第45話 大森林開拓記 4

 大森林二日目。

 持ってきた食料で軽く朝食を済ませた俺たちは、そのままテーブルに座って、今日何をするか話し合う。

 話し合うとは言っても、ジュディが俺に指示を出すだけだが。


「今日は食料の確保が優先ですね」

「なんでそんなに慣れてるの?」


 異世界ではサバイバルを毎日やっているのか?


「いえ、小説で何度か。本来こんなに楽なものじゃないはずなんですけどね。無制限に水が使えるとかなかなかありませんよ」

「便利でいいだろ?」

「そうですね。……あっ、あなたの利用価値見つかったじゃないですか」

「俺の存在意義って水の生成なの?」


 魔王にしてはあまりにしょぼい。


「食料はとりあえず狩猟が一番ですかね」

「無視かよ」

 結構大事な問題だと思うんだが。


「本来魔王の存在意義って人間を脅かすことだと思いますけど」

「そんな事やったら外交部に叱られるんだよ」

「およそ魔王とは思えない台詞ですね……」


「ほら、そんなくだらないことは置いておいて、狩猟しましょう、狩猟」

 

 くだらないと言い切ったな、今。

 まあ俺も自分の魔王らしさに確信を持てない以上、あまりツッコんでも意味がない。


「じゃあ適当にモンスターを狩ればいいのか?」

「はい、じゃんじゃん食料をゲットしちゃいましょう」


 魔力反応から見るかぎりでは、周囲に強いモンスターはいない。

 

 俺は拠点を出てから、一度振り向く。

 いくつもの階層に分かれ、何重にも塀と堀と結界に囲まれたその建物は、もはや要塞と呼んだほうが良さそうだ。

 ――なんでこうなったんだろうな?


「どうかしましたか?」

 先を歩いていたジュディが振り向く。


「いや、なんか魔王城に似てきたなと思って」


 言いながら、少女に追いつく。

 少女はそれを聞いて首を傾げた。


「ちょっと狭いと思いますけどね」

「一人あたりの面積で考えてみたらどうだ」

「ああ、それを考えたらたしかに広いですね。じゃあ新魔王城とでも名付けましょうか。魔王はこちらにいますし、王冠はちゃんと持ってきましたよ」


 ジュディが言うと、急造のこちらが本物に思えてくるから不思議だ。

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