第22話 変換資質

「日も暮れてきたので、授業も次で今日は終わりです」


 確かに俺が魔法を使うのに時間が掛かったからな。


「ごめんな、魔力コントロールに慣れてなくてさ」


 授業の進みが遅くて申し訳ない。

今日は白音ちゃんがご飯を作り終わったら、授業を終わらせなきゃならないからな。


「気にしないで、元々今日は次で終わるつもりでしたから」


「そうなんだ」


 一応予定通りに進んでるようでよかった。


「今日の最後は色んな属性に魔力を変換してもらいます」


「大きな塊になるまで集めなくても大丈夫です、とりあえず先程の要領で変換までしてみましょう」


 シャルルちゃんに指示されたように水以外の属性に魔力を変換してみた。



 火属性は簡単だった。

前世では小さな頃によくガスを止められて、親は七輪でよく料理をしていた、その七輪に火をつけるのは俺の役目だった。


 今考えると、色々危ないな、法律的な意味でも


 なので火を付けるイメージはしやすかったし、手のひらに火の玉を作るのも苦じゃなかった、変換した魔力を手に出すだけのつもりが、思ったより火が出ていたのでまとめようと意識したらすんなり手のひらサイズに収まった。


 木属性は変換する為のイメージに苦労した、テレビで見たことのある森や神秘的な大木などをイメージしてもなかなか変換されないのだ。

 最終的に小学校の時に木登りをした校庭の木をイメージすると、手のひらにイガグリの様なものができた。



 風属性はイメージは簡単だった、扇風機やエアコンの風、強風の日やビル風のような強い風、等日常的に強弱はあるが風に当たっている。

 しかしそこからが難しかった。

変換した魔力を手元に集めようとすると、魔力が霧散してなかなか集まらないのだ。

それでもなんとか手元にゴルフボールくらいの塊を作ることができた。


見た目は歪な黄緑色のビー玉だが、左手で触ると中まで指が入り、風を感じる。


 最後に土属性の変換をする。

イメージは簡単だ、前世では土木関係の派遣や、砂を加工する現場に行ったことがある為、割と身近にあったものをイメージしたら変換できた。

手元に魔力を集めると集めたい量の魔力がすぐに集まり綺麗な球体を作った。


 豆知識だが、綺麗な泥団子を作るときに瓶などの丸い口をした物の上で泥を転がすと綺麗な団子になる。


「これで基本属性は全部かな?」


 最初に変換した水属性も含めて基本属性は変換したはずだ。

それをシャルルちゃんに確認すると、


「おつかれさまです、基本の属性は大丈夫、

その中に変換しやすい属性としにくい属性があったでしょう?」


 確かに、水や木、風は変換しづらかった。


「イメージが難しかっただけの木属性は使い慣れてイメージが固まるとなんとかなりそうだけど、水属性と風属性はだいぶ練習しないと使い物にならないな」


 戦闘中に使うことを考えると魔力を集めるまで時間がかかる上に、魔力の密度も薄かったので威力もあまり高くない。


「変換資質って言って、人やモンスターには生まれつき魔力変換に得手不得手があります」


「俺は火と土が得意で水と風が苦手って事かな?」


 感覚的には水は苦手、火は得意、木は普通、風はとても苦手、土はとても得意といったところか。

木はイメージが出来れば変換自体は難しくなかった。


「種族が原因だったり個性の問題だったりするけど、苦手な属性を変換させることが出来ない人がほとんどです」


「魔王のお兄さんは苦手な属性でも変換出来てるから魔法の素質があるんだと思います」


 シャルルちゃんに誉められた。


 詳しく聞くと、基本属性全て変換出来るのは魔力のコントロールをある程度上達した者がほとんどらしい。

その者は自分の魔力を無理やり苦手な属性に変換する事で全ての属性を使っている。

無理やり変換しているのでスキルのサポートがあっても、初心者魔法使いの得意属性と同じ程度の効果しか発揮しないそうだ。


「複数の属性変換になれてくると純粋な魔力だけを取り出すことができるようになります」


 純粋な魔力はとても扱いが難しい、その代わり威力も高く、応用も利く。


 そもそも純粋な魔力を取り出すこと自体が難しい。

魔力コントロールが未熟だったり、スキルとして魔法を使っていると、純粋な魔力を取り出すつもりで得意な属性に変換して取り出してしまう、意識的に変換せずに身体の外に出すことが難しい。

純粋な魔力は身体の外に出すとすぐに霧散してしまうため、魔法として使用するため、その場に留めておくのも困難だ。

 それに一度、集めて固めてしまっても、崩れやすく、何かしらの媒体等の補助を使わないといけないが、その媒体も属性に染まっていてはならない。


 ちなみに、最初の俺みたいに、魔力漏れを起こしているときは何かしらの属性を帯びているらしい。


「魔力の変換がうまい人は変換しない事のコツを掴みやすいそうです」


「なるほどね、変換に慣れると身体が変換を理解してるから、変換しないって感覚を掴みやすいんだな」


 確かに変換に慣れているとその変換の過程を省くのはやり易いだろうし、魔力を固めるのもなれているだろう。


「純粋な魔力を生み出せるのはそれだけで重宝されます」


「例えば、純粋な魔力を結晶化させて、魔道具の材料である魔石を作って生計を立てている人もいます」


 今、気になることをシャルルちゃんがボードに書いていた。


「魔石って作れるの?」


「魔石とは魔力を生み出す石です、本来モンスターの心臓付近にある石なんです」


「ですけど、魔力が籠った肉体の一部を核に、純粋な魔力を結晶化させることで人工的に魔石を作り出す方法を人間が発明しました」


「今ではその方法で作られた魔石で魔道具は量産されていますよ」


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