Eクラス退学危機 その1
ホームルームが終わり放課後となった。
本来ならすでに帰宅している生徒もいるのであろう。
しかし、このEクラスにそのような生徒は存在しなかった。たった1人を除いて、だけど。
先生が退出し、ピリついた静寂が教室を包む。そして、その静寂を破ったのは金髪でオールバックの男子生徒だった。
その男は勢いよく立ち上がると、荷物を持ってドアに手をかける。
しかし、それを銀髪イケメンの村田が止めた。
「えっと…どこにいくのかな?」
「君に関係あるのかい?」
「あるよ、同じクラスじゃないか。それに僕らは1ヶ月後に退学してしまうかもしれないんだ。今は少しでも多くの知恵が欲しい。一緒にどうすれば退学しないで済むか、考えてくれないかい?」
そう優しい微笑みで頼む村田に対し、金髪のオールバックは小馬鹿にした様で笑って答えた。
「フッ、考えるも何も退学の心配なんていらないさ。これはeasyゲームだよ。まぁ誰かがなんとかしてくれるさ。私はそれを待つよ」
そう言って、彼は俺の目を見る。なるほど、こいつも気が付いたのか。
確かにこれは簡単な試験だ。オールバック君は的確なことを言っている。
しかしそれに気が付いたのは、どうやら俺と彼の2人しかいないらしい。
意味が理解できないのか、村田はオールバック君に問いかける。
「それはどういうことかな? えぇっと…」
「
「いや、僕の下の名前、陽なんだけど…」
「そんな細かいことは気にしなくていいのさ、太陽君。まぁ、君の質問の答えは1ヶ月後にわかることさ。それまで待ちたまえ」
そう言って矢島は教室を出て行った。
あいつが解決することを期待するのはやめたほうがよさそうだ。
さて、このクラスはたどり着くだろうか。先生が示していた試験の答えに…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
遡ること約20分前。
「君たち欠陥品に最初の試練を与える。さぁ、1ヶ月以内に退学を回避してみろ」
先生がそういうと、クラスが騒々しくなった。しかしここで挙手する人物が現れる。
皆さんご存知、銀髪イケメンの村田君である。
「先生、退学を阻止する具体的な方法を教えてください」
「それくらい考えろ、と言いたいところだが、今回だけは特別だ。教えてやろう。」
その解答に江口が食いついた。
「ま、まじすか⁉︎ なんすか⁉︎ 早く教えてくださいっ!」
「まぁそう慌てるな」
そう言いながら、先生は準備していた資料を配り始めた。
「まず、君たちは学校側から評価されることになるが、それが目に見える形で反映されるのがクラスポイントだ。手元にある資料を見ろ」
そう言われて手元に視線を落とすと、プリントには「クラスポイント マイナス一覧例」と書かれていた。
「それはクラスポイントのマイナス例だ。そこに書かれている行為をした場合、クラスポイントがマイナスになる可能性がある。ここにあるのはあくまで一例だ。書かれていないこともマイナス対象になる場合があるから気を付けろ。まぁ、全ては学校側と私の独断と偏見だよ」
すると、先生はここからは大切な話だ、と言わんばかりに手を叩いて注目を集めた。
「ちなみに、退学の危機が迫っている君たちのクラスポイントはマイナス100だ。そして、君たちが退学の危機を免れる唯一の方法、それはこの低い評価を変えることだ。しかしまぁ本当にギリギリだな。最低評価はマイナス120だぞ? ここまでのクラスは初めてだ」
資料を片手にケラケラ笑う先生に対し、暗い表情を浮かべるEクラス。
重い空気の中、ここでもまた質問をしたのは村田だった。
「先生。なぜマイナスの例を出して、プラスになる例を出してくれないのですか?」
その質問に、すかさず先生が答える。
「そんな例を出したらつまらないだろ? マイナス例を出したのは、私の優しさだよ。くれぐれも間違いだけは犯さないようにな、そんなことをしたら退学へまっしぐらだぞ?」
そう言うと、先生は周りを見渡し他に質問がないことを確認する。
特に無かったので、ここで初めてのホームルームはお開きとなった。
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そして時間は今に戻る。
矢島が教室を出て行ってしまったが、話し合いは行うようだった。
もはやクラスのリーダーになりつつある村田陽が教卓の前に立ち、話し合いを進める。
「矢島君には彼なりの考えがあるみたいだけど、ここにいる僕たちは意見を出し合って、意見を共有し合おうと思う。それでいいかな?」
その提案に対し反抗したのは赤髪の男だった。
「っけ、んな事したって意味ねぇーだろ。どうせ退学だ、退学。今更足掻く必要なんてねぇよ」
するとすかさずそれを注意する者が現れた。馬鹿だな赤髪君。このクラスにはあいつがいるんだぜ!
そう、その人物とはショートヘアの咲という女子生徒である。
「赤髪君、そういう自分勝手な発言が他人に迷惑をかけるの!わかってる?」
「あぁん?またオメェかよ。いちいちうっせーな。ブッ飛ばすぞ?」
両者の間には火花が見える。うっわぁあ、バチバチだぁあ。
「2人とも、やめようか」
そう言って止めたのは、お馴染みの銀髪イケメン、村田君だ。いやぁ、流石っすね!
なんだろう、この安心感。安心安心、安心すぎて眠れるまである。いやそれは安眠。
とかバカなこと考えている間に話が進む。
「赤髪君、今回ばかりは彼女が正しいよ」
村田がそう言うと、赤髪君はすぐさま村田を睨んだ。
「女の味方か?やっぱイケメン様はちげぇな」
そんな言葉に苛立ちを見せず村田は答える。
「そんなんじゃないよ、僕は君のために言っているのさ。ここにはね、この学校に夢を持ってきた者や、叶えたい人がいるんだ。君のくだらない行動ひとつでここにいる30人の人生を台無しにするつもりかい?もしかして君には30人分の人生を背負う覚悟があるのかい?」
「っそ、それは…。ちっ、わかったよ。協力してやる」
「ありがとう!」
うん、見事だ。村田陽、かなり使える人間かもしれない。
「他に反対の人はいないね?それじゃあ自己紹介から始めようか。じゃあ僕からやるよ。僕の名前はーーーーー」
こうして始まったクラスの話し合いは有意義なものとなった。
しかし、
この試験を乗り切る有力な手段は見つからないまま、4週間が過ぎてしまうこととなる…。
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