第16話 お礼の相談

「ここはなんだい?」


 琥珀さんが神々の温泉のロビーに着き次第、そう言ってきた。

それはそうだろう、治療施設と聞いてついていったら、温泉施設だったのだ。

この世界に湯治というものがあるかはわからないが、治療施設と言えば普通、病院や薬局、またはこの世界みたいなファンタジー世界なら教会あたりを思い浮かべるだろう。


「温泉です。この中にはあなたに飲んでもらった回復薬で満たされた湯船があるので、そこに浸かってもらえば完全回復するのではないかと」


 しかし、皆さん女性なので俺はここから先に案内できない、どうしようか?


「お風呂が丸まま高価な回復薬なのかい? それはすごいね、入らせてもらうよ」


 と琥珀さんは女湯の暖簾くぐる、娘さん達もついていった。


 そうだ


「後で伝言役を向かわせるので何かあったらそいつに頼んでください」


 そう言って俺はボスエリアに戻った。











「スライム、お客さんが来てて温泉に入ってるから、お世話してきてくれないか?」


ぷるん


 スライムはうなずくように揺れた。


「それとこれも持っていって」


 俺はDPで女の子用の服を用意してスライムに渡す、白と黒の色違いのワンピースだ。

確か温泉にタオルはあったが着替えはなかった。

 流石に血塗れ、泥塗れの服をお風呂上がりに着せるのはどうかと思う。


ポヨンポヨン


 スライムは服を受けとると扉を越えていった。



















 琥珀さん達がお風呂に入っている間にガチャ等をすましておこう。

この後、自由な時間がとれるかは分からない。


「それに、あれも片付けた方がいいな」


 昨日出した衣類が畳んだとはいえ、そのまま置いてあるので、リュックサックに戻しておく。


 そのほかボスエリアを軽く片付けてからガチャを回すと


武具ガチャ 木の剣

スキルガチャ 〈水泳〉のスキル

設備ガチャ しゃもじ

モンスターガチャ ゴブリン

オールガチャ 木刀


が引けた。


 木の剣は木でできた両刃の剣、木刀は鍔の無い日本刀の形をした木の棒だ


 〈水泳〉スキルはすでに持っている、持っているスキルのスキルシートを使ってもスキルレベルが上がるわけではないようで、身体から弾かれる。

仕方ないので〈ストレージ〉の中に保管してる筆記用具のファイルに挟んでおく、リング式ではなく金具で挟むタイプのものだ。


 しゃもじは昨日のものとほぼ同じで、ご飯を掬うところがゴルフボールのようにでこぼこに凹んでいる。

洗いにくそうだ。


 ゴブリンはゲームなんかにいる人間の腰くらいの背の高さの小人だ。

肌の色は緑色で斧を持ち目付きが少し怖い。


「ギギギ」


と何かを話そうとはしてくれるのだが、こちらは言葉は分からない。

しかしこちらの質問には首をふるなどのジェスチャーで回答してくれるので意思疎通は図りやすい。


 ステータスは


種族 : ゴブリン

レベル : 1

体力 : F

魔力 : G-

筋力 : F

耐久 : G+

敏捷 : G+

知力 : G

器用 : F-

運 : 101


となっていた。

 性別はオスで、平原よりも洞窟の方が好みだというので洞窟エリアに配置した。

ステータス上あくまでパトロールであるため、勝てない敵が入ってきたらすぐに逃げるようには言っておいた。


後は今後の事を考えていよう。





















 それから、琥珀さんにしてもらうお礼やら、自分のステータスを上げるトレーニング方法、ダンジョンの防犯についてあれこれ考えていたら、琥珀さんがボスエリアに現れた。


「ありがとうね、温泉のおかげで綺麗に治ったよ」


 琥珀さんの言う通り、大きな傷が塞がっている、耳やしっぽも元通りに戻って毛の色も綺麗な銀色をしている。

白銀色というのか銀色というより色が綺麗だ。

他にも先程はなかった2つに長く尖そうな牙を持っている、おそらくドラゴンに折られていたのだろう。


「それは良かった、娘さん達は?」


 こちらに来たのは琥珀さんだけ、ふたりの娘さんはいない。

後、連絡役に向かわせたスライムもいないが一緒なのだろうか?


「娘達は遊戯室みたいなところで王国対戦をやってるよ、スライムも一緒だよ仲良くなったみたいで抱えて連れていったよ」


 王国対戦とはテーブルゲームスペースにあった、チェスと双六が合わさったようなゲームの名前だったはずだ。


「それと娘達に服を用意してくれてありがとうね」


 と服の礼を言ってから琥珀さんは話を続ける。


「交渉の前に自己紹介と行こうか、あたしは琥珀、種族は見ての通りソードウルフ、娘は銀髪の方が白音、金髪の方がシャルル、シャルルは血が繋がってないが娘同然さ」


「改めまして俺は、このダンジョンの魔王をしているユウと言います」


 琥珀さんから自己紹介をされたのでこちらも返す。

こちらは先程も名乗ったがバタバタしていたので仕方ない。


「とりあえず魔王と呼ばせてもらうよ。

でだ、あの傷を回復させてくれたお礼をしたい、なにか要望はあるかい? 命の恩人だからあたしができることなら出来る限りのの事はするよ」


 呼び名を決めたらすぐ交渉に入ってきたよ。

これはお礼をいらないって言うのは無理そうな雰囲気だ。

 それでも一応、聞いてみる。


「傷を治したのはこちらの自己満足なので、お礼は要りませんよ」

「それじゃあ、こっちの気がすまない、お礼の押し売りになって悪いけど、なにかお礼をさせてほしい」


 即答された。


 こうなった時のために、さっきまで琥珀さんにしてもらうお礼を考えていた。


「では、情報をください。 俺はこのダンジョンの魔王になったばかりで色々と知らないことが多いんですよ」


 生まれ変わる時に神様から色々教わったが、基礎的なことばかりで、しかも自分についての内容が主だったため、この世界についての情報が不足している。

 特に〈レベルストッパー〉の解除についてもなにか知ってくれているとありがたい。


「情報って言ってもあたしが知ってる事の範囲でしか教えられないよ?

それに何が知りたいのかわからないと答えられない、あっ先に言っておくけど娘達の事はあたしは教えられないよ、娘達に聞いておくれ」


 娘さんをどうこうする気はないが?


「では始めに、〈レベルストッパー〉というスキルについて教えて下さい」


 今一番どうにかしたいのは、〈レベルストッパー〉についてだ、レベルが止まっているのは色々困る事になるだろう。


「〈レベルストッパー〉か、あたしは魔法は詳しくないから、名前と使い方ぐらいしか知らないけれど。

一部の人間やモンスターが修行に使うスキルだろう?」


 〈レベルストッパー〉は普通に出回っているスキルなのか?


「もう少し詳しく」





 琥珀さんから聞いたことをまとめると、

この世界には〈レベルストッパー〉を使える者は少ないがちゃんと存在する。

〈レベルストッパー〉でレベルを止めている間も経験値は溜まり、解除した時に一気にレベルが上がる。

レベルが高いほど経験値が手に入らなくなるのである程度のレベルで〈レベルストッパー〉でレベルを止めてから経験値を貯める、という修行があるらしい。


 と説明したところで説明を止めたのでこちらから追加で質問する。


「琥珀さんは〈レベルストッパー〉の解除方法を知ってますか?」


 一番知りたい事をストレートに聞いた。

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