第46話 新魔王城の新メンバー

 ジュディと共に、獲物を探して森をうろついていた俺は、感知範囲ギリギリの距離に、魔力反応を見つけた。

 強さ的に、たぶんスライムレベルのモンスターだ。


「スライムじゃ、食べられないじゃないですか」

「じゃあ動物型のモンスターであることを願うしかないな」

「けど、モンスターがうようよしてる危険地帯、なんて言ってるわりにモンスター少ないんですね?」

「多いとこには多いんだけどな。一匹見つけりゃうじゃうじゃ出てくるだろ」

「ゴキブリみたいですね……」


 どうでもいい会話――こいつとの間でどうでもよくない会話なんてしたことあったかな?――をしながら、魔力反応のあった方へ向かう。


「食べられますように」

「けど誰が料理するんだ?」

「…………魔法でどうにか」

「ならないよ」


 そんなに便利じゃない。

 もともと、普通の生活では役に立たないと定評があるのが魔法である。


「あなたみたいに嫌な定評ですね」

「俺にどんな嫌な定評があるの?」

「ロリコンに加えて、ナンパ王や風俗王という称号も聞いたことがあります」

「それお前が流した噂じゃないか!」


 他人事みたいに言いやがって。


「さすが魔王ですね。勇者も引きますよ」

「それはそうだろうな……」


 討伐を目指してきた悪の権化が、そんなアホみたいな称号を持ってたらがっかりだろう。


「精神的なダメージになっていいじゃないですか」

「俺への精神的ダメージのほうが大きいからな?」

 敵を利するだけである。


「さて、この辺ですか?」

「なんでわかったの?」

 俺まだ何も考えてないけど。


「なんかイメージが伝わってきましたよ?」

 ジュディの能力がさらなる進化を――?


 ちょっと確かめてみよう。

 俺は脳内にオリヴィアさんのイメージを紡ぐ。


「地下書庫のオリヴィアさんじゃないですか。旦那持ちの」

 

 くそっ、余計な一言を付け加えやがって。

 しかし、これじゃ普通に心を読まれてるのと区別がつかんな。

 ジュディの知らない人にしてみよう。


「赤髪、なんかやじゅ……ワイルドな顔です」

「聖職者みたいな服着てる、銀髪の人。綺麗な人ですね」

「ゴツいのになぜこの男の人は震えているんですか?」

「人見知りらしいぞ」

「ああ、これが例の超人見知りの勇者候補ですか。で、こっちが強い女の人」


 百発百中で、俺は彼女の能力が進化したことを確信した。


「まったく、素晴らしい成長ぶりだな」

 俺の心を読む能力がいったい何の役に立つのか。


「私が勇者側の人間だったらめちゃくちゃ役に立ってますよ」

「なるほど」


 しかも俺は思考を読まれていることを知らないわけだしな。

 そう考えればすごい能力だ。


「っていうか、お前俺以外の人の思考は読めないの?」

「読めません。けど、どんどん成長してくれてるのはありがたいですね。変な悪戯をされずに済みますから」

「俺が十一歳の少女に手を出す変態のように言うんじゃねえよ」

「氷を張って転ばせてキスしようとしたのは、誰でしたかね」

「さあ行こうか! 食えるモンスターだといいな!」

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