第13話 魅力的なキャラクター
描ききった。私の全身全霊の力でこの絵を完成させた。この絵は絶対評価される。
「よし」
そういったみらいの頬は赤みがかっており、息も多少荒い。
絶対行方やほかの患者さんも喜んでくれるだろう。そんな自信があった。
「よし、さっそく届けましょう」
みらいはパソコンを開き、『行方先生へ。みらいです。……』とメールを打つ。
そして、そこに添付ファイルとして、命を削って書いた絵を添付し、『送信』ボタンを押した。
画面には『送信完了』という文字が浮かび出る。
そして、それからすぐ、行方から返信が来た。
『確かに受け取りました。確認したところ、とても素敵な絵でした。病室に貼らせていただきますね。本当にありがとうございました』
そんなやりとりを一通り終え、みらいはフッと息を吐く。そして、しばらく行方に送った画面を眺めていた。
そこで、みらいは思うことがあった。たくさんの人に早くこの絵を見てほしい。この魂を燃やして描いた絵を。そして、感想が欲しい。そう『上手だね』という感想が。今思うと、この時のみらいは焦りすぎていたのかもしれない。
その所以として、みらいはあることを閃いた。
「そうですわ、ネットに投稿してみましょう。ふふっ、伸びて大手になったりして」
そうみらいは、完全に自分の美に酔いしれていた。
みらいはYUHOOを開くと、検索画面に2525静画といれ検索ボタンをクリックする。
ちなみに2525静画というのは、国内でも最大規模の静画、つまりイラストの投稿サイトである。
そこは、プロの漫画家さん、プロのイラストレーターさんなども積極的に投稿しているサイトであり、アマチュアだとしても新人賞を取りプロになる予定の卵たちがわんさかいる。
そう、ここの世界はとてもレベルが高い。
もしこの中で、イラストの人気ランキングに乗りでもすれば、他のイラストを書く人間からの崇拝は持ちろん、クライエントから指名を受けイラストの仕事にもつながる。
ここは、己の絵というものを武器に戦を行う場だ。
「……あら?」
そんな2525静画だが、みらいはあるものに気づいた。
「……新人賞?」
みらいが気づいたのは新人賞の広告。とりわけ、最大手のレーベルの新人賞だ。
どんな新人賞かというと、新しく出るライトノベルの挿絵や表紙、キャラデザを任されることになる。
応募用紙には、こう書いてあった。
――『魅力的なキャラクターを描くこと』
とりわけ、以下、このように応募事項には書かれている。
『どんなキャラクターだろうと、魅力的であれば、読者の視線をひきつけ、物語に引き込む絵なら何でもいい』と。
しかし、みらいはそんなこともつゆ知らず、受かることしか眼中になかった。
ここに受かれば、夢のイラストレーターになれる。そう思ったみらいは、今書いた絵を投稿しようと決めた。単純に、自分の力を試したいという気持ちと、私のこの絵ならどんな絵よりも魅力的だという自負をもって。
ただし、この新人賞は厳しことで有名だった。心を抉るようなコメントが飛び交うことで。
一つこれを知らなかったのは、みらいの粗忽なのかもしれない。
しかし、みらいに今の行動がどんだけ粗忽かはわからなかった。なぜなら、みらいは絵を完成させたという満足感、高揚感でいっぱいだったからである。
そんな高揚感を胸に、自分が描いた絵をアップロードする。
そして、ポチっと応募画面に必要事項を入力し、応募を完了させるのであった。
一週間後、今日は結果が出る日だ。
この日を、まだかまだかと待ちわびた。本当に夢への第一歩が今日なんだ。
「ここから私の物語が始まるんだ」
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