第12話 散歩はやっぱり

そろそろ暑さも落ち着き、夕方にはやや涼しい風が吹きはじめてる散歩道。


けんた「あっ、かすみさん!」

かすみ「こんにちはー!」

けんた「今日は1人ですか?」

かすみ「ゆかちゃんと一緒は毎週火曜のゆかちゃんのお休みの日だけ。」

けんた「そっか。いつも一緒にいるから。」

かすみ「そうかも。気がついたらいつもゆかちゃんと一緒にいるかな。」

けんた「仲いいですよね。」

かすみ「うん。とっても。」

かすみ「でもねっ、たまにゆかちゃん無理な事したり、隣でヒヤヒヤな時もあるのっ!」

けんた「あっ、わかる…」

かすみ「でも私、そんなゆかちゃんも結構好きよ。」

けんた「なんか、憎めない感じ。」

かすみ「そっか、けんたさん遊園地でもずっとゆかちゃんと一緒だったもんね。」

けんた「楽しい人ですよ。いい友達!」

かすみ「時々疲れるでしょ〜??」

けんた「それは、はい。」

けんた「あっ、悪い意味じゃなく、そのっ、あー、ゆかさんには内緒で。蹴られそう…」

かすみ「フフッ、それも見たいかも!?」

けんた「もー、かすみさんっ!」

かすみ「冗談ですよっ。」

けんた「そういえば最近セイヤさんとは?」

かすみ「うん。なんかね〜。」

けんた「何かあったんですか?」

かすみ「プロポーズされてて、なんかよくわからないうちに流されてるような…」

けんた「そっか。」

かすみ「なんか疲れてきたような。」

けんた「うん。」

かすみ「私、ゆかちゃんや、けんたさんといる時の方が楽しいしっ。」

かすみ「それにセイヤさん、他に…」

けんた「えっ!?」

かすみ「いや、なんでも…」

けんた「人生焦る事ないですよっ!」

かすみ「そうかもね。」

けんた「それじゃあ。」

かすみ「じゃあ、また。」


少し気づき始めたかすみ。

けんたは言いたかった。

でも今はまだダメだと自分に言い聞かせ。

このタイミングで自分勝手な事をしたら、間違いなくみんなに迷惑をかける。

それに、間違いなくゆかに蹴られる。

そんな事考えながらゆかに報告。


ゆか「えっ!?それって!」

けんた「多分かすみさんもなんか気づきはじめてるかも、セイヤさんの事。」

ゆか「それならかすみちゃんの傷も浅くてすむかもしれない。」

けんた「僕や、ゆかさんといる時のほうが楽しいんだって言ってた。」

ゆか「く〜っ、泣かせるねーっ。」

ゆか「絶対失敗しないよう、頑張るよっ!」

けんた「うん。」

ゆか「じゃあ、明日予定通りに!」

けんた「了解した!」


いよいよ明日。

あの女性は信用できるのか?

本当に来るのか?

上手くいくのか?

不安要素はたくさんある。

でも、やるしかないっ!


そして、いよいよ当日の夕方。


かすみ「じゃあ行こうか。」

ゆか「おうっ!」


ゆかとかすみはいつも通り散歩へ。

同じ頃、けんたもコタローを連れて。


セイヤ「あっ、かすみさん!」

かすみ「ごめんね。忙しかったんじゃ?」

セイヤ「全然大丈夫だよっ!」

かすみ「ゆかちゃん、どうしても海まで歩きたいって。」

ゆか「すんませーん。わがまま言って。」

セイヤ「全然!こんな事ならけんたくんも誘えばよかったのに。」

ゆか「それは大丈夫!」


わんっ わんっ


ゆか「おっ、コタロー。」

けんた「すいませ〜ん。お待たせして。」

かすみ「みんな今来たとこ。」

セイヤ「よしっ、全員揃ったとこで…」


『私を忘れてるわよっ!』


セイヤ「!!!」

セイヤ「な、な、なんでっ!」

女「なんではないわよね〜。セイヤさん!」

セイヤ「こ、これはっ…」

かすみ「どー言う事!?ねーっ!」

ゆか「見ての通り。二股よっ!」

けんた「さっ、もう終わりにしましょう!」

セイヤ「おっ、おまえらっ!くっ、俺をハメたなっ!」

女「それはこっちのセリフよっ!」

かすみ「あなたは?」

女「こいつの婚約者!いや元婚約者ねっ!」

かすみ「セイヤさん!これって!!」

セイヤ「あー、そーだよっ!二股だよ。」

かすみ「そんな…」

セイヤ「ちっ!もー少しだったのにっ。」

ゆか「こっ、この腐れヤロー!!」

けんた「ゆかさんっ、ぼ、暴力はっ。」

ゆか「はなせっ、はなせっ!けんたっ!」

女「もう終わりねっ、あなたも。」

セイヤ「くっ、くそーっ!」

かすみ「セイヤさん…」

セイヤ「そうさっ、最初からお前たちの財産目当てだよっ!」

女「フン、そうじゃないかと思ってた。まんまと引っかかった自分が情けない…。」

かすみ「財産って…。」

セイヤ「お前の実家のさ。」

かすみ「な、なんでそれを!」

セイヤ「あんな大財閥、調べればすぐにわかるさっ。一人娘の事だって。」

女「あなたのご実家って?」

セイヤ「駅前のホテルのグループの会長。」

女「えっ!?じゃあ、あなたかすみさん?」

かすみ「あなたは?」

女「私はあなたのお父様のホテルと提携してる観光とかやってるー、ほらCMでよくやってるグループの〜」

ゆか「あっ!そのCM知ってる!」

けんた「うん。僕も知ってる!」

ゆりこ「そこの会長の娘よ。」

ゆか「……?」

けんた「……??」

かすみ「えっ!?それじゃあ、あなたもしかして、ゆりこお姉さん?」

ゆりこ「覚えててくれたの?」

かすみ「小さい頃、何度も遊んてもらったの覚えてる。」

ゆりこ「こんな再会になるとはね。」

ゆか「私たちには全く想像できない世界。」

けんた「おっ、同じく。」

ゆりこ「セイヤ!!」

セイヤ「な、なんだよっ!」

ゆりこ「私だけならまだしも、こんな真面目なかすみちゃんまでっ!」

セイヤ「けっ!騙される方が悪いだろっ!」

ゆりこ「許さないっ!絶対にっ!」

セイヤ「ふんっ!ほざいてろっ!」

ゆか「テメー!!」

けんた「ちょっとっ、ゆかさんっ。」

ゆか「はなせっ!けんたーっ。」

かすみ「…」

ゆりこ「謝る気はないと。」

セイヤ「ふん。当たり前だっ!」

ゆりこ「今ならまだ間に合うけどー。」

セイヤ「だーれがっ!」

ゆりこ「そっ。わかったわ。あなた一人この街、いや、この国に住めなくするくらい、私達に出来ないとでも思って?」

セイヤ「なにっ!?」

ゆりこ「んでっ、まだ、謝らないつもり?」

セイヤ「ふんっ。悪かったなー。」

ゆか「なっ!こんのヤロ〜!!」

けんた「だからっ、落ち着いてって!」

ゆか「はなせっ、ばかっ!」


ポカッ


けんた「も〜、痛いよー、ゆかさん。」

ゆりこ「いいわ!さっさと消えてっ。」

セイヤ「ふんっ、言われなくても。」

ゆりこ「期限は1週間よ。さっさとこの街から出て行くことねっ!」

セイヤ「なにっ!」

ゆりこ「よその街でやり直しなさい。」

セイヤ「ちっ!」


セイヤは大人しく去って行った。

罪悪感もなさそうに。


ゆりこ「かすみちゃん大丈夫?」

かすみ「うん。ありがとう。」

ゆりこ「いい友達がいるんだね。」

かすみ「うんっ!」

ゆか「ったくー、あんのヤロー!」

けんた「もー、ゆかさんならー。」

ゆりこ「少々血の気が多いけど。」

ゆか「あーっ、すんませーん。」

ゆりこ「結構、結構!」

かすみ「最初はびっくりしたけど、実はホッとしたの私。」

ゆか「えっ?」

かすみ「彼氏とか、結婚とか今の私には必要ない、かなって思ってたから。」

ゆりこ「かすみちゃん…」

けんた「これでよかったのかなぁ?」

かすみ「うん。よかったと思う。」

ゆりこ「そうね。これでいいのよっ!」

ゆか「かすみちゃん…。」

ゆりこ「よしっ!飲みに行くかっ?」

かすみ「今からー?」

ゆりこ「パーッとねっ!」

ゆか「賛成!」

けんた「いいですね。」

かすみ「私は彼氏いなくても、ゆかちゃんやけんたさん、コタローくんがいれば…」

ゆりこ「私はー!?」

かすみ「ゆりこちゃんもっ!」

ゆりこ「行こっ、かすみちゃん。よしっ!私に続け〜、ゆか、そしてけんたもっ!」

ゆか「おーーっ!!ゆり姉に続け〜!」

けんた「はいっ!」

ゆか「でも、2人の実家って…」

ゆりこ「その話はいいのっ!」

かすみ「そう、いいの!行こっ!」

ゆか「まっ、いっか!行こーー!!」

けんた「???…はい!!」


いつもの川沿いの

いつもの散歩道からは

三人の、そしてコタローと、ゆりこの

そう、みんなの笑い声が響いていた。


         完




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見知らぬ散歩人 オッケーいなお @k160204989

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