第3話
母親からの注意事項に、しっかり頷いて聞いてる男の子。ムービーの流れに乗っかり、アキちゃんも列車へと乗り込む。すると、俺に気づいたのか哀愁漂う顔をした。アクションは選べるけど、もう会えないみたいなのは何なんだよ。
『何だよその表情は、役者かよ』ゲーム内のチャットで突っ込んでみた。そしたら、『見送りという状況に適したクエストだと思わない? ログインするとはね~、うれしい。ありがとう』
いろいろと聞きたくなった、でもチャットは中断された。またしばらくムービーが続き、その後はクエストが始まる。もう、ほんとに、その場を離れる間際って事なんだな。
みーくんとは離れたくない、アキちゃんはそう言ったんだ。またひょっこり通知が届くさ。それまでは――…。
小さかった苗は、三十センチくらい伸びたように思う。一面に濃い緑へ、さらに暑さが増していく。親は出掛け、静かな家にインターホンが響いた。ドアを開けると、肩までのショートヘアの女性と同い年くらいの女子がいた。
「近くに越してきた菅野です。――…あら、美冬くんじゃない? びっくりした~、でも小さい頃とも重なるわね。秋人、ほら久しぶりじゃない!」
自然と完成する上目遣い。会釈したらさらっと流れる長い髪。再会できた嬉しさ、告白して中途半端にした後悔が胃でぐるぐる回ってる。なにか反応しないと、同じように会釈するのが精一杯だ。
渡された紙袋をキッチンのテーブルへと置き、自分の部屋へ駆け込んだ。ベッドにうつ伏せとなり、拳を数回振り下ろした。いろんな気持ちを振りほどきたかった。机に置いてあったスマホが光を放つ、……このアドレス、え、何で。慌てて引き出しから紙を取り出した。全て一致する。又もやスマホが反応した、いつもの通知、アキちゃんからの。
『返信は期待できそうにないかな。でも、届いたってことはあの頃のままなんだね。今夜は、酒場でのんびりしよーっと』
相手は期待してもいいのかな。期待したい方に気持ちが高ぶり、ゲームを起動させた。SNSでの呟き、ゲーム仲間が見ていれば会おうって解釈もできる。人数制限、それも一人まで。不思議に感じながらも入室をクリックした、待機の表示に思いが募る。
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