黒雨

遠くで

雷鳴なっているようだ


今どこ?

スマホにメールが来る

大丈夫、一人で帰れる……


そんなこと、聞いていない。

どこだ?


駅にいるわ。

すぐに行くから、動くなという。


本当は激しい雨に戸惑う

私は立ちすくむ

美しいまでの稲光に微笑んだ。

揺らぐ視界に落雷を見た


少し胸がどきどきする


足元が濡れてきた

まさかの浸水なのかもしれない。


前髪が濡れるから

また少し下がる。

人が多くて蒸し暑い……


駅のターミナルにいつもの

白い車の切っ先が見えた。


また稲光に肩をすくめる

オブジェの先にあなたの姿、

ハザードランプをつけて飛び出した


やめて、濡れるからと思ったのも瞬間

私にタオルをかぶせると肩を抱いた。


いくぞ、滑るから。


どこまでも、あなたとなら。


大きなため息とともに全身ずぶぬれのあなた

雷鳴とともに街の明かりが落ちた。


停電?

 

ああ、そうかもしれない。

シャツを脱いで

後ろに投げた。


その手で青いシャツを着ると

ハンドルを握る。

そのしぐさにどきどきしてしまう。

誰にも見せたくない。


私だけに見せる

無防備な、そして強い姿。


好きよ

ああ、お前さんは雨や台風が好きだな。

変な奴。


そんな私を迎えに来るあなたも

かなり変わっているわ


土砂降りで前が見えない。

私たちの未来みたいね……

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