第23話 DPと食材

「肉体の一部を核にするってどういうこと?」


 魔石を作れると言っても、指や足など大きな部位を核にするなら、代償が大きすぎて遠慮したい。


「血や髪の毛を核にして魔石を作るんです」


「血は新鮮なもの、髪の毛は毛根が付いているものという制限がありますし、消費魔力も多いので一度に数多くは作れませんけど」


 核にする物は大きさよりも鮮度が重要なようだ。


「なるほど、ゴーレム作りの材料として必要だから、早く作れるようになりたいな」


 魔石を作れるようになるためにも、早く魔力コントロールを上達させねば。


 魔石製作に向けて練習を頑張ろうとしていたところに、シャルルちゃんは俺の後ろに手を向けながらボードを見せてきた。


「今日の授業はここまでです、白音が来ました」


 指摘されて、後ろを見ると、シャルルちゃんがボードに書いた通り、温泉施設からこちらに向かってくる白音ちゃんが見えた。


「ご飯出来たよー」


 白音ちゃんにこのダンジョンで料理を作ってもらうことになっている。

 お昼に俺がDPで料理を出していたら、


「変わった味で、美味しいけど量が少ない」


 と言われた、次々とDPを消費して料理を出していたが、料理を出す度に何が食べたいかを聞いていたら自分で作りたいと言ってきた。

元々三人旅での調理担当をしていたのもあってか、DP交換で出す料理の健康バランスが悪いのも気になったらしい。 その辺りはコンビニ弁当やファミレスの料理のようなものばかりだしていたので料理をする人が見たら我慢ならなかったのかもしれない。

 白音ちゃんには料理の材料としては前世の私物(冷蔵庫の中身)とDPでいくつか交換した食材を温泉施設の食事スペースの奥にある調理場の冷蔵庫に入れてあることを伝えておいた。


 白音ちゃんは俺がシャルルちゃんの授業を受けている間に用意した食材で調理場で料理をしていたのだ。

 今回は、調理場、調理道具の掃除から行っていたので時間がかかったが、次回からは、調理だけでなくダンジョン内を開拓していきたいと言っていた。

ゆくゆくはダンジョン内に畑を作るなどしてDPに頼らず自給自足をしたいそうだ。


 正直、DPで交換した食材を調理してくれるだけでも節約になる。

 カレーを例にあげると、

人参、じゃがいも、玉ねぎがそれぞれ1DP、カレールーが5DP、ご飯が10DP、豚肉が2DPと合計20DP

それに対してカレーをそのままDP交換をすると50DPもかかる。

食材を交換した場合、4人前ぐらい作れるのでざっと10分の1になる。

調味料は1DPで大量に交換できるので計算に入れてないし、ごはんもお米の状態で交換すれば更に安くなる。

 食材から用意するデメリットとしては、そのまま交換で出したら味は安定して美味しいが食材として交換した場合は調理した者の技量によって変わる。

 俺は前世では一人暮らしだったので、一応の調理はできるが人に食べさせる技量はない。

一人なら失敗しても自己責任という事で妥協するので最低限しか調理の腕が上がらないのだ(一人の場合、調理自体を面倒臭がる)


「お兄ちゃんが置いてた食材が面白かったから、チャレンジしてみたよ」


 前世の食材を置いてたから珍しかったのだろう、でも


「色々置いといたからどれの事だろう?」


 前世からの食材も色々置いてたし、DPで交換した食材も俺がメニューの画像と説明を見て選んで交換した。

もしかしたらその中にこちらの世界では珍しい食材があったかもしれない。


「食べてみてのお楽しみだよー

味見はしてるから安心してよ」


 俺の不安が顔に出ていたようで白音ちゃんは話しながら自信のある笑顔から安心させるような笑顔に変わった。

 俺は前世で親戚の小さな子が料理を作って来て、食べてみてのお楽しみと言われて美味しかった事がない。

大抵味付けがいまいちだったり、歯ごたえが凄かったりして美味しいとは言えないものだった。

 親戚の集まりで普段あまり食べてないことを知ってる人たちがよく料理を回してくれたのだが、そこは質より量ということでちびっこ達の失敗作も担当させられたのだ。


「白音の料理は美味しいよ、〈鑑定〉も持ってるから知らない食材でも間違った調理法はしないよ」


 シャルルちゃんもフォローを入れてくる。

 俺がここまで不安になっているのにはもう一つ理由がある。

前世の調味料も用意したが、たぶん白音ちゃんはこの世界の味付けで調理しただろう。

今までDP交換で出した料理は前世にあった料理だったので初めてのこちらの味ということになるが、この世界の味付けが口に合うのかわからない。



 まあ食べてから考えよう。





 温泉施設の食事スペースに来ると大小の器が4人分置かれていて、スライム用にスープメインの物も置かれている。


「魔法の指導はどうだった? 魔法の事はあたしは上手く教えられないからね」


 琥珀さんは既に座っていた、魔力教室が終わった時にはまだ外にいたはずだが、いつの間に?

白音ちゃんが施設から出てきたタイミングで中に入ったのか?


「魔王のお兄さんは筋がいい、初めてなのに基本属性の全部を変換が出来たよ」


 シャルルちゃんが琥珀に答える。


「それはスゴいね、魔法が得意なシャルルちゃんでも4属性なのに、私なんか火だけだよ?」


 シャルルちゃんの評価に白音ちゃんが驚く。

親子揃って魔法が苦手なようで、白音ちゃんは火属性しか魔法を使えないのか。


「それはあんたが魔法の練習をしてないからだろう?」


 と琥珀さんは言うが、練習すれば他も使えるようになるって言っても変換しにくい人はとことん変換しにくいってさっきシャルルちゃんの説明を受けたな。


「それより、早くご飯食べよ、冷めちゃうよ」


 やぶ蛇だったのか魔法の練習をしてないことを琥珀さんに説教されそうだった白音ちゃんは食事の方に意識を向けさした。

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