第12話ㅤ包み込めるような
「でもあの時の男の子はそんな綺麗な金髪じゃなかった」
「ちょっと薄汚れてたからね」
ノノアントの″綺麗な金髪″発言にちょっと照れくさそうにユーリスは笑う。
あの時の男の子の名前をノノアントは記憶に留めていなかった。
屋敷でユーリスと会った時もそれがノノアントにとって初対面で、もしあの時、男の子の名前を覚えていたとしてもユーリスがあの男の子だとは繋がらなかった。
だからいろいろと幼い頃からすれ違いがあったのかもしれない。最近のことだとパンの件。何がそんなに思いれ深いのかと不思議に思ったものだ。
思い出してみれば納得がいく。
(確かにいえるのは、あの時、ユーリスは私を救ってくれた)
ーー『でも僕には今日が輝いているようにみえるよ』
もう終わらせようとしていたのに、偶然出会ったユーリスがそれをとどまらせた。
おかしな発言だったけれど心からの言葉だということが伝わってなんだか彼の傍にいれば自分も世界がいつかそう見えるのではないかと期待した。
ユーリスに今までずっと疑問に思っていたことを聞くと、騎士の訓練を受けたのは十年後ーーノノアントが大人になった時″外へ出る″と言うのではないかと心配になったからだという。
『自分はこんなんじゃ一緒について行っても下手したら足枷になるだけ』『力をつけていつでも職につけるような男にならないと彼女について行けない』と思い、騎士の訓練所に行きたいとルナの両親に話し行かせてもらったと。
伝えなかったのは驚かせたかったから。のと、少し距離をとった方がいいと思ったから。の二つらしい。
ノノアントの瞳はユーリスを映していたが、完全には映していなかった。
自分が大人になって瞳に完全に映るような存在になってできるなら唯一の存在になりたい。
全てをわかってあげられて包み込めるようなそんな大人に……。
その願望がユーリスを成長させた。
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