第14話朝の話①発表しながら聴き手の様子を感じる力を育む

 先生が、「自己紹介をします。」と話し始めた。

もうみんなの名前も分かった今、自己紹介なの?

何人かそんな顔をしている。

そんな反応が出るのを予想していたのだろう。

先生が

「なぜ、自己紹介かと言うと」

と言って、みんなを見た。

俺は聞いていたけど、もっと聞いてほしいのかと思い、背筋を伸ばしていた。

みんなもそう思ったのか、グッと体を乗り出した子もいた。

それを見届け、先生は、

「当番の時、帰りの会で話をしてもらいます。」

と言った。

なぜ、急にそんな話をするの?と思うと、

「聞き手と思いを共有する話し方には、大事な事があります。

それを身につけて欲しいんです。」

と言い出した。

何を言っているの?と思っていると、

「思いを共有する話し方ができれば、みんなでわかり合うことができる。

それは、みんなの授業像を達成するための重要な力だと思う。

その力を身に付けるのには、とにかくやってみる事、真似してみる事。

わかってきたら、少し変えてみる事。

それによって自分の力になる。」

と言った。

真似していいなら、みんなやれるんじゃないかなあと口を尖らせながらも俺は頷いていた。

そんな俺達を見ながら、先生は、

「話の流れを真似するだけでは、本当に力をつけたことにならないんだ。」

と言った。

俺は、何を言っているの?と思った。

みんなも怪訝そうな顔をしている。

ちょっと目じりをたれながら先生は、

「話しながら、聴き手の様子を感じる力をつけてほしい。

だから、話が上手になるだけでは力をつけたことにならない。

聴き手のわかり方や困ったところ、誰が分かり誰が分からないかを感じることが出来るようになる。」

そこまで言うと、『発表しながら聴き手の様子を感じる』というカードを黒板に貼った。


貼りわると、それを指さしながら、

「これができることによって、思いを共有し、みんなでわかり合える授業になる。」

と話した。

続けて、

「だから、話す内容は、簡単で誰でも工夫できるものにしようと思ったの。」

と言ってみんなを見回した。

何か、息がふーと抜けた気がした。

黒板を見ながら、本当にできるのかなあ、そんなことという思いが頭の中に湧いてきた。

みんなもそんな感じだ。

それを敏感に察知したのか、先生は、

「大丈夫。いい考えがあるから。」

と話を終わった。

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