episode 10 自転車に乗りた~い 其の弐

 特訓とっくん二日目ふつかめ

いよいよるぞー、ボクは意気込いきごんでいたのに、またしても「おあずけ」をらったポチのようでした。パパはいてきた自転車じてんしゃにスタンドをけました。

「きょうも、ブレーキの練習れんしゅう?」

「いや、きょうは自転車じてんしゃる。でも、何事なにごとにも準備じゅんびがあるんだ。自転車じてんしゃにもな」

パパは左手ひだりてなにっていました。

準備じゅんび?」

一歩いっぷ、クイズをしようか。パパのくるま一歩いっぷ自転車じてんしゃもタイヤがついてるよな」

「ウン」

「じゃぁ、タイヤのなかはいっているのはな~んだ?」

「そんなの空気くうきまってるよ。はいってないのはパンクだよ」

「パンクか…。ん~、まぁそういうことにして、空気くうきはいってないと自転車じてんしゃはしれないから、まえ空気くうきがちゃんとはいっているか確認かくにんしないとダメなんだ」

「ふ~ん」

「こうして親指おやゆびでタイヤをしてごらん」

パパを真似まね両手りょうて親指おやゆびちからいっぱい後輪こうりんすと、あっけなくグニャッとへこんじゃった。

「これが空気くうきれ。パパが空気くうきれるところさえているから、一歩いっぷはここのポンプをうごかして空気くうきれる!」

パパが身振みぶりで、ボクに手本てほんせてくれた。何十回なんじゅっかいもポンプをげしてタイヤをしてみると、パンパンにふくらんだんだ。

空気くうきまんタ~ン」

空気くうきまんた~ん」

まえのタイヤにも空気くうきれようとしたボクに、

「きょうは特別とくべつ前輪ぜんりんはパパがまんタンにしておいたから大丈夫だいじょうぶ。じゃぁ、ってみようか」

「ウン!」


 パパが荷台にだいうしろからささえてくれているのでころばないけれど、両手りょうてでハンドルをにぎりながら同時どうじにペダルをぐのは至難しなんわざでした。両足りょうあし地面じめんからはなすこともこわくてできないのですから。

一歩いっぷこわがってたらいつまでってもれないぞ。こうしてパパがささえてるから、勇気ゆうきして両足りょうあしでペダルまないと」

一歩いっぷころんだってかまわないから。ちょっとケガしたって大丈夫だいじょうぶ大丈夫だいじょうぶ

いつのにかエプロン姿すがたのママがそば応援おうえんしてくれたけど、『ケガしてもいい』ってどういうこと? でも、ボクには返事へんじをする余裕よゆうもありませんでした。

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