第5日:朝

その日の朝。

俺は登校する前に、庭にあるソラの墓に手を合わせていた。

そのうちに、妹もやってきて、俺の横で同じように手を合わせる。

やがて時間が過ぎて、俺が出発しようと歩を進めた時だった。

「兄ちゃん」

「ん?」

ソラの墓を見つめたまま、妹は言う。

「なんでみんな、変わっちゃうんだろ」

その言葉は、寂しそうな表情で紡がれていた。

「私はずっと、ソラと遊んでいたかったのに」


不意に言われたその言葉を、俺は反芻した。

頭の中に、有明さんの顔が浮かぶ。ナハトの顔が浮かぶ。

夜界で体験した出来事の数々と、図書室で有明さんと話した時の思い出と、そして昨夜の記憶が、俺の頭の中で蘇っていた。


「きっとみんな、生きるのに必死なんだよ」


「だから、変わっていくしかないのさ」


俺なりに、上手く言葉にならないが自分の考えを紡ぐ。

俺からすれば、妹もまた、中学に入ってから変わったと思ってた。

けど、変わってない部分もあったのだろう。

そう思いながら、俺は自分の言葉を締めくくった。


「だからさ、変わってほしくないって思うのは…多分、我儘なのかもな」


「…うん」


消え入るような声で、妹は頷く。

それから、俺と妹は出発した。


それ以後、妹はもう不機嫌ではなくなっていた。

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