第11話ㅤ少女の記憶
「あげる」
女の子は路上にいた少年にパンを差し出した。
不意打ちをくらったように驚いた少年は差し出されたパンを見てから女の子を見、いいの? と問う。
女の子は肯定するかわりにずいっと顔の前までやってきたので少年はそれとなくそれを受け取った。
手元に収まったパンを見ている少年。女の子が立ち去ろうとすると少年は何を思ってかとっさに手首を掴み「まって」と呼び止める。
何用かと女の子が不思議に思いながらも次の言葉を待っていると、少年はなぜか渡したパンの半分をちぎって差し出し返してきた。
女の子には考えられない行動だった。
「なんで? いらないの?」
「……一緒に食べよう」
ーーもう生きていたって仕方がない。だったら明日へ繋げるこれを誰かに差し渡そう。
そう思って丸々渡したのに。
女の子は少年の懇願を受け取り、隣合って半分のパンを食べた。
「どうして僕にパンをくれたの?」
「……なんとなく。目に入ったから」
近くに人がいても、女の子の瞳に誰かが映ることはなかった。
パンを貰ったときだって、女の子の瞳には人は映っておらず、女の子にはパンだけが見えていた。
気づいたら手元にあったパンを見て、″もういいや″って思った。
こんなパン一つがあって喜んで、なくて苦しんで。
簡単に苦しめるこの世界で生きている意味が果たしてあるのか。もしかしたら″終わらせてしまったほう″が楽なのではないか。
だったら誰かにこの生命の手綱となるであろうものを渡そう、と路地裏を歩き人を探したが女の子の瞳に人が映ることはなかった。
自分と同じ人はたくさんいると信じていたのに。
けれどなぜか少年だけは違った。瞳にちゃんと″映った″のだ。
「君の名前は?」
「ノノアント」
「いい名前だね。僕はユーリス」
取り留めもない話が始まった。
名前はなぜかどちらも覚えていて、そのことについて疑問を抱くことはなかった。
「……今日はいい天気だね!」
「そう? 雨降りそうだけど」
曇り空で今にも降りそうな雨。それは女の子の心情を表しているようで。
「でも僕には今日が輝いているようにみえるよ」
少年の言葉は女の子には意味がわからなかった。
違う。わからないふりをして、早く人生を終わらせたかった。
その後、雨が降ってきて雨宿りできる場所に移動してそこで女の子はとある女性にあって車で屋敷に連れられて。
お風呂に入れられ綺麗な着物を着せられ部屋に案内され。少ししてある男の子が部屋に入ってきて、その男の子は嬉しそうに話しかけてきた。
ーーノノアント。
男の子がなぜ自分の名前を知っているかわからなかった。
初対面の綺麗な金髪の男の子がなぜ自分の名前を知っているのか。
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