第44話 大森林開拓記 3

「全部土じゃ殺風景ですね」


 土でできたそのままだからな。


「色変えるか? 変色チェンジ・カラー

「…………まだ前のほうがいいです。センスゼロ通り越してマイナスですね」

「…………変色チェンジ・カラー。白ならいいだろ」

「あなたのセンスよりはいいです。これって雨が降っても崩れたりしないですか?」

物質転化マテリアル・チェンジ。金属の一種みたいなもんに変わったぞ」

「へえ、魔法って便利ですね。じゃあ中の改装に」


 俺たちは、できたばかりの建物の中に入り、生活できる環境にしていく。


 予想通りといえば予想通りだが、圧倒的に指示が細かい。

 小さな変化ばかりなので魔力は使わないのだが、ダメ出しばかりで精神的に疲れる。


「露天風呂とか食堂とか必要か?」


 旅館じゃないんだぞ。

 何日いるつもりか知らないが。


「あったほうが楽しいじゃないですか。次はプールを」

「お前完全に旅行気分だな」

「真面目に開拓したいんですか?」

「いやまあ、お前が旅行気分ならこっちもそれに乗ってやるよ」

 

 別に働くのが好きなわけじゃない。


「家具を」

「当然だな」

「塀と堀を」

「確かに必要だな」

「厨房を」

「まあいるか」

「見張り塔を」

「いるか?」

「卓球場を」

「たっきゅうって何?」

「菜園を」

「どれだけここで暮らすつもりなんだ?」

「大浴場を」

「露天風呂作ったよな?」

「音楽室を」

「楽器ないけど」

「宝物庫を」

「宝物ないけど」


…………………………………


 

 結局拠点を造りあげるのに丸一日かかった。

 それだけ時間をかけただけあって、完成度には胸を張れる。

 これだけ頑張るとずっと暮らしたくなってくるな。

 

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