。その判定は学校側で行い、もし条件に合わないものがあれば、再度メールの内容を思考せよ。



 今回の試験では退学者は出ない。そのかわり、クラスポイントの変動は大きくなる。

 また、順位は脱出した時点のタイムで競うことになる。



以下が順位によるクラスポイントの変動である。


1位 50

2位 40

3位 20

4位 10

5位  0


 途中で試練を出されるポイントがある。

 その試練をクリアするごとにポイントが1追加される。

 試練は全部で15個用意されている。



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「…とまぁこんなところだ。何か質問はあるか?」


 資料を読み上げて、そう尋ねる中村先生。しかし、今回の情報は圧倒的に多い。その処理が追いついていないのか、誰も手をあげることはなかった。


「何もないなら続けるぞ。試験は明明後日からだ。それまでに、ちゃんとプレイヤーを決めておけ。もうすでに試験は始まっているんだ。気を付けろよ」


「少し良いですか?」


 そこでようやく村田が手を挙げる。それを見た中村先生は、村田に向かって首で合図を出した。


「この施設では他のクラスも同じように試験を受けるのですか?」


「いや、他のクラスは別のところで試験を受けている。だが、作りはどこも同じだ。全てのクラスを公平にするために、な」


 その後、それに続く質問が投げかけられることはなかった。



 今回の試験、本質を見抜ける者はどれほどいるのだろうか。


 今回の試験は、思っている以上にクラスポイントの変動が大きくなるのかもしれない。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


しばらく出せてませんでした。すみません。


新しい試験がスタートします。とりあえずは、学の活躍に期待してください。


かさた

 







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