束の間の休息 その3

 桐崎南が苦戦を強いている中、女子会会場とは遠く離れた席のフードコートで、男子会が行われていた。


 女子会とは違い、かなりギスギスとした雰囲気が漂っている。


 その元凶であろう人物は、もちろん赤城翔也だ。


「たーっくよぉ。なんでうちはこんなにも陰キャが多いんだぁ?」


 俺のことを視界に捉えつつ、そう赤城が毒づく。このクラスは確かに大人しめな人間が多い。が、それほど陰キャというわけではない。


 もし陰キャという枠組みに当てはまる奴がいるとすれば、工藤直矢くどうなおや鈴村幸樹すずむらこうき、それと俺くらいだ。


 工藤と鈴村も自分が陰キャと感じているのか、赤城にはビビりっぱなしである。どう考えても俺に向けて言っているというのに…。

 なんか、ごめんなさい。



 しばらくその陰キャいじりが続き、その後の話題は今回と前回の試験になった。


 俺がどちらにも関わっている事に疑問を抱いている、というよりかは、矢島叶助という男についての話だ。



「矢島くんについて、みんなはどう感じているのかな?」


 クラスのリーダーとして、矢島のような存在は大きな懸念材料なのだろう。いつもより、やや真剣な顔でそう尋ねている。


 赤城はその質問に対し、怒りをあらわにしながら答えた。


「あいつの名前出すんじゃねぇよ。聞くだけでイラついてくるぜ」


 それを聞いた村田は困ったような顔をしたが、その乱暴な言い方に対して特に何か言うことはなかった。

 それもそうだろう。赤城は初め、それほどクラスに協力的ではなかった。それがここのところずっと、他の生徒に比べれば微々たる物ではあるがクラスには貢献している。

 矢島と比べれば、赤城はそれなりにやることはやっているのだ。


 まぁその主な原因は、村田や咲といったクラス内でも大きな力を持つ敵がいることだろうが、Eクラスに見た目の良い女子生徒が多いことも原因の一つかもしれない。と言うよりも、こちらの方が主な原因である可能性が高くなりつつある。


 その理由としてあげられるのは、先程の赤城の俺への態度だ。

 他の男子も、赤城と同じような理由で協力している可能性もある。


「…他に、何かないかな?」


 村田はダメ元でもう一度尋ねたようだ。しかし、その問いに反応する者はなかなか現れない。


 赤城の一言、それこそがEクラス男子の総意である。

 そう思ったが、1人だけ手を挙げて発言する者が現れた。


「はいはーい。俺的には、逆にあいつを利用するのがいいんじゃねぇかなぁー。みたいな?そんな感じに思ってまーす」


 だいぶチャラチャラした感じではあるが、決して江口智也ではない。発言したのは山口大和やまぐちやまとである。


「あぁん?どういうことだよ?」


 喧嘩腰で山口に絡む赤城。山口はその迫力をものともせず、言葉を続ける。


「俺ってばマジシャンを目指しておりまして。まぁこんな感じですね。ほれっ」


 そう言うと、何も持っていなかった山口の右手から、数枚のトランプが出てきた。

 それを見た俺たちがそれに驚く暇も無く、山口が話を進める。


「と、まぁこんな感じなんですけどね。俺はこれを結構幼い頃からやってるんですがー、これのおかげで俺ってば嘘をつくのも見抜くのも得意になったんすよねぇ」


 山口が何を言いたいのか、それが理解できている者ははっきりと言っていないだろう。村田は、山口のしている話の意図口を掴むために質問をした。


「つまり…、どういうことだい?」


「えーっとですね。つまるところ、そんな俺だから矢島のことは信用できるってことっすよ。あいつからは全くと言っていいほど嘘の匂いがしないっす」


 言いたいことはわかった。が、それでEクラスの全員が納得するかと言われればそうでもないだろう。


 確かに山口の意見は当たっている。

 矢島は器用に言葉を選んで、嘘をつくことなく、真相を隠しながら全員を納得させていた。


「…理由があれだが、俺もその意見には大方賛成だ」


 そう言ったのは意外にも真中りんだった。俺のイメージではかなりの保身家だったのだがな。意外だ。


「今度はお前かよ。お前にはちゃんとした理由があんのか?」


 赤城の鋭い目を真正面から受け止めた真中は、ゆっくりとした動作で席を立ち、話を始める。


「俺はあいつの言うことは、信じてみてもいいと思っている。理由は簡単だ、前回の試験で彼が言っていたことがちゃんと当たっていたからだ。彼は気まぐれで、クラスに貢献をしてくれるかははっきりとしない。それでも、利用する価値はあると思う」





 その意見がきっかけとなり、多くの意見が殺到する。数分の間、村田、真中、赤城、山口、時々江口といったメンバーが中心となって話し合いが加速していた。


 やっと中身の詰まった具体的な話し合いになってきた。そう思ったのも束の間、今度は俺に話が振らることになる。


「桜井くんはどう思うのかな?多分、彼と一番関わっているのは君だと思うんだ」


 そう言われても…正直困ってしまう。


 ここにいる奴らは知らないだろうが、俺は実際に矢島話したことなど無いのだ。




 やれやれ、どうやって誤魔化そうか…。




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短くてすみません。

これから勉強に集中していきます。

多分3週間くらいです。その間もちゃんと書きますよ!



ですが、投稿頻度が落ちるかもしれません…。


本当にすみません…。



かさた

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