第21話 魔法を使ってみよう

 シャルルちゃんが使っていた魔法を真似してみよう。

 まずは、シャルルちゃんがやっていたように魔力を水属性に変換して。


 どうやって?


「属性変換ってどんな感じなのかな? やり方がわからない」


 とシャルルちゃんに聞いてみる。


「自分の魔力を感じて、その感覚の上にその属性に関係したものを思い浮かべて重ねる感じでしょうか」


「出来るだけ身近なものを思い浮かべる方が変換しやすいと教わりました」


「火ならランプや暖炉の火、水ならコップの水、土なら地面の感触や石の固さ、風なら晴れた日の気持ちの良い風、木なら森の匂い等ですね」


「と言っても例にあげたのは私が初めて変換できた時に思い浮かべたものですが」


 シャルルちゃんは自身の経験を踏まえて説明してくれた。


 自分の魔力はなんとなくわかる、生まれ変わった時にから身体にまとわりついているものだと思う、この感覚の上に水に関係するものを思い浮かべる。

 さっきシャルルちゃんが水の玉を出していた、とても大きくその水の玉のインパクトが強かった、と考えていると魔力を水属性に変換する事ができた。


 しかし


「ストップです、魔力が漏れてます」


 シャルルちゃんがボードに書く通り、魔力をうまくコントロールできていないため、身体の周りに水を纏う形になってしまった。


「魔力をコントロールしてどこかに集めてください、出来ますか?」


「やってみる」


 魔力変換で魔力のコントロールについて、少しコツみたいなのを掴んだ、要はイメージが大事だ。

魔力は手に集めよう、エネルギーを手に集めるなんてアニメや漫画じゃあよくある表現だ、イメージしやすい。

 そういって、レスリングのようなロボットアニメの宇宙の中心で愛を叫んだ男の必殺技をイメージした、すると


 右の手首から先が水になっていた。

水を纏っているのではなく、手の形をした水が手首から生えていた。

握ったり開いたりしても感覚は普通にある。

しかし、ものすごく水が圧縮されているようで、土を掴むと、手の中に吸収されたあと分解されて消えた。


「何をしてるんですか、一度魔力を収めて下さい」


 シャルルちゃんも想定外の事態のようだ、でも


「魔力の収め方は?」


 収め方なんてわからない


「深呼吸をするように、心臓付近に魔力を流していくイメージをするとやり易いですよ」


 教わった通りにイメージすると右手が元に戻った。


「今のは魔力同化と言って、肉体を魔力と同化させることで魔法の威力をあげる術です」


「ほかに魔力がある限り肉体にキズがつかなくなったり、魔法スキルで身体能力が上がったりと強力な術です」


「でも、魔力コントロールを失敗すると魔力が肉体ごと霧散して戻ってこなくなります」


 さっきのはハイリスクハイリターンの技のようだ。


「本来、熟練の魔法使いが近接戦闘用の切り札として使う術でとても危険な術なので、今後使わないで下さい」


 使いこなせれば武器になりそうな技だが使用禁止を言い渡されてしまった、魔法を今から学ぼうという者には無謀な技か。


「わかった」


 使用禁止をおとなしく受けよう、人に心配かける技はダメだ。

もっと魔力コントロールが上手くなってから使うかどうか改めて考えよう。


「もう一度、初級魔法を使ってみましょう、今度は私がサポートします」


 そう書いたボードを俺に見せた後、俺の左手を握ってきた。

その後、握られた左手から魔力が流れて来て俺の右手に向かって行く。

その魔力が右手の中から表面に流れてから属性が変換される。

変換された魔力が右手から離れ、右手の上に集められていく、そうして俺の右手の上には水の玉が出来ていた。


 そこまでしてシャルルちゃんは手を離す、すると水は形を崩し地面まで落ちた。


「今、魔王のお兄さんを通じて私が魔法を使いました、感覚はわかったと思うので同じようにやってみてください」


 さっきのは独特の感覚があった、出来るだけ再現してみよう。

魔力を出したい部位の表面まで流す、その表面の魔力を属性変換させる、変換させた魔力を身体から離す。

 これを繰り返しつつ、身体から離した魔力を霧散しないように固めておく。


 時間はかかったが、なんとか右手に水の塊を出すことができた、シャルルちゃんがやったように綺麗な球体にはなっていないが、塊にはなった。


「ここまで、出来ればあとはその塊を投げるだけです、魔力が込められているので当たればダメージを与えることができます」


 試しに投げてみたら着水した地面が少しえぐれた。


「確かに攻撃力はあるね、でも塊を作るのに時間がかかったよ」


 と俺が魔法を使ってみた感想を言うと


「魔力のコントロールが不馴れだと大体時間がかかります」


「練習すれば早くなるから大丈夫です」


 練習すれば、か


「練習ってどんどん魔法を使えば良いのかな?」


 それを聞いたシャルルちゃんは首を横に降り


「それは非効率、これからきちんと魔王のお兄さんに魔力のコントロールが上手くなる練習を教えます」


 とシャルルちゃんに練習方法を教わった。


 その練習方法は魔力を手に集め、その後心臓に収める、収めたらまた手に魔力を集める。

これを繰り返す。


 慣れたら手に集めた魔力を足先や反対の手に移動させてから収める。

それにも慣れたら、魔力を属性に変換し魔力に戻す、戻した魔力を変換する。

慣れるまで繰り返したら、変換した魔力の形を色々と変えていく。

といった練習を段階的にやって魔力コントロールを上達させると上達しやすいそうだ。

 魔力コントロールのうまい人は手の上の魔力の形を変えながら別の魔力を身体の中に駆け巡らせる、等いくつかの練習を同時にしたり、魔力の移動速度を速めたりするそうだ。


「この他に、水や土の媒体に魔力を流して形を作るのも良い、自分の魔力で塊が作れなくても目に見える分、分かりやすいよ」


「たぶん、ゴーレムの身体を作るときの練習にもなると思う」


 自分の魔力だけを使った練習以外も教えてくれる。


「魔法を使い続ける練習をすると魔力量は増えていくけど、魔力のコントロールは上達しにくいと思う」


 確かに、魔法に大切なのは魔力コントロールなのは少しの授業でも実感した。

魔法を使いまくるとどんどん魔力を消費するから長続きしない、 でもシャルルちゃんが教えてくれた方法ならあまり魔力を外に出さないため長続きしそうだ。


「ありがとう、自己流だと間違った練習法で練習するところだったよ」


 お礼を言いながら、シャルルちゃんの頭を撫でた。













 つい、撫でてしまった。

親戚の子にお礼を言う時の癖が出てしまった。


 するとシャルルちゃんは俺の手をどかして


「やめて、今私は先生だから」


「ごめん」


 怒られた、教えてもらってる身なのだから配慮が必要だったかな?

 それにそんなに親しくない奴からいきなり撫でられたら、気分の良いものではないのだろう、気を付けねば。

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