第4話

 ランプの光り、ほのかなオレンジ色が、空間を照らす。そこそこ繁盛している酒場はクエストへの入り口でもある。酒を酌み交わし、楽しそうなNPCをずっと見ていたくなる。


「みーくん、良かった。来てくれて。他のゲーム仲間だったら適当に狩り行って、即解散の予定にしてたから。変な気使う必要無くなった」


 美男子、男の娘。いつもの格好はそれなのに、可愛くなってる。


「女子みたいになってるな」


 むすっとした顔、「リアルも女子ですよーっだ」


「メールがきて、それからSNSの通知で、はっきりした。中二の頃、変な事言ったよな、ごめんな」

「友達、仲の良い男友達。だからさ~、好きの意味にちょっと迷ったの。で泣いちゃった」


 アキちゃんは、椅子として設置されてる樽に腰掛けた。「みーくんも、こっち」と手招き。


「アドレス、そのままなんだね」

「ノートに書いたのも置いてあるよ」

「やだ、恥ずかしい。先に携帯持ってたくせに教えてくれないんだもん」

「初めてって可愛く見えるからさ」

「おもしろくて黙ってただけじゃないの~?」とポカポカ叩いてくる。

「いつまにか居なくなってたよな。理由聞いてもいい?」

「今回みたいに引っ越しだったよ。志望校合格したら、電車通学だねって親と話してたんだけど……仕事の都合と高校が近くてね。美冬くんには離れること知ってるのかって親に言われちゃった、よく遊んだもんね……戻ってきたのはお父さんの仕事関係でね」


 そっか、知らないところで沢山考えることがあって、俺のことが話に上がってたんだ。


「リアルでも、今みたいにはしゃいでくれる?」

 おもむろに頬を赤らめ、そっぽを向く。「さぁ、どうだろうね。美冬くん、かっこよくなってたし」


 思いがけない一言に、ちょっかいをかけたくなった。「秋人さんだって、大人びた。ますます好きになった」


 少しずつ視線をかさねて、限界がきて笑いごまかした。お互い分かりだしてゲームの中でさえぎこちないとは、リアルじゃ顔を見れないぞ。


「少しずつ会おうよ、好きだって確かめられたし。大丈夫だから」


 大丈夫。秋ちゃんの選んだ言葉が、気持ちを自然と前へ押してくれた。


「みーくん、手出してよ」

「こんな感じ?」

「あ、ゲームだったら一律で同じだと思ってた。違うんだね。みーくん男の子だから大きい」

「俺のは女キャラで成人の体型だから、それはおかしいよ。アキちゃんのは小学生の体型にしてるから、身長で大きさ変わるんだと思う」

「リアルで会ったら、今みたいに手合わせようね! 約束」


 絡ませた小指。次は、現実で。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

仮想の君と、次はリアルで。 戌井てと @te4-3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ