第17話 周辺の情報

「すまないね、あたしは〈レベルストッパー〉の解除方法を知らないんだ」


 琥珀さんは〈レベルストッパー〉の解除方法を知らなかったようだ、魔法は詳しくないって言ってたからダメ元の質問だったが。


「でも、あたしの友達なら魔法に詳しいから、知ってるかもしれないね」


 あなたは女神か。


「お願いします、紹介してください」


 〈レベルストッパー〉は縛りプレイにも程がある、解除方法がわからないなら、わからないなりに過ごすが、解除方法がわかるならそれを知るのは最優先事項だ。


「どうしてそこまで〈レベルストッパー〉なんて珍しいスキルの事が知りたいんだい?

あんなスキル、修行ぐらいにしか使い道ないだろう?」


 琥珀さんに理由を聞かれ、俺は不幸な事故により、レベル1なのに〈レベルストッパー〉の影響下にあり、解除できないことを正直に説明した。


「それは大変だね、なら1つ提案があるんだけど」


 俺の状態は、誰が見ても大変な状態なようだ。


「提案ですか?」


「用心棒として、あたしをここに置いてくれないかい?

ドラゴンにはやられたが、それなりの力はあるつもりだよ、この辺りの普通のモンスターなら一対一では負けないよ」


 用心棒としてここに居てくれるという、何かあったときにありがたいが、いいのだろうか?

と悩んでいると、


「お礼の1つとして受け取ってほしい、それにこちらにも事情があって住むところを探していてね、娘達とここに置いてくれるとこっちも助かる、それに君に知りたい情報が出来たときにその都度教えてあげられる」


 そういうことなら


「このダンジョンの警備、よろしくお願いいたします」


 あちらにもメリットがあるなら異論はないし、ダンジョンの防犯向上は嬉しい。


 それに〈レベルストッパー〉の情報にも道があるという。


「こっちこそよろしく。

明日から鍛えてあげるからね」


 どういう事だろうか?


「君に友人を紹介したいんだが、あたしが行くとこのダンジョンの用心棒がいなくなる。

君に手紙を託して、友人の家を紹介してもたぶん道中でモンスターに倒される」


「そんなに周りのモンスターは強いんですか?」


 今まで外に出ていないのでわからなかったが、そんなに危険なところにこのダンジョンはあるのだろうか?


「このダンジョンがある森の東にドラゴンが住んでいる山があってね、そのドラゴンにつられて山に魔力が集まってくるから、その影響を受けてこの辺りのモンスターは強いよ。

それに、そのモンスターの素材を狙って西にある人間の村からは有力な冒険者が森に入ってくる、あたし達は北の砂漠から来たけどあそこはもうドラゴンのテリトリーになってたよ」


「南には何があるんですか?」


「南には海が広がっているよ、あたしの友人もそこに住んでる。

その海もドラゴンの影響でモンスターが強いんだけど魔法で切り抜けてるみたいだよ」


 東のドラゴンの影響が強いな、友人さんの所に行くのが危険と言うのもうなずける。


「ここの森もドラゴンのテリトリーなんですか?」


「一応このダンジョンがある森は冒険者のおかげでグレーゾーン、誰かのテリトリーって訳じゃない、だけどこのダンジョンがモンスターに見つかったらこのままじゃあ潰されるよ。

人間には君が平穏派だから、もしかしたら協力してもらえるかもしれないけど今のままではきびしいね」


「平穏派?」


 周りの情報を聞いていたら、新しいキーワードが出てきた、本当に知らないことが多すぎる。


「その辺りも知らないのかい?

 魔王の性質だよ、ダンジョンの中の自分の世界を大事にしてそれを壊さなければ、問題を起こさない平穏派の魔王、周囲の人間やモンスターを積極的に倒してダンジョンを強くする事が生き甲斐のような過激派の魔王、これらは生まれた時から決まっているらしいよ。」


 そういう分け方ならば俺はどっちかと言えば平穏派だ、のんびりしたいだけなので怠惰派があればそっちに入りたい。


「平穏派の中にはある程度ダンジョンを人間の冒険者に開放する事でそれ以上ダンジョン内に入らないように人間と契約するものや、人間の町をダンジョンに取り込んで外敵から守るかわりに周りの過激派魔王のダンジョンを潰してもらう平穏派もいる、過激派は人間も襲うけど、平穏派のダンジョンも叩くからね」


 人間と共存する道があるのか、多くの人がいる町をダンジョンに取り込めばDPも補充できるだろうし、ダンジョンをある程度、開放して強い冒険者を呼び込んでDPを得るのも契約で安全が確保できるなら有りだ、冒険者がある程度うろつくダンジョンにモンスターは入ってこないから防犯にもなる。


 でも、


「確かにその方法は今の俺のダンジョンでは無理ですね、人間を守る力も無ければ、人間を入れていいスペースや人間を呼び込む魅力もない」


 出来立てのダンジョンにはきつい話だ。


「一応、人間達のルールではダンジョン側から襲わない限り、規模の小さいダンジョンのコアを破壊してはいけないことになってるから、人間には潰される事はないと思うよ」


 それは良かった、現状ではモンスターだけでも、もて余しそうなのに、冒険者まで来られると詰むところだった。


「俺のダンジョンってモンスターだけでもキツそうだからね」


「だから、あたしが君を鍛える、レベル1のままでもスキルで能力を上げることはできるし、経験値を溜めて損はないはずだよ。

 それに戦いなれておくと、同じステータスでも強さが変わってくるから、簡単にはやられなくなる」


 確かに人手が少ない以上、レベル1だろうと俺が戦力にならないといけない。


「あたしの娘達を置いてもらえる以上、あたしにとってはここの安全を確保することは最優先事項なんだよ、君に友人を紹介するのは最低限、あたしがいなくても周りのモンスター程度にやられない防衛力をつけてからにさせてもらうよ」


 琥珀さんの言うとおりそちらの方が優先だ、それに自衛で得た経験値も〈レベルストッパー〉を解除した時に溜めていた分、一気にレベルが上がるというのだから無駄にはならないだろう。

というわけで


「よろしくお願いします、師匠」

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