第33話 依頼の日

次の日の朝、俺はリンと建築中の銭湯の前で待ち合わせた。


「やあ、おはよう!来てくれてありがとうな」


「引き受けた仕事ですし、それにちょっと面白そうだったから」


右手を軽く上げて、笑顔で声をかけると、リンが少しはにかんで答えた。


「おい!俺らもいるんだから無視するなよ!」


「そうだ、そうだ!背が小さいからって無視するな!」


「なんだ、お前たちも来たのか?別に、リンくんさえ来てくれれば十分なんだけどな」


わざとらしく、いま気が付いたかのようにネイサンとキースの方を見る。


「そうはいきませんよ。リンだけ向かわせて、変なことさせられたらかないませんから」


そんな俺に、横からポールが眼鏡の端を指先でくいっと上げて睨んできた。


「ハハハ、変なことなんて頼まないさ。じゃあ、案内するから入ってくれ」


俺は、4人を建物の入り口へと誘導していった。



「ドンクさん、ダンクさん。おはようございます」


「「おお、おはようさん!!」」


俺たちが中へ入ると、丁度2人が男湯にいた。


ドンクさんたちは浴室の床のタイル張りをしていて、ダンクさんは洗い場で作業をしている。


実は、ダンクさんには蛇口の開発のあとに、追加であるものの開発をお願いしてた。


その話は、ここではとりあえず置いておいて・・。


「なんだ、ここは遊び場じゃねえんだぞ!ガキは怪我をするから入ってくるな」


俺の後ろについてきた、リンたち4人組を見てドンクさんが言った。


「なにっ!」


「いーっ!」


すると、ネイサンが拳を握りしめ、キースが歯を見せる。


「まあまあ。彼が、この間言った絵を描いてくれるリンくんです。他は・・まあ、その付き添いです」


間に入って、ドンクさんたちにリンを紹介する。


「付き添いじゃありません。代理人です」


すると、ポールがくいっと身を乗り出して、そう言い切った。


『プロのスポーツ選手かよ!』


思わず心の中で突っ込んだ。


「ふふ、なるほど。まあ、せいぜいワシらの邪魔はせんようにな」


最初から、からかうつもりだったのか、ドンクさんが白い歯を見せながら言ってきた。


「ええ、わかりました。よろしくお願いします」


「よろしくお願いします!」


俺が、ドンクさんの言葉に頷くと、リンがそう言って頭を下げた。


「おお、頑張んな」


ダンクさんも、笑顔で言ってくれた。



「さてと、じゃあこっちへ来てくれ」


俺は作業中の男湯を避けて、女湯の方へまわり、リンたちに浴槽の方へ来るように言った。


「「「「なんだこれ??!!」」」」


改めて、浴槽を目の前にした4人が驚きの声を上げた。


「これは風呂だ」


「「「「ふろ?」」」」


そうか、まだこいつらは風呂を知らないんだったな。


「そうだ。この中にお湯を入れて、そのお湯の中に裸になって入る。それが風呂だ」


「「ここにお湯を?」」


「「はだか!?」」


ネイサンとキースはよく理解していないのか、首をひねっている。


一方で、リンとポールは顔を紅くしている。


「そうだな、あとで入らせてやるよ」


「「おもしろそう!」」


「「べ、別にいいですから!ボク(私)は、裸になるなんて!」」


「ま、入れば良さがわかるさ。・・・でだな」


俺はそう言って、浴槽の背後の壁に視線を向ける。


「リンくんには、この壁いっぱいに絵を描いてもらいたいんだ」

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開湯!異世界温泉『ふじの湯』 もらったスキルは『温泉』だった??! @nishiyahagi

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