13

 ほら、見て見て。

 子供のような無邪気さで、アカリは舌をべっとむき出してみせた。見事なまでの緑色だ。


「すごいな、ベロまでメロンじゃん」

「すごいっしょ、すごいっしょ」


 うれしそうな笑い方まで、昔のままだった。

 お祭りなんて何年ぶりだろう。ずっと昔にも、こうやってかき氷を食べたような気がする。いや、そのはずだ。でも、よく思い出せなかった。


「ほら、食べる?」


 アカリが、ちょっとだけ氷の乗った、ストローのスプーンを差し出してきた。

 俺はうろたえたのを悟られないように、できるだけ平穏なふりをして言った。


「いいよ、お前食べろよ」

「えー、おいしいのに」


 アカリはそう言いながらも、緑色の氷の塊を次々と口に運んだ。お気に入りの「色つきリップ」が落ちないように、気を遣いながら。

 アカリのピンク色の唇が、満足そうにつやめいているのを見て、俺は、俺たちは、時間だけが過ぎてしまったのだなと感じていた。

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