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「あー、こういうの、私には、さすがに似合わんのではないですかね」
朝倉は、俺の渡した黒のTシャツのすそを引っ張って、その生地具合を確かめているようだった。少し丈が長かったか、シャツの下に着ている制服のスカートが、いくらか隠れてしまっていた。
「似合わんかどうかは、他人が決めることであって、お前が決めることじゃないぞ、ブンガクブ」
「なら、なおさらいかんでしょうに」
「どこが」
「私は、こういうの、実のところ、それなりに、まあまあ、気になっていはしましたが、しかし、自分では絶対に買いはしないものの、でも、そんなに、嫌いじゃないのですよ、つまり」
「なんだそれは。好きなのか、嫌いなのか」
「どちらかで言えば、それは好きなほうだということだと思うのです」
「ならかまわないだろう」
「しかし、先輩はこう言いました。似合うか、似合わないかは、他人が決めることだと」
朝倉は、実にばつの悪いような目を、そわそわと窓の外に向けていた。
俺は、ため息交じりであった。
「ばか者。似合うと思ったからこそ、みやげに買ってきたんじゃないか、ばか者」
「ひどい、二度もばかと言わんでもいいでしょう」
「似合うぞ」
「二度も言わんでよろしいです!」
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